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2022/2023 リーグ・アン第25節 マルセイユ vs PSG

Coupe de Franceでの対戦から僅か約3週間、再びマルセイユのホームVelodromeで対戦することになった両チーム。PSGとしては、屈辱的な完敗とカップ戦敗退を喫したあの日から、モナコとバイエルンにも敗れ3連敗。ガルティエ監督更迭が噂されるほど、チーム状態が悪かったが、前節リール戦では劇的勝利を挙げた。
そのような状況で迎えたこの試合、結果はPSGの完勝だった。その理由を振り返る。キーワードは、MMコンビの相性、中盤トリオの貢献、そして前回対戦の反省だ。

両チームのスタメンは以下。

PSG  3-5-2
ドンナルンマ
マルキーニョス、ラモス、キンペンベ
ムキエレ、ヴィティーニャ、ヴェラッティ、ルイス、ヌーノ・メンデス
メッシ、エムバペ

マルセイユ  4-2-3-1
ロペス
ヌーノ・タヴァレス、バイリー、バレルディ、コラシナツ
ロンジェ、ヴェレトゥ
ウンデル、ゲンドゥージ、マリノフスキ
アレクシス・サンチェス

最大の驚きは、マルセイユが3バックではなかったことだ。CBのエムベンバとジゴがそれぞれ出場停止と負傷中だったことも影響したはずだが、エムバペにスペースを与えない意図があったと推測する。終始4-2-3-1あるいは4-3-3のような形でプレーした。また、運動量豊富で最終ラインのカバーも得意なゲンドゥージをトップ下のような位置で起用し、ハイプレスの圧力を高める狙いが見て取れた。
PSG側のサプライズは、地元紙で事前予想されてはいたものの、ムキエレの復帰即先発である。ハキミが不在、ペンベレでは頼りない、等の理由はあったにせよ、「目指すはCL。そのためにはマルセイユ戦すらもコンディション調整に使う」という気概を感じた。

立ち上がりは、マルセイユがハイプレスをかけ、PSGがプレス回避を狙う、という誰もが予想した通りの展開となる。マルセイユとしてはCoupe de Franceでの試合と同じように、ハイプレスで時間とボールを奪い、ショートカウンターを浴びせる狙いがあっただろう。しかしこの日のPSGは、ハイプレスに面食らったあの時と違い、「そう来るのは分かってました。こちとら球際では負けません」とばかりに、肉弾戦に応戦する。互いに3連続CKを得る等、インテンシティ高く始まった。

しかし、僅か16分、キンペンベが負傷交代。スプリント中に接触なく倒れ込んだ。試合後、アキレス腱断裂であったことが判明する。長かった負傷離脱明け直後であり本人としても、3バック運用したいPSGとしても、非常に痛い。
代わりにダニーロを投入。面白かったのは、右からマルキーニョス、ラモス、キンペンベだった並びが、ダニーロ、ラモス、マルキーニョスになったことだ(筆者はマルキーニョスが真ん中、ラモスが左になるかと思っていた)。この日のマルキーニョスは積極的に攻め上がり、一度は最終ライン裏抜けによるシュートまで放ったが、落とし込んでいたその戦術を変更しないための並びだったのだろう。

そして25分、ついにPSGが先制する。ヴィティーニャの落としをメッシが前向きで受け、エムバペにスルーパス。エムバペが難なく決めた。エムバペの飛び出しが素晴らしかった。スルーパスを呼ぶ込むため、左サイドから一気に中へ入った。あの動きをされると、DFは対応が難しい。ゾーンディフェンスなのでSBはポジションを捨てて付いていくことに抵抗を感じる。CBにマーク受け渡しの声はかけただろうが、視野外からトップスピードのエムバペが突っ込んできたら追い付けない。エムバペは動き出しまで超一流だ。

直後の29分、追加点。エムバペが左サイドから相手の股を抜く速いパス。メッシが中で合わせた。DAZN解説のダバディ氏も試合に何度も触れていたことだが、エムバペがパスまで上手くなったら手が付けられない。

これで余裕ができたPSGは、リズムを落とす。5-3ブロックを形成し、前半を終わらせようとする。

一方のマルセイユは、前に出るしかなくなった。なんと両SBが最前線で幅と深みと取り、WGが中に絞る、捨て身の5レーンアタックを仕掛けたが、得点は奪えなかった。

ハーフタイムでの交代は無し。勝負は後半へ。

前半終盤同様、5-3ブロックで守りあわよくばロングカウンターという姿勢のPSGと、必死に攻めるマルセイユ、という構図が続いた。
もはやマルセイユは2バック状態だった。メッシ、エムバペがいるにもかかわらず、後ろに残るのはCB2枚のみ。彼らからすれば、攻めるしかなかったとはいえ、さぞ恐ろしかったことだろう。「想像してみよう色んな気持ち」の某CMではないが、自分と相方の周りには、広大なスペースと共に、メッシとエムバペがいるのだから。

55分には、カウンターでルイスが持ち運び、エムバペがメッシとのパス交換から抜け出しゴール。あっという間に勝敗が決した。

やはりメッシとエムバペは相性が良い。天才ドリブラー、超万能ゴールマシン、GOATチャンスメーカー、と徐々に進化と変化を遂げてきたメッシ。最盛期のキレはなくとも、人間離れした視野とキック精度は健在で、自由自在にパスが出せる。エムバペはドリブルと得点力も魅力だが、超人的なスピードで裏抜けを狙うため、相手を押し込むことができる。この2人が波に乗れば、それは強いに決まっている。

ヴィティーニャ、ヴェラッティ、ルイス、中盤トリオの貢献も特筆に値する。確かに、もっと得点やアシストを記録してほしいし、超絶テクニックで魅せるわけでもなく、やや地味ではある。だが、メッシ、エムバペが守備しない中、3人でピッチ横幅をカバーし、ネガトラでは素早く寄せ、保持時は自慢のテクニックでプレス回避し、と重いタスクを多く担っている。この日はそれらを高いレベルでこなしていた。

最後に、前回の反省が活かされていたと感じられた点は、監督とチームに対して好印象だ。前回はマンツーマン気味の守備とハイプレスでやられた。しかしこの日は、それらを逆手に取るように、連動した動きができていた。エムバペが最前線で駆け引きすることで、最終ラインを下げさせ、メッシが降りてボールを受ける。時折ヴィティーニャもどちらかを行う。交わるように動くことでマーカーを動かし、スペースを作り利用した。マルキーニョスの攻め上がりも、その延長線上と理解できるかもしれない。特にこのプレーは、前節リール戦がターニングポイントとなり、チームに自信が戻ってきたことを感じさせた。

試合後、3-5-2を続けるかどうか問われたガルティエ監督は「このような勝利の後に変更することは難しい」とコメントしたそうだ。相手からすれば、3バックか4バックかによって対応は大きく変わるので、併用している現在、相手の準備とスタメン選考に迷いを与えることができるはずだ。興奮して口が滑ったのか、あまり言うべきことではなかったように思う。
最も重要なバイエルン戦に向けて、次節ナント戦をどう使うのか。コメント通り3バックで臨み成熟を優先するのか、突如4バックに戻し撹乱させるのか。別の観点としては、怪我人が多いため主力を温存させるのか、本日のムキエレ起用のようにコンディション調整の場として使うのか。2位マルセイユと勝ち点差8を付けたリーグ戦制覇へ向けてさらに前進する以上の意味を持つ一戦であり、引き続き目が離せない。

以上。

2023/02/26
Ligue1 2022/2023 Journee 25
Marseille 0-3 Paris Saint-Germain





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