マガジンのカバー画像

大映映画の世界

93
大映京都撮影所、大映東京撮影所で作られた作品や、スターについての記事をまとめました。
運営しているクリエイター

#若尾文子

『死の街を脱れて』(1952年5月22日・大映・小石栄一)

『死の街を脱れて』(1952年5月22日・大映・小石栄一)

若尾文子のスクリーン・デビュー作。小石栄一監督『死の街を脱れて』(1952年5月22日)。未見の時は、データベースや映画本であるように「長崎の歌は忘れじ」の久我美子が出演と思っていたのだけど、この役を若尾文子が演じているのです。

敗戦の混乱で中国大陸に残された庶民の妻や子供たち。軍人とその家族はいち早く脱出してしまい、満蒙開拓団などで大陸に渡った彼女たちは、国民軍に襲われ、何もかも失ってしまう。

もっとみる
『心の日月』(1954年1月15日・大映東京・木村恵吾、吉村廉)

『心の日月』(1954年1月15日・大映東京・木村恵吾、吉村廉)

1954年の若尾文子研究。木村恵吾&吉村廉『心の日月』(1954年1月15日・大映東京)をDVDで。この菊池寛原作は、1931(昭和6)年にも日活で田坂具隆によって映画化されており、入江たか子と島耕二が主演している。

待ち合わせ場所を間違えたために、行き違いになったカップルの生々流転と再会までの紆余曲折を描いた、現在では成立し得ない「すれ違いメロドラマ」。前年の『君の名は』(1953年・松竹・大

もっとみる
『夜の素顔』(1958年10月15日・大映・吉村公三郎)

『夜の素顔』(1958年10月15日・大映・吉村公三郎)

吉村公三郎監督『夜の素顔』(1958年10月15日・大映)。京マチ子と若尾文子。二人とも壮絶な少女時代を生き抜いてきたヒロインが「世間を見返す」ために踊りの世界での成功を目指していく。というドロドロ、女闘美(精神的)アクション・ドラマ。脚本が新藤兼人なので、些細なシーンにも表面の美しさと内面の醜さを見事に入れ込んでいる。

トップシーンは、1944年。南方の最前線基地。守備隊の慰問にやってきた朱美

もっとみる
『新・忍びの者』(1963年12月28日・大映京都・森一生)

『新・忍びの者』(1963年12月28日・大映京都・森一生)

 今回のカツライスは森一生監督二本立。まず市川雷蔵のシリーズ第3作『新・忍びの者』(1963年)。左翼のセシル・B・デミル、山本薩夫監督の娯楽映画作家としての手腕が堪能できた。しかし山本薩夫監督は「忍びの者」が巻き起こした忍者ブームで、忍者ごっこをした子供が亡くなったことに責任を感じて自ら降板。そこで大映京都のベテラン、森一生が引き継いでの忍者スペクタクルとなった。脚本は第一作からの高岩肇。

 

もっとみる
『忠臣蔵』(1958年4月1日・大映京都・渡辺邦男)

『忠臣蔵』(1958年4月1日・大映京都・渡辺邦男)

娯楽映画研究所シアターで、大映オールスター大作、渡辺邦男監督『忠臣蔵』(1958年)。Amazonプライムの「シネマコレクションby KADOKAWA」で視聴。大映京都の総力を結集しての一大絵巻。緊張感、緊迫感は薄く、映画的なエモーションは今ひとつだが、お馴染みの「忠臣蔵」の物語をゆったりと、ご存知のエピソードで綴っていく166分。つまり『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』とほぼ同じ尺。

長谷川

もっとみる
『新婚日記 恥しい夢』(1956年4月28日・大映東京・田中重雄)

『新婚日記 恥しい夢』(1956年4月28日・大映東京・田中重雄)

 若尾文子主演『新婚日記 恥しい夢』(1956年4月28日・大映東京・田中重雄)。脚本は笠原良三と池上金男。42分のSPながら充実の新婚コメディ。若夫婦がなかなか二人きりになれなくて、悩む、というパターンは、日活多摩川で杉狂児と市川春代主演の『花嫁日記』(1934年・渡辺邦男)など連綿と作られてきた。「二人きりの甘い時を過ごしたいけど、過ごせない」この悩ましさが、艶かしさとなって、他愛なくとも、健

もっとみる
『薔薇いくたびか』(1955年4月24日・大映・衣笠貞之助)

『薔薇いくたびか』(1955年4月24日・大映・衣笠貞之助)

 昭和30(1955)年、大映の永田雅一社長がぶち上げた「東西大映オールスター」を一同に会しての大作。時代劇やスペクタクル、文芸作ではなく、この頃、各社こぞって製作していた長編「メロドラマ」というのがいい。原作は「読売新聞」の人生相談「人生案内」の回答者を長らく務めた小山いと子が、主婦の友に連載した女性小説。小山いと子といえば、雑誌「平凡」に「美智子さま」(1961〜1963年)が宮内庁から「興味

もっとみる
『八月生まれの女』(1963年2月19日・大映東京・田中重雄)

『八月生まれの女』(1963年2月19日・大映東京・田中重雄)

 昭和38(1963)年の冬の東京。青年(宇津井健)のシトロエンに、由美(若尾文子)のスポーツカーが激突。気性の激しい「八月生まれの女」の由美は、自称プレイボーイの村瀬に激しい剣幕で捲し立てる。最悪の出会いをする男と女。ハリウッドのスクリューボール・コメディのような快調な滑り出し。田中重雄監督『八月生まれの女』(1963年2月19日・大映東京)は、脂の乗り切った若尾文子さんの魅力がたっぷり味わえる

もっとみる
『お嬢さん』(1961年2月15日・大映東京・弓削太郎)

『お嬢さん』(1961年2月15日・大映東京・弓削太郎)

 若尾文子さん主演、弓削太郎監督『お嬢さん』(1961年2月15日・大映東京)。三島由紀夫が「若い女性」(1960年1月〜12月号)の連載小説「お嬢さん」は、ドライな女子大生の「お嬢さん」が、派手な女性遍歴の若者に惹かれて結婚。自由主義だったはずなのに、次第に夫が浮気しているのではないかと疑心暗鬼になり苦悩する。結局は平凡な「奥さん」に成長していく物語を、メタフィクションや「お嬢さん」の懐疑心から

もっとみる
『やっちゃ場の女』(1962年6月17日・大映東京・木村恵吾)

『やっちゃ場の女』(1962年6月17日・大映東京・木村恵吾)

 若尾文子さん主演、木村恵吾監督『やっちゃ場の女』(1962年6月17日・大映東京)。脚本は田口耕さんのオリジナル。築地青果市場で仲買店を営んで4代目の女房・小田くめ(岡村文子)が仕切る小田新の長女・小田ゆき子(若尾文子)は結婚や恋愛にも目も暮れずに店を切り盛りしている。頼りにしているのは住み込みの青年・井上精一(藤巻潤)。青森の果樹園の息子で東京に修行に来ているという(シナリオの)設定である。

もっとみる