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11 矢

ここ数日、男は体の不調を感じていた。どこがどうとはうまく言えなかったが全身を気だるさが覆っていた。商店街を歩いているときのことだった。男は偶然通りかかったクリーニング屋のウィンドウにふと目をやると、そこに映り込んだ己の姿を見て愕然とした。

頭に矢が刺さっていたのだ。

矢は右耳の後ろから左のこめかみ辺りに向かって斜めに貫通していた。先端には見るだけで痛みを感じるほどの鋭い矢尻がついていた。いつの間に刺さったのか、まったく身に覚えがなかった。いくら引き抜こうとしてもびくともしなかった。

男はうろたえて道行く人に助けを求めた。人々は男の頭に矢が刺さっていることに気がつくと、指をさして嘲笑った。勝手に写真を撮るものもいた。石を投げてくるものもいた。男はしまいに泣き出してしまった。

男はその場から逃げ出そうとして、路上の段差につまずいて転んだ。人々が取り囲み、一斉に笑いを浴びせかけた。ある母親が「ああいう大人になったらダメよ」と言って子供の手を引いていった。男は道にうずくまって泣き続けた。


いただいたサポートは子供の療育費に充てさせていただきます。あとチェス盤も欲しいので、余裕ができたらそれも買いたいです。