悩み_イラスト

人の苦しみは決して比べられるものではない

 僕が以前から思っていたことがあります。これは僕が誰かに悩みを相談したときや、友人が僕以外の他の人に悩みを相談しているところを見たとき、テレビで、悩みを抱えた人が誰かに悩みを相談しているのを観たとき、感じたことです。よく悩みを相談したときに返ってくる言葉として、こんなものがあります。

「あなたはまだ恵まれているほうよ。世の中にはもっとたくさん苦しんでいる人がいるのだから。」

 この言葉を直接的であれ、間接的であれ、聞くととても悲しくなります。もはや怒りすら感じず、ただただこの人には受け入れてもらえなかったのだなという思いしかありません。その時の僕の心はただ灰色の空間が広がるばかりです。確かに、自分よりは苦しい人がいるという考えは、一定程度の悩みまでなら、その悩みを癒してくれるかもしれません。しかし、限界まで悩み抜いた人にはむしろ、その言葉はその人を追い詰めるものでしかありません。僕は人の悩みは客観的で相対的なものではなく、主観的で絶対的なものだと思います。だからこそ、人の悩みは誰かの悩みと比べて、大きいとか小さいとかはないと思いますし、境遇による優劣もそこには存在しないと思います。

のんきと見える人々も、心の底をたたいてみると、どこか悲しい音がする。
                         -夏目漱石ー

 一見明るく見える人も、行動的な人も恵まれているように見える人も、その心の奥では、抱えきれないほどの重荷を背負って、一寸先すら見えないほどの霧の中を、地図も持たずに彷徨い続けているのかもしれません。そんなとき、彼らが悩みを打ち明けてくれたのなら、僕たちにできることはただそれを受け止め、必死の思いでその人が打ち明けてくれたことに、感謝をすることではないでしょうか。そして、僕とその人の苦しみが違うものではあるけれども、同じ苦しみを抱える者として、あなたは決して一人ではないよと、伝えてあげることではないでしょうか。

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