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20歳、夏、つめたい紅茶とボーカロイド。

 夏休みとして夏を過ごすのなんて、何年ぶりだろう。
 昨年の夏は浪人として勉強生活であったし、高校は通信制だったので、特に長期休みという概念もなかった。受験が終わった直後の春休みは、このアカウントでも扱ったように、ラーメンを食べたり、ダンスの公演を観に行ったりということもした。しかし、休みという点では、あまり休めた気はしていない。というのも、あのあたりの時期に私は、極限まで体調を崩していたのだ。

 



私を支えた曲たち

 私事だが、今年の6月、初音ミク氏をわが家に迎えた。V4。彼女への指示出しは思ったよりも難しく、技術が必要で、私が正しく指示すれば、必ず応えてくれる。私よりも年下なのに、しっかりしていてすごいと思う。なぜ今になってそのような決断をしたのかというと、受験シーズンから、ニコニコ動画がサイバー攻撃でダウンするまでにかけて、私はボカロというものにどんどんのめり込んでいっていたからである。
 もともと、ボカロは好きだったが、ここまで自発的に何曲も探すようになったのは、最近になってからである。専ら、『VOCALOID視覚芸術展』だったり、『感性の反乱β』などのタグを探して、比較的落ちついた、目を閉じて聴き入れるような曲をマイリスして、繰り返し流していた。

 サイバー攻撃により何曲か行方不明になっているが、私がひときわ気に入っている曲を挙げていこうと思う。Youtubeにあるものはそちらへのリンクを、ないものは@wikiの歌詞ページへのリンクを、作者情報と共に載せていく。

追記:8月5日、ニコニコ動画が復活したため、リンクをニコニコ動画のものに統一する。現在のニコニコ動画は、ログインしなくても動画を見ることができる。


からっぽへ / Δ

Music Δ (https://twitter.com/delta___p ) (mylist/63660200)
Vo. カゼヒキβ

MV スタジオかにたべよ
- Animation, Illust : 津島ソラ (https://twitter.com/013095Yui )
Composite, Edit : 柚璃遥(https://twitter.com/Yuzuri_Hal )
Lettering : Δ
Scenario, Direction : みんな

概要欄より

 初出は『無色透明祭』。その後、2023年12月20日にMVつきでYoutube 及びニコニコ動画に投稿された。開幕から、実写の映像とお洒落なタイトルで一気に引き込まれ、美麗なイラストと透明感のあるピアノで心を掴まれた。曲中で他の作品との繋がりも示唆されており、考察要素も存在するというところも、好奇心をくすぐられて好きである。他にも、2023年8月11日に投稿された『夜間飛行』なども、独特の世界に導かれるようで、とても楽しい。


深昏睡 / 春野

■音楽 春野 [mylist/56311605]
Twitter(@xupxq_)

■美術 YOMU [mylist/45120123]
Twitter(@yomu_77)

概要欄より

 2017年9月18日に投稿され、アルバム『filia』に収録された作品。ゆったりとしたテンポと特徴的な鍵盤サウンドが特徴で、歌詞や音から感じられる『ゆるやかで美しい鬱』みたいなものがとても好きな曲である。春野さんの曲に出会ったのは『ghost in a closet』(ニコニコ動画のみに投稿)が最初で、宇宙空間を泳ぐような曲の空気に一目惚れした。
 2022年のEP『25』発売時のインタビューによれば、『深昏睡』では『25』の制作期間に描いたことと共通する事柄が描かれており、それは春野さんの人生において実際に起きた出来事だという。ボカロ曲以外の春野さんの作品も、どんどん聴いていきたい。


フォトンブルー / はるまきごはん

Music / Movie / Illust : はるまきごはん
Twitter : https://twitter.com/harumaki_gohan

概要欄より

 はるまきごはんさんの曲は全部好き。なので、その中でも私はがじめて視聴した出会いの曲であるこの曲を挙げたい。今でもずっとお気に入り。最初の出会いはおそらく小学6年生のとき。原点にして頂点というやつである。他にもお気に入りはあって、最初、『Tender Rain』にするか『November』(アルバム曲)にするかものすごく迷ったのだが、やはり代表としてこの曲を選んだ。
 この曲はアルバム『BLUE ENDING NOVA』に収録された曲で、アルバムジャケットにも用いられる象徴的な『ブルー』がこのMVにも用いられている。どこかぼやけて靄のかかった田園風景や、どこまでも深い青色の表現など、非常にノスタルジックな映像と、独特の透明感あるギターやドラム(ドラムにこの表現を使うのは珍しいと思う)が見事に融合して、静謐な美しさが演出されていると思う。10月には活動10周年記念アルバム『おとぎの銀河団』も発売されるので、是非とも購入したいところ。



