見出し画像

2022/2023 リーグ・アン第26節 PSG vs ナント

PSGにとってはチャンピオンズリーグでバイエルンと戦う前の一戦。17分までに2点リードを奪いながら、前半のうちに追い付かれ、ただ最終的には4-2で勝ち越した。勝利の鍵となったのは、GOATメッシの特殊能力、スペース認知だったと考える。それを中心に試合を振り返る。

両チームのスタメンは以下。

PSG  3-5-2
ドンナルンマ
ダニーロ、ラモス、マルキーニョス
ムキエレ、ヴィティーニャ、ザイル・エメリ、ルイス、ヌーノ・メンデス
メッシ、エムバペ

ナント 5-2-1-2
ラフォン
セントンゼ、カステレット、ジロット、パロワ、ハジャム
シソコ、モトーサミ
モレ
ガナゴ、ブラス

基本的にはPSGがボールを保持して押し込み、ナントが耐える展開が長かった。ナントは中央の密度を高くし、PSGお得意の中央突破を防ごうとする。5-3-2でも5-2-3でもなく、中盤が三角形を形成する5-2-1-2という珍しい形を採用し、トップ下のモレがアンカーであるザイル・エメリをマークしつつ、中央を封鎖する狙いを見せる。一方のPSGは、普段通り流動的な保持を行う。中盤トリオが動き回りながら、相手の急所を探っていく。

そんな中、一際輝いていたのはメッシの特殊能力、スペース認知だ。メッシはポジション柄、相手に囲まれてプレーすることがほとんどだが、限られたスペースと時間を見つけるのが本当にうまい。周囲にある空間の重心を取り続けることで、相手選手3-4人からの距離を確保し、判断と実行の時間を得る。本質的には簡単な話であるし、ピッチ上空から見ていれば重心はすぐに見分けられるものなのだが、これをピッチ上で行い続けるのは至難の業であり、GOATのGOATたる所以だ。
この日狙っていたのは、2-1の形である相手中盤の脇、間、最終ライン前などだった。そこでボールを受け、前を向き、数的優位を作りながらのビルドアップに貢献しつつ、ドリブルやスルーパスでチャンスを作り続けた。大車輪の活躍である。

1点目は特に顕著だった。スペースでボールを受け、左サイドへ展開する。その後、やや遠目からスピードに乗った状態でクロスに合わせに入っていく。この動きをされると、DFは対応できない。目の前にマークはいないため、スペースを守っているが、そこへ突如アジリティの高いメッシに飛び込まれても、反応速度では敵わないのだ。素晴らしい先制点だった。

その後、左サイドで躍動していたヌーノ・メンデスのシュートがオウンゴールを誘発し、早くも2-0。楽勝ムードが漂い、あとはエムバペがPSG最多得点者となるゴールを決めるのを待つだけかと思われた。

しかし、ドンナルンマが角度のない位置からニアを打ち抜かれ、さらにはCKから失点し、あっという間に同点に追い付かれてしまった。そしてハーフタイム。

3点目を全力で取りにいって試合を終わらせなかったからだ、という批判は正しいだろうか。2点リードでリズムを落としカウンター狙いにシフトするのは当然であるし、チャンピオンズリーグが数日後に控えている中、3点目を死に物狂いで目指すことに体力を使う必要はなかったはずで、大きく道を間違えたとは言えないだろう。ただし、リール戦のような展開だ、気を抜いてしまう悪癖が出た、多くの人がそう思っただろうし、それはその通りだろう。

しかし、ナントはPSGの攻撃を抑え切れていなかった。前述の通り、メッシを捕まえられておらず、PSGの選手たちが再びギアを入れれば、必ず勝ち越せると確信していたのは筆者だけではなかったはずだ。

そして後半再開。

ナントは非保持の陣形を5-4-1のような形へ変更してきた。メッシに使われていたスペースを埋めるためだろう。この狙い自体は正しかった。しかし、メッシの個の能力が戦術を上回った。前半同様、限られたスペースを見つけチャンスを作り続ける。特に左サイドでボール受け、ムキエレへスルーパスを通したシーンが2回あったが、リプレーかと疑うほどの再現性だった。一度目はムキエレのクロスがエムバペに合わず、二度目はムキエレが倒されFKとなりメッシが蹴った。得点には至らなかったものの、ビッグチャンスだった。

最終的には、CKの流れからダニーロがヘディングでゴールを決め、試合終了間際にエムバペが待望の通算201点目を決め、4-2で勝負あり。勝利したことはもちろん、エムバペのゴールが大きな意味を持つ。バイエルン戦に向けて余計なプレッシャーを感じることなく、ホームで盛大な祝福を受け、ポジティブなムードで臨むことができる。純粋に勝利を目指して戦えることだろう。

総括すると、メッシが得点へ直接的に関与したのは自ら決めた1点目のみだったものの、ナント陣形の穴を見つけ、施してきた修正をも上回り、チャンスを作り続けたことが勝利の要因だろう。最近は絶好調であり、バイエルン戦でも大いに期待したい。

以上。

2023/03/04
Ligue1 2022/2023 Journee 26
Paris Saint-Germain 4-2 FC Nantes





#サッカーを語ろう
#サッカー
#サッカー戦術
#サッカー分析
#サッカー戦術分析
#海外サッカー
#欧州サッカー
#リーグ・アン
#パリ・サンジェルマン
#PSG
#メッシ
#エムバペ


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?