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長谷川等伯の独創性について

写真は「竹虎図屏風」(東京都・出光美術館蔵)

長谷川等伯の絵画の独創性は以下の3点から現れる。

染色技術の影響
染色の影響は、紙等の基底材との関係に現れる。等伯の線や塗りは、画面の素材感と一体化する。多くの作品が、色彩に無駄を感じさせず画面が統一されるのは、主としてそのためである。等伯は、修行時代、染色に関わっていた。どの程度の経験を持つかは定かではないようだが、色彩の発色には、繊維に色材を染み込ませた発色と同様の感覚がある。

線遠近法の影響
西洋の線遠近法は、等伯が影響を受けたと見られる牧谿の絵画との差異化に大きく関連している。「竹鶴図屏風」では、同じ距離にある竹や竹の葉が同じ明度の色調で描かれるが、それを可能にするのは、線遠近法といえる構成と対象の配置である。染色の影響である余白の材質感の扱いと、西洋的な遠近感が一体となっている時、牧谿にはない独特の画面空間が現出し、平面性と物質性が一体となった自然感を見せる。等伯が西洋絵画をどの程度知っていたかは不明だが、その眼は単なる東洋画の感性を超えている。

書の影響
書の影響については、とりわけ日本特有のかな文字による書道の影響が見られる。「竹虎図屏風」に見られる虎を描く曲線は、抽象的な線として自律の方向に向かっている。そのため、虎の姿よりも、その存在や動静により確かな感覚を与えている。

長谷川等伯の絵画は、西洋化していく日本の絵画を予見すると同時に、中国、日本の絵画に影響されながらその範疇に留まらなかった優れた事例といえる

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