Toru

人に歴史あり。半径5メートル以内の人生を描きます。

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最近の記事

Vol.3-#1 祖父は成りあがり

「俺はいいけどTANBOは何て言うかな」 これはティムソンの口癖だった。 ティモーニは今でもフとした瞬間、祖父ティムソンの口癖を思い出す。 電車に揺られているとき、仕事中にウトウトしているとき、道で段差につまずいたとき、、、祖父はふいに現れる。 ティモーニはティムソンにとって初めての孫だった。 「初孫にして男子誕生!でかしたぞ!」 大正生まれのティムソンは大いに喜び、5メートル超えのこいのぼりを天高くぶち上げた。 ーーこれからは親子3代で米づくりができるかもしれない

    • Vol.2-#45 物語のおわり

      パリ・シャルルドゴール空港。 旅が終わり、日本に帰国する日がやってきた。 「さぁ、帰ろう。」 夫は言った。だがジャミ子はテコでも動かなかった。まだ帰るわけにはいかないのだ。 理由はスタバのご当地マグカップ。 プラハとパリ、今回訪れた二つの都市のマグカップを揃えたかった。 街を歩けばそこかしこにあるスタバなのに、ジャミ子はまだ、パリでスタバに行けてなかった。 「帰れない、、わたし帰れないの、、」 プラハではホテルの目の前にスタバがあったのでゲットしていた。もしプラハでゲ

      • Vol.2-#44 ハネムーン紀行⑪

        ラストミッション パリ最終日。ジャミ子には行かなければならない場所が二つあった。 一つはノートルダム大聖堂。 2019年4月に発生した大規模火災。現場を見てみたかった。 当時日本でニュースを見た時は、少しの驚きと悲しさを味わったが、やはりどこか遠くの出来事として見ていた。すぐに忘れた。 再建工事を行う大聖堂の周りにはパネルが設置され、そこに写真が展示してあった。写真は被害の状況や再建の過程を記録していた。 「こんなに燃えたのか…」 写真で見ても痛々しい。 燃え続ける大

        • Vol.2-#43 ハネムーン紀行⑩

          パリの行列コレクション パリには日々、多くの観光客が訪れる。 そのため、どこに行ってもぶち当たるのが行列。特に有名な飲食店はどこも大盛況。 パリを味わい尽くすには、待つしかないのだ。 ************* 【行列1】マカロンといえば「ラデュレ」 お昼前に行くも、シャンゼリゼ通りという立地もあって大行列。優雅な雰囲気に包まれて時間の流れが遅くなったのか、皆ゆったりと食事を楽しんでいた。中にはソファーで昼寝をしているお父さんも。結果2時間待ち。 【行列2】絶対外せな

        Vol.3-#1 祖父は成りあがり

          Vol.2-#42 ハネムーン紀行⑨

          アンティークの価値 朝8時。夜明け前の街を抜け、ジャミ子はヴァンヴの蚤の市にやって来た。 地元の強者は暗闇のなか、ライトを片手にアンティークを品定めしている。 ジャミ子のスタンスはもっとライトだ。専門的な知識がある訳ではない。 古い家具や道具を大切にするヨーロッパの風土や、それらを上手に暮らしに馴染ませるセンスが好きなのだ。 だんだんと日が昇ってきた。とあるお店の前を通った時、何の気なしに手に取った宝石箱。美しく重厚なデザインに惹かれたのだが、なんせ重かった。重すぎ。

          Vol.2-#42 ハネムーン紀行⑨

          Vol.2-#41 ハネムーン紀行⑧

          モナリザまでの最短距離 出発10日前、ジャミ子は焦っていた。 ルーヴル美術館の予約が取れません!!! ルーヴルは夫の悲願だった。 オフィシャルサイトを開いたところ、滞在期間中の全ての日にちが完売していた。 これは一体……取り掛かるのが遅すぎた。。 しかし数時間後、ジャミ子はとあるチケットを入手した。 それは現地ツアーを企画している会社の「入場チケット+モナリザの前まで連れて行ってあげますよツアー」だった。 なんだか怪しかったが、イチかバチか…。2万円払った。芸術はバ

          Vol.2-#41 ハネムーン紀行⑧

          Vol.2-#40 ハネムーン紀行⑦

          やさしい世界 朝10時、パリ・オルリー空港。 プラハからのフライトを終えたジャミ子は、さっそく市内を目指した。 パリ市内のホテルへはバスと地下鉄を乗り継いで行く。バスの終点、ダンフェル・ロシュローに着いたら、地下鉄に乗り換えだ。 バスを降り、地下鉄の改札前でガイドブックを睨んでいると、一人の男性が近付いてきた。 「May I help you?」 パリメトロのジャンパーを着たスタッフだった。 「こ、こわい…」英語もフランス語もチンプンカンプンなジャミ子は怯んだ。 だが

          Vol.2-#40 ハネムーン紀行⑦

          Vol.2-#39 ハネムーン紀行⑥

          ヨハンを探して ジャミ子は昔、浦沢直樹の「モンスター」という漫画を読み、「自分はいつかヨハンを探しに世界を放浪するだろう」と思っていた。そうしてさまよい、辿り着いた先のカレル橋。 橋の上では皆、写真撮影に情熱を燃やしている。裸スレスレのドレスで風に吹かれているアジア人女性はアッパレだった。 (プラハは北海道より緯度が高く冬は極寒) だがヨハンはいない。 次にジャミ子が向かった先はダンシングハウス。 ここもいない…。 一通り探したが、ヨハンはプラハにいなかった。ジャミ