余裕欲 / 稲葉曇

mylist/54974850
■ X(Twitter) https://twitter.com/inabakumori
■ Web https://inabakumori.fanbox.cc/
■ inst & lyric file https://bit.ly/2QMImD5

Music : 稲葉曇
Vocal : nagiβ & カゼヒキβ
Illustration:ぬくぬくにぎりめし https://twitter.com/NKNK_NGRMS

概要欄より

 去年の秋。模擬試験や英検対策等で缶詰になっていたとき、毎日のように聴き続けていた曲である。そのとき無性に京都旅行がしたいと思っていた私にとっては、勉強しながら聴く曲であると同時に、京都旅行のテーマとして勝手に根付いていた。受験が終わった今でも、頻繁に聴いている。稲葉曇さんの曲では他にも『シンクタンク』や『フロートプレイ』も好き。『稲葉曇』の名の通り、なんとなく曇天を連想させる気だるげな歌愛ユキの歌い振りと、独特なギターサウンドが大きな魅力のひとつだと思う。



ブラインド / wotaku

「ブラインド」
歌 / 初音ミク
作詞・作曲・編曲 / wotaku( / wotaku_aaa )
イラスト / ちふり ( / 4sakana5 )
マスタリング / 袴田剛史(FLAIR)

概要欄より

 アルバム『アンティーク』収録の、2022年11月11日に公開された楽曲。ディストピア系wotaku。緊張感のあるドラムと滑らかなピアノが特徴で、もちろんwotakuさん特有の激しいドロップも存在する。歌詞から察するに、あるシステムにコンピューターウイルスが侵入したことで作品世界は未曾有の危機に陥っており、主人公のAI(アンドロイド?)の絶望が描かれていると見え、『ブラインド』の名の通り、視力を喪失するような描写がある。何もかも手遅れになった状況を描く曲がwotakuさんの曲には多く、そうした絶望感のある光景に美しいサウンドを混ぜるというところがとても素敵だと思う。
 ちなみに、私がwotakuさんを知ったのは『ジェヘナ』という作品が最初である。

 『地獄』の名の通り、こちらもなかなかの苦しみを孕んだ曲である。浸りたいときにおすすめ。


百葉箱 / はこ

歌…初音ミク
その他…はこ



□スペシャル感謝□

霧灯ゾクさんhttps://twitter.com/touzoku_2525?s=21&t=-1PJ0vkkD0BxV2ZOT7ZFnQ

ぱんきちあんこ□さんhttps://twitter.com/oe___ank?s=21&t=-1PJ0vkkD0BxV2ZOT7ZFnQ

失神さんhttps://twitter.com/nyam__x__?s=21&t=-1PJ0vkkD0BxV2ZOT7ZFnQ

概要欄より

 ニコニコ動画限定で投稿されている曲。先に結論から言っておく。百合である。
この曲、作曲からMV制作に至るまで、すなわちボーカル以外は全てはこさんが担当しており、ボカコレ2023年夏のルーキー2位にランクインするなど、確かな結果を出している。聴いたこともない独特なサウンドと、MVにおける無機物の動き出す様がとても面白い。動画の最後には鳩の首が伸びたり縮んだりする没カットも公開されていて、曲に対する面白さとは違った意味で楽しかった。学校によくある百葉箱の前で繰り広げられる甘酸っぱい関係性が、とても魅力的である。


ポグロムの繭 / 白秋

Twitter : https://twitter.com/_hakusyu
Instagram : https://instagram.com/_hakusyu?igshid=YmMyMTA2M2Y=

