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第9話 世界初!!継続型災害学生ボランティア「カッキー’S」爆誕!!

 さぁさぁさぁさぁさぁ、今週もやってまいりました、尾っぽがないと書きまして尾無(おなし)でござぁいまぁぁぁぁす!!!!もう書き溜めていたストックがなくなりましたので、締め切りに追われる「伊佐坂先生状態」の尾無です(サザエさんのね)

 前回、精神保健担当者として知識も技術もない尾無が、なぜか喪失体験をした方や、メンタルヘルス不調となった方へ受け入れてもらえたのか、一つの要因
として「未熟さ」を挙げました。


 「むむむっっっ?!」と思った読者の方々へ、今回はその未熟さ全開で活動した岩手県立大学看護学部学生ボランティア団体「カッキー’S」の活動を紹介します。

 災害が起きて、自分なんかに何かできるのか?!と思われているみなさんにお読みいただけたら幸いです。それではどうぞ!!!!!!!!

●未熟さという強み

 再度書くこととなりますが、私は東日本大震災を保健師1年目、ピチピチのビッチビッチの時に経験しました。そして2年目から精神を崩壊させたにも関わらず、精神保健担当をします。

 しっかり最初からお読みいただいている方には伝わっていると思いますが、大学生の時の勉強量はほどほど(テヘペロ)。
 そんな人に大切な家族やモノを失った方、メンタルヘルス不調の方のケアができるはずがないんです。

 控えめに言って怖い。
 何が怖いって、きっと自分が「何もできないこと」を、また「突きつけられること」が怖かったんだと思います。何かをしてあげたいと思うのに、それができないという自分を知ることの怖さがあったのではないかと思います。

 でも、精神科医という最強のパートナーとの訪問で守られたこともあったのですが、意外にも何もできない自分を受け入れてくださる皆さんがいらっしゃいました。「あなたも家をなくしたのにね。若いのによく頑張ってるよね。」「私のこんな話をずっと聞いてくれてありがとうね。でも、もしかしたらあなたの将来のためになるかも。」……

 そして、この心の奥底から尊敬する精神科医は「僕も、想像もできない程の喪失体験をした方々に治療やケアができるか正直わかりません。自信なんてない。薬やカウンセリングには限界があるから。最後は付き合い続ける覚悟かなぁなんて思ったりしているんです。」

 ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
 ん?!むむっっ?!

 ここで気づいたんです。
 自分は専門職だし、何かできるとおこがましい考えを持っていたのではないかと。未熟であることってそんなに悪いことではなく、むしろ対象者にとっては親近感を持ちやすいというポジティブな側面があるのではないかと。そして、何よりあなたから離れないという「覚悟」がケアなのではないかと。

 気負いを捨てる × 未熟を受け入れる × 付き合い続ける覚悟 = 若者で支援!!!!!!→カッキー’S爆誕!!!!!

 はい、だいぶ説明はしょってますが笑

 母校の先生方から私たちにできることはないか、と幾度となくお話をいただきました。本当に嬉しかったのですが、私の経験年数ではダイナミックに先生方と協力して何か、というのが難しかったのです(悔しいですね。自分にもっともっと力があったら、素敵な先生方といろいろできたはずなのに…)。

 そこで、「学生ボランティアを立ち上げて、サロンを開く程度であればお手伝いできると思います…」というお話しをし、そこでフットワークめちゃ軽で動いてくださった先生とその元に集まった8名でカッキー’Sが立ち上がりました。
※立ち上げの経緯や活動の詳細等々は下に論文(リポジトリURL)を掲載していますので、ぜひお読みください。

 そこから約10年間、毎月山田町でサロンを行ない、かつ、それ以外にも様々な活動を展開していきます。私は英語ができないのでわからないのですが、このカッキー’Sをサポートする先生に伺うと「海外の論文等見てみても、継続的に看護学生が被災者支援をしているのは世界初だね」と!!!!激ヤバ。

 それでは写真ですこーしどんな活動をしたかをご紹介。

 これみてください⇩⇩⇩
 支援に来ている学生が美味しくうどんを食べ、支援される側の被災者がせっせとうどん作っています。笑
 でもこれがいいんですよね。支援する、されるではなく、重要なのは一緒の時間を共有すること。専門職や大人のボランティア団体が行うサロンでは気を使って疲れる、自分たちの被災体験を話さないといけない等々思っている被災者にとって、元気で未熟な学生が来てくれるのということは本当に力がもらえたのではないかと思います。

地元の高校生にも参加してもらっていました!

 
 そして少しずつ、血圧測定や健康教育を学んで実践!
 アロママッサージは福岡県の「あいのわ」さんよりご指導・ご支援いただき、カッキー’Sの大きな武器の一つになりました!

 未熟だから、できないから、で終わらず、努力して、できることを増やして頑張る!!!学生の真っ直ぐなパワーが多くの人に力を与えたのは言うまでもありません。何より、私も一被災者として、学生たちに力をもらっていた(支援されていた)と思っています。

試行錯誤しながら支援を実践!!今の学生はディスカッションが苦手なんて言いますが、その場が少ないだけなんですよね。本気の学生は眩しいぐらいにピッカピカ!!!

 
 そして、支援を継続していると男性がサロンに来てくれないが、既存資料の分析をしたり、話しを聞いたり、アンケート調査をし、男性の方が引きこもったり、健康状態が悪いことが明らかに。←これ学生が自分たちでやっているから本当に素晴らしい!!

 そこで、自分たちが支援に来ていない時でも自分たちで健康的な生活ができるように、また、男性が好きなことという切り口から(尾無の強い思いもあり)運動器具を保健センターへ贈ろう!プロジェクトを立ち上げ、募金活動やdocomoさんの協力を得てクラウドファンディングを実施し、見事贈呈。山田町で運動をする人が爆増。

運動器具の寄贈。年単位での利用者が爆増。素晴らしい!!!

