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やはり「ヘンダーランド」で一本、だよな。~ひまわりが出てくる前の「孤独感」と「一人前」~

ひまわりが出てくる前の「孤独感」と「一人前」

やっぱりひまわりが出てくる前の「孤独感」と「一人前」が
力強く描かれている、となると本郷みつる監督の代表作
「ヘンダーランドの大冒険」になるよなあ、といふのは
自然の理。

まあコンプライアンス関連で確かに大塚芳忠と田中秀幸
が使われているオカマのボスに関しては言及が厳しくなるし。
階段落ちして死んだ人と共に、その辺りの話は自ずとスルー
して「ヘンダーランドの大冒険」の好きなところをつらつら
と語れればそれでいいわけですが。

(ちゃんと三大ヒーローでカンタムロボ◆大滝進矢が出ている
のも珍しい作品の一つ、ではあるわけだし)

まあ確かにしんのすけの「孤独感」を演出していくが
為に最初のシークエンスを「タルい」とか「長い」と吐露
してしまう人の気持ちもわかる。でもそこまで追い込まない
と、一度「やる」と決めたら目的に向かって迷わず突き進んで
いく「決断力」にはならないので、そこのチャージ部分も
理解して行くべきところなのかと。

●スタッフ&キャスト

ここは「クレヨンしんちゃん映画大全」から。
ス・ノーマン・パー様の◆古川登志夫[青二]を誤字チェック
漏れしているのは残念なんですが。

監督・脚本・絵コンテ/本郷みつる
脚本・絵コンテ・演出/原恵一
絵コンテ・設定デザイン/湯浅政明
本郷みつる監督の集大成ではあるので、メインの座組は
こんな感じ。毎度お馴染みで脚本はクレジットだけで、
絵コンテから書きだしているからこのスケジュールで
やれていたんだとは思う。
 キャラのソリッドで前衛的なデザインはやはりその後
監督になる湯浅政明のセンスの賜物かと。

ねんどアニメ/石田卓也
のはらしんのすけ「パカッポでGO!」
ゲスト声優は雛形あきこだし、EDもavexだから歌ってるのは
この時代の正義。

音楽/荒川敏行、宮崎慎二

(一九)九六年の「ヘンダーランドの大冒険」から
宮崎慎二や浜口史郎さんと共作の形を採っています。
これは時間的な問題からです。それまで打ち合わせから
録音まで二ヶ月くらいはあったんですが、その頃から
一ヶ月を切るようになったんです。

構成・取材/小林淳
「クレヨンしんちゃん映画大全」p108
インタビュー 音楽:荒川敏行

とのことで、スケジュール逼迫の部分もあって、ここでは
宮崎慎二氏が参加していると。

そんな経緯もあってやけに緩急がついているのは、
おやまゆうえんち感の漂う洗脳系連呼CMソングの緩さに
なるのかな。

「意味が分からないけど真似したくなる」リアルさ

と喝破してる人がいて感心したことがあるけれど、
洗脳系連呼CMソングの真髄といえばそこなんだし。

「ちがごろぉー