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【読んだ本】 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?/山口周

この本を一言で言うと...

複雑化する問題に対して、適切な意思決定を行うための「美意識(直感や審美眼などの主観的なモノサシ)」が鍛えられる本

読むべき人は...

① 複雑化し難易度が高い問題への対応を抱える経営陣・リーダー

② 論理や理性による問題解決・意思決定に限界を感じている人

読んで学んだことは...

① 未知の複雑な問題に対して適切な意思決定を行うには、リーダーの「美意識」が求められる

これまでのような「論理・理性」に軸足をおいた経営(=サイエンス重視の意思決定)ではなく、「直感・感性」などの美意識に軸足をおいた経営(=アート重視の意思決定)が求められている。


② 美意識が重視されている理由として、以下の3つが挙げられる。

・論理的情報処理スキルの限界…論理的情報処理は「他人と同じ正解を出すこと」なので、差別化ができなくなる。どこかで論理による検討を振り切り、意思決定者の美意識に基づいた判断が必要になる。

経済成長による自己実現欲求市場への移行…論理的に機能的優位性や価格競争力を形成するより、承認欲求や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が重要。

システムの変化にルールが追いつかない世界…法律が追いつかない世界では、明文化されたルールを拠り所にせず、自分なりのモノサシ、つまり美意識に照らして判断する態度が必要。


③ 美意識とは「真・善・美」を見極めるための、主観的なモノサシ(直感・倫理・審美眼)である

・「何が真なのか」を論理(客観的な外部のモノサシ)ではなく直感(主観的な内部のモノサシ)で判断する

・「何が善なのか」を法律(客観的な外部のモノサシ)ではなく倫理・道徳(主観的な内部のモノサシ)で判断する

・「何が美なのか」を市場調査(客観的な外部のモノサシ)ではなく審美眼(主観的な内部のモノサシ)で判断する


④ 経営においてこれらを実践するには「アート・サイエンス・クラフト」のバランスが求められる。

・アート…組織の創造性を後押しし、社会の展望を直感し、ワクワクするビジョンを生み出す

・サイエンス…体系的な分析を評価を通じて、アートが生み出したビジョンに現実的な裏付けを与える

・クラフト…経験や知識をもとにアートが生み出したビジョンを現実化するための実行力を生み出す

アートはアカウンタビリティを持てないため、サイエンス・クラフトより弱者になりやすい(サイエンスがアートを批判することは容易。逆は難しい)。そのため、アートを組織を牽引するトップが担い(もしくは誰かを指名し権限委譲する)、サイエンスとクラフトは側近が担うという構造はバランスが取れて望ましい。

⑤ 美意識は絵画・哲学・文学・詩などを通して鍛えていく

・絵画…「見る力」が鍛えられる。パターン認識から解放され、本質を認識できるようになる。

・哲学…哲学における思考プロセスや姿勢を通して、批判的な思考ができるようになる。

・文学
…小説の内容を自分なりの「真・善・美」に照らして考えることで、アンテナの感度が高まる。

・詩…メタファーの引き出しを増やすことで、知的生産を効果的に行えるようになる。

読んで思ったことは...

新しくて正しくて求められるものを生み出す力の源泉は、誰か1人の圧倒的な主体性・正義感・責任感だ。

論理的な情報処理は「他人と同じ正解」しか生み出せない。それでは、もう新しいものを生み出せないし、世の中にたくさん転がっている難しい課題を解決できない。

これから、新しくて正しくて求められるものを生み出すには、一見すると合理的ではなかったり、バカげたことに見えるかもしれないが、個人の圧倒的な「世の中をこういう風に良くしたいんだ」という主体性・正義感・責任感なのだと思う。

それがこの本でいう「美意識」( =直感・倫理・道徳・審美眼 ) なのだと解釈した。

論理的な思考や、同じ正解を導くことに慣れ親しんだ私たちが、その美意識を習得していくためには、普段とは違うもの(絵画・哲学・文学・詩)に触れ、これまで築いた常識を少しずつ削ぎ落としていく必要があるのだと思う。そうすることで、自分だけの主体性や正義感、責任感が養われていくのではないか、と思った。

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