 
 また、地元の高校生で医療職を目指している人が震災後に爆増したこと、被災後に何もできないという思いに駆られる高校生も爆増しているとのことから、看護師・保健師・助産師・養護教諭を集め、キャリア教育を実施。参加者の中で、一緒にボランティアをしたい人も募り、活動を行いました!この中から、被災地で働く看護職が複数名出てくれました!!!!!
 

沢山の笑顔!!真っ直ぐなパワーの塊!!!!!!

  そして、大学生も私も学会で発表をしました!!!!(お〜〜〜〜〜!)
 その他にも雑誌への投稿も複数しながら、現状の発信にも努めました。
 よ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜く見ると、私のポンコツな資料と、学生の素晴らしい資料を見ることができますね笑

教員になって改めて思いますが、卒論と別に学会発表をする学生。すげぇ。本当にすげぇ奴らだったんだなと。

 もお、ここでは語り尽くせないほどのいい活動、裏の準備がありますし、学生同士の強い絆がありますが、それはまた後ほど機会があれば…。

 そんなこんなで世界初にふさわしい団体!ってことです!!!!!


●未熟なコーディネーター尾無の失敗

 もう、ここまで書いたし、伊佐坂尾無の今週はいいんでないの?!…なんて思いますが、このままでは「すげぇじゃん、こんないい活動して!!感動的!!」と良い側面しか見えていませんので、これではいけません。笑

 やっぱり失敗もお伝えしないとね。

 私は新任期保健師2年目からこの活動のコーディネーターをしています。
 ここで痛感したのは、学生は未熟でも良かったのですが、コーディネーターは未熟ではいけないってことですね。 

 私は現地のことを知っています。住んでいますし、日々保健師として活動をしています。
 被災者の微妙な心の変化や支援者の思いも理解しているつもりです。必要な支援もそれなりに実感している。しかも、尾無は東日本大震災に取り憑かれている状態ですので鼻息荒々な訳です。

 学生はいい意味でいろんなアイディアを出しますし、自分たちがカッキー’Sであり、様々な活動をしたいわけです。

 今であればもう少し学生に向き合い、ディスカッションをし、余裕を持って対応ができたのでしょうが、当時はそうはいきませんでした。

 「これが必要だからこれをやろう!やらなくてはいけないと思う!!!」
 「それはやってはいけない。被災者の気持ちを考えたらそれはだめ。」
 「それやっていつ終わりにするつもりなのか。撤退を考えたらすべきではないのでは?」
 「学生レベルでできることなんて小さいことを言っていてはだめ。もっとやろうよ!!」


 う〜〜〜〜ん。
 言って良かった側面もあると思います(思いたい)。
 でも、かなり誘導的だったと反省していますし、学生と衝突してしまったという罪悪感も強くあります。

 この場を借りて謝罪します。
 ごめんなさい←直接言え

 こういう思いも相まって、やっぱり自分の役割って何かを考えた時、広く・確かな形で価値を残す(伝える)ことだと考え、論文を書きました。ごめんなさいで済んだら警察はいらないですから(意味不明)。
 ちょっと不恰好ではありますが、こういった様々な思いが詰まった論文です。よろしければぜひお読みください!!


●カッキー’Sの使命とは

 約10年間続けてきた活動はコロナのせいでストップしています。
 でも、この10年間の意味ってなんだったんだろうと考える時間がたくさんありました。

 で、僕の結論は、カッキー’Sという活動で想いを一つにできた仲間たちと、今度は「被災地」ではなく「岩手県」をより良くする仲間として新たな関係性を再構築して活動することだと思っています。

 「10年間こんな活動したんだぁ!すごいね!!」

 …それではダメだと思うんです。私たちは、被災された方々や支援を後押ししてくださった方々、そして、ひいては亡くなった方々に育ててもらったんだと思います。未熟な自分達から、一人前になるきっかけをくれた。

 だから、今度は私たちが新たな力、確かな力をつけて、そして繋がって岩手県を盛り上げる。これが私たちの使命だと思っています。

 二度目になりますが、私は東日本大震災に取り憑かれているし、これからも取り憑かれ続けるんだと思います。
 と、いうわけで、私は今、カッキー’Sの卒業生たちと研究に取り組んでいます!!(下記に論文を掲載)また、卒業生保健師を中心とし、母校の卒業生保健師の会を立ち上げて運営しています!!!!(下記にホームページを掲載)

 実は今日、カッキー’S OBとお茶しました(メンズ2名と笑)。

 難しいことだとは理解していますが、この仲間達と本気でやれば、岩手県が面白い看護に溢れると私は信じています。使命なんてカッコよく言いましたが?ワクワクドキドキしながら、いい歳こいて夢を見ながら頑張りたいと思います!!!カッキー’Sのみんな、これを読んできださった身の回りを面白い看護で溢れさせたい方々はご連絡ください!!!取り憑かれた顔がエスプレッソ気味の尾無が、お手伝いさせていただきます笑

カッキー’S OBと取り組んでいる研究。テーマから面白くないですか?!笑


県大卒業生保健師で立ち上げた会「さっこらネット」。結構面白い展開
ができる可能性がパンパンな会だと思っています!!!

 今回は被災後の保健師活動から少しずれましたが、おもろい活動のご紹介でした!概要のご紹介になりましたので、今後の反応次第では詳細なご紹介も…
それでは!!!!!!

次回、第10話は「仮設住宅メンタルヘルスケア最前線!!」と題し、以下の3本立てでお送りします!!お楽しみに^^
・隣から太鼓の音が聞こえます
・SO私がREALクララ
・10年越しの寛解


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