とおるメモ2

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記憶を捨てよ、町に出よう

カレンダーからアラームが届いた。健康診断を受けに行く時間だ。家族はすでに外出しているらしく、家には私しかいない。ダイニングテーブルの上に、ピザ屋のチラシが置いてあって、クーポンがすでにちぎられている。私は窓を閉め、鍵をかけて出かける。

病院までの移動経路を検索する。最短経路は最寄りの駅から電車に乗り、五駅先で降り、そこからバスで終点まで乗るのが最短経路だという結果が出た。続いてバスの乗り方を検索

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おしゃべりなぬいぐるみと無口な両親

「お誕生日おめでとう」とパパとママがプレゼントしてくれたのは、まるっこい小熊のぬいぐるみだった。やわらかい服を着ていて、一番上の襟元のボタンだけ黄色くて大きい。私はプリンと呼ぶことにした。
 「プリン、こんにちは」と言うと、プリンも「こんにちは」と言った。ママがあの映画みたいだねと言うと、パパはあんなに下品じゃないよと笑った。

 プリンは毎朝「おはよう」と言って、起こしてくれる。テレビを見ている

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グレッグ・ウェルチ

フィニッシュまであと数百メートル。世界トライアスロンシリーズ横浜大会の会場 MC の声が、フィニッシュする選手を順に讃えているのが聞こえる。MCは私が通っているトライアスロンスクールを主宰している、松山アヤトの声だ。

スイムのスタートの直前、何人かのMCのかけあいで、会場を盛り上げていた。そのうちのひとりはオーストラリア訛りで、トライアスロンの細かいことを一般の人にも分かりやすく、トライアスリー

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隣を走っていても、同じ状況とは限らない

1月3日に走ることは、前から決まっていた。鶴見中継所に続く道路が見える。風が出てきたらしく、沿道の街路樹や旗が揺れている。ランニングはフィジカルなスポーツだ。淡々と走る。

すぐ右に、ちょうど肩をならべるように並走するランナーがいる。けれど隣のランナーのほうが3分ほど私よりも先行している。すぐ隣を走っているからといって、同じ状況とは限らないのだ。

1キロあたり3秒ほどペースを上げる。少し心拍が上

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