          Vol.2-#39 ハネムーン紀行⑥

          Vol.2-#38 ハネムーン紀行⑤

          キット、首をカットされても大丈夫! 「世界で一番美しい街」と言われるチェスキークルムロフ。 プラハからバスで3時間。膀胱は破裂寸前。 ちょうど12時。ランチタイムだ。夫婦はガイドブックに載っているお店に行き、席に案内された。すると同じタイミングで隣の席に一人の男性客が通された。 少しの間が空いた後、先ほどとは違う店員が来て隣の男性客に話しかけた。 恐らく、以下のようなやり取りが行われた。 (店員)「予約していないならこの席は使えないわよ!」 (男性)「ノー!さっき別の

          Vol.2-#38 ハネムーン紀行⑤

          Vol.2-#37 ハネムーン紀行④

          アルバート、お前もか…! ジャミ子には外国での理想の過ごし方があった。それはそこに住んでいるかのように過ごす事だ。 そのためにホテルはキッチン付き、バストイレ別、35㎡の物件を押さえた。調理道具や食器も常備されているし、コンロやレンジもあった。パーフェクトである。 ここで新生活が始まる。この国に住んだらどんな毎日を送るのだろう。 日本で旅の準備をしながら、ジャミ子は夢を膨らませていた。 さて、チェコに来て3日目、まだ初々しいジャミ子のさわやかな朝。 こんな日はスタバで

          Vol.2-#37 ハネムーン紀行④

          Vol.2-#36 ハネムーン紀行③

          不動の男が動かしたもの チェコ、プラハ城。 見どころいっぱいのこの城において、ジャミ子が最も興奮した瞬間をお届けしよう。 プラハ城というのは城であるからして、守らねばならない。 誰が? 「俺が」 この衛兵は直立不動で決して動かない。目も合わない。 ジャミ子が横でどんなにおちゃらけようと、決して表情を緩める事なく任務を全うするのだ。 彼らは毎時ちょうどに行われる交代式の時、はじめて動くことを許される。この交代式は正午に行われるものが規模が大きいと知ったジャミ子は、11

          Vol.2-#36 ハネムーン紀行③

          Vol.2-#35 ハネムーン紀行②

          勘違いの激しい男と我慢ができない女 チェコ。 チェコはEUに加盟しているものの、通貨はユーロではない。チェココルナだ。チョココロネではない。 それなのに夫は「チョココロネ」と言う。短縮する時は「コロナ」と言う。 ジャミ子はあえて突っ込まなかった。可愛いではないか。 さて、チェコの首都プラハ。やはりプラハ城に行くべきだろう。 夫婦はガイドブックを開いた。プラハ城には見所が多くあるらしい。 ○聖ヴィート大聖堂 ○聖イジ―教会 ○旧王宮 ○黄金小路 ○衛兵交代式 など ガ

          Vol.2-#35 ハネムーン紀行②

          Vol.2-#34 ハネムーン紀行①

          チェコは物価が安い? さぁ、旅に出よう。ヨーロッパに行きたい! だが時代は円安地獄。ジャミ子は頭を抱えていた。 そんな時、とある噂を耳にした。 「チェコは物価が安い」 円安という向かい風をはね返すパワーワード「物価が安い」。 チェコに行くしかない。 アムステルダムを経由し約19時間。ジャミ子はプラハの空港に降り立った。 「ドブリーデン、プラハ!」(こんにちは、プラハ!) まずはランチだ。チェコの料理を食べよう。 お腹を満たすべく向かった先は旧市街。若い二人の旅の予算

          Vol.2-#34 ハネムーン紀行①

          Vol.2-#33 てか結婚

          母との同居生活を3ヶ月で終え、一人暮らしを始めたジャミ子の部屋に男が転がりこんできた。 男は中学校時代の同級生。 中学・高校時代は子ザルのように戯れていた友達だったのだが、いつの間にやら男女の仲に。 「てか結婚する?」 子ザルは何の気なしにプロポーズをした。 なんて気軽なのだ、、 人生の決断をこんなにも簡単に下すこのサルは、ある意味、秀吉的な大物になるかもしれない。 部屋を更新するタイミングで二人は籍を入れ、新居に引っ越した。 23歳、ジャミ子は自分だけの人生を歩み

          Vol.2-#33 てか結婚

          Vol.2-#32 大仏の目に涙

          ジジのお葬式。 ジャミ子とジャミ兄は葬儀場で弔問客を出迎えた。 ジャミママは上の階にある宴会場で飲んだくれていた。まったく、どんな時でも彼女はブレない。アッパレ宴会番長! 生前のジャミジジは身内を自分の職場で働かせた。 叔父(ジャミママの弟)とジャミパパは、ジジのコネで水道関係の仕事に就けたのだ。 そんな訳で職場仲間も葬儀にやってくるのだが、その一団にはもちろん、ジャミパパがいる。 ジャミ子は10年以上ぶりに父親の姿を目にした。 遠くで同僚やジャミ兄と談笑しているジ

          Vol.2-#32 大仏の目に涙

          Vol.2-#31 ワンクールの女

          ジャミ子は母親との同居生活に終止符を打った。 母との関係性を再構築できると思い、希望を胸に始めた同居生活は絶望に終わった。 振り返ってみるとたったの3ヵ月なのだが、ジャミママと一緒に過ごすのはこれくらいが丁度いい。 そう、それがワンクール(3ヵ月)の女。 逃げるが勝ち。だが、遺恨は残したくない。 酒乱のジャミママは事あるごとに「これまで育ててやったお金お金お金…」と、お金の愚痴を吐いてきた。 そのためジャミ子は手元にあるお金を全て置いてきた。後々になってグチグチ言わ

          Vol.2-#31 ワンクールの女