事業戦略大学(教員1名、生徒無限大) 第7回 SWOT分析で逆転の発想を導き出す「考え抜くための戦略フレームワーク入門」
座って考えない。歩きながら考えること。そういった習慣をもてば、外部からの脳の刺激もあり、思考の機動力と適確さは飛躍的に上がる。動きながら考えよう。
設問1:弱者は競争を避けたり、強者に勝つためにはどの様な発想が必要ですか?
設問2:これをやれば必ず勝てると言う究極の戦略をひねり出すためにはどのような思考プロセスが必要ですか?
設問3:戦略を徹底して考え抜くために必要なマインドセット(気持ちの置き方)とはどのようなものですか?
■最も手強い戦略は「逆転の発想」
事業戦略企画のうまさはどこに表れるのか? それは戦略的な発想にある。では、このよく言われる戦略的発想とはどのようなことなのか。単純に言えば、それは逆転の発想にある。逆転の発想とは、自社の弱みを強みに変える発想、脅威を機会に変える発想で、競合が予想もしない展開をしかけることである。競合が予想もしない、または認識しても「まさか無理だろう」と放置したくなる発想である。予想が遅れたり、無視するからその間に攻め込むことができ、気がついた時は簡単には崩せない情勢を創り出すことだ。メガバンクに対するマネーフォワード、大手自動車メーカーに対するテスラ、既存のホテルに対するエアービーアンドビーなどがその例である。産業の歴史の宿命とは、小さな無名な会社が大きな会社を打ち負かし、逆転することと言われている。どんな状態であれ、チャンスは必ずある。
逆転の発想の考えるための視点をいくつか挙げると以下のようになる。
①競争する相手の力や環境変化の力を機会と捉え、その中で自社の強みを活かす
②脅威と思われていることを反対に機会と捉え事業化する
③弱みと思われていたことを強みに変える新たな事業領域を見つけ出す
④強みに集中し、脅威を抑え、より多くの機会を獲得する
この逆転の発想をきちんと整理された方法で行うのが、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)つまりSWOT分析である。戦略企画全体にも言えることだが、分析ツールを本で読んで知っているだけの人と、それを使って現実に事業戦略を企画し、それを試みて失敗や成功をした経験がある人とでは、比べものにならないぐらいの差がある。その企画力の差がはっきり出るのが、このSWOT分析である。
■ 何のために分析をするのか
間違ったSWOT分析の使い方は、断片的な戦略アイデアをたくさん出すだけで終わることだ。その中には非現実的な飛躍したアイデアがたくさん含まれている。実現できそうもない戦略アイデアをたくさん出しても、現実の事業にとっては全く無意味である。一方、本当に事業企画に優れた人は、以下のようなことに注意を払った上で、戦略を徹底的に考え抜く。
①利益の最大化と資産の最適化という事業のゴールを意識している
②商品・サービス、ビジネスモデル、アライアンスなどの戦略仮説が描かれていて、発想の対象が既に絞り込まれている
③本質を捉えた外部環境分析、内部環境分析ができている
④発想力を刺激するために、他社、特に異業種のベンチマーキングを行っていて、戦略パターンの蓄積がある
⑤戦略企画の制約条件がきちんと把握されている
■ 「事業成功の鍵」とは何か
意外に思われるかもしれないが、事業戦略企画は、ステップを踏んできれいに進むものではない。内外の事業環境分析から、事業ドメイン戦略、市場ポジショニング戦略、ビジネスモデル戦略、製品・事業のポートフォリオ戦略など「戦略ビジョン」までの間、発想の飛躍や分析への後戻りが何度も繰り返され、その結果最終的に数少ない極めて効果的な戦略発想が絞り出されてくる。それが事業成功の鍵、すなわち、K・F・S(Key Factors for Success )と呼ばれるものである。
事業成功の鍵の例を挙げると、「成熟段階に差し掛かっている既存市場のシェアをあと10%アップさせ、価格支配力を持ち利益率を向上させる」「新製品を連続的に開発する力で他社の商品を戦略的に陳腐化させ、その市場撤退を迫る」「戦略部品を製造するメーカーを買収し、顧客に対する交渉力を高める」といった具体的なものになる。
まさに事業の成功のためには、このような必須要件を設定できなければいけない。SWOTで分析され、市場と内部からの条件を組み合わせて、市場競争で勝てる要件である。繰り返しになるが、事業成功の鍵は、あくまでも利益の最大化と資産の最適化を目指すものである。
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