概要欄より

 なんと、全編ドイツ語の曲である。初音ミクの囁くような歌声と白を基調としたMVがどことなく寂しさを感じさせる。時にはノイズのかかったシャウトなど、ところどころ激しさを感じさせる曲調であるが、終始穏やかさがあって美しい。
 ……ところで、「ポグロム」というのはロシア語で破滅や破壊を意味するらしい。また、転じてロシア帝国やその周囲におけるユダヤ人迫害のことも指す。また、歌詞の日本語訳をYoutube版コメント欄にて白秋さんが披露しているのだが、

彼女は繭の中で糸を吐き続ける
白色の蚕のように
白い壁に囲まれて
静かな棺の中で眠る

ここは狭く苦しい
ここから出られないでいる

コメント欄より

 と、最後の歌詞の翻訳が抜けている。「Ich nehme an, es ist alles meine Schuld.」は日本語にすると「すべて私のせいだと思う」となるのだが、それを含めて考えると、罪悪感と苦しみに満ちた歌詞であり、この曲の重いテーマや、〈私〉の犯した(恐らく洒落にならないレベルの)罪に想いを馳せることになる。

 浪人期間は曲の解釈に頭を巡らす余裕が全くなかったのだが、こうして落ち着いてから歌詞の意味を振り返ると、なかなか心に来るものがある。でもやはり私にとっては思い入れの深い曲であるため、ここに載せさせてほしい。

Colorful / クシャミィ

詞・曲・映像 クシャミィ
X: https://twitter.com/ku_sya_mee

概要欄より

 とあるように、歌詞はすべて255までの乱数で、RGBと当てはめられた乱数の組み合わせによってどんどんとMVに映し出される色が変わっていく。MVでは規則的に模様や線が動いたり、図形が映し出されたりして、どことなくピタゴラスイッチみを感じられる。


ラブ&デストロイ / MI8k

音楽 みやけ @napoliemon mylist/36109891

絵  http://www.pixiv.net/member_illust.ph...    
Shan Jiang様のイラストを使用させていただきました。    
しーくん、メールの翻訳ありがとうございました。

概要欄より

 2016年7月23日にアップされ、アルバム『Cupid Power』に収録された曲。遠くまで響くようなギターの高音だったり、自分の中の欲望と戦うといったパーソナルな歌詞がとても好きで、中学生くらいの頃からよく聴いている(最初に聴いたのは『タイムイーター』)。MI8kさんの曲はどれも近未来感があってかっこよく、それでいて洗練されているから素敵だと思う。また、歌っているのはGUMIなのだが、どこか幼さを感じさせるこの調声はたぶんMI8kさん特有のものだと思う。歌いぶりから、なんとなくスーツが似合うGUMIさんという感じもする。


人間だった / ピコン

作詞・作曲・映像 / ピコン mylist/38652935

「8」と打つと「❅」になります。

Follow Picon: Twitter: / picon_bs
Instagram: / picon_bs
Weibo: https://www.weibo.com/6414845088
Soundcloud: / bokumos

(筆者中略)

動画素材 Mazwai http://mazwai.com/#/grid

概要欄より

 最後を飾るのは、2017年10月21日に公開されたこの曲。ピコンさんの曲を初めて知ったのは『ガランド』からで、『人間だった』ははるまきごはんさんのアコースティックミニアルバム『SLEEP SHEEP SUNROOM』でカバーされていたので初めて知った(ちなみに、春野さんもこのアルバムで『アトモスフィア』をアレンジしている)。くせになるパーカッションと後悔たらたらの胸が苦しくなるような歌詞が言いようのないノスタルジーを感じさせる。また、初音ミクのボーカルによく耳を澄ますと、ピコンさん本人と思われる男性の歌声も聴こえる。

 ちなみに、このMV、全部フリー素材でできている。インターネットってすごいなあ。



おわりに

  8月5日、ニコニコ動画が復活する。ボカコレの再始動は8月中旬。ボカコレ夏の開催まで秒読みとなった(私も、出場する予定)。

追記:復活した。出場もした。ボカコレ夏は中止、代わり『ぼかえり2024夏』が開催される運びとなった。

 長い苦境の末ついに復活を遂げたニコニコ動画に、いったいどれだけの動画が集結するのか。既存の動画にも新しい動画にも、今から会いにいくのが楽しみである。

追記:この追記を書いている現在は8月9日だが、すでに素晴らしい曲を何曲も発見している。やはり私の生活には、ニコニコ動画が必要不可欠だとつくづく思った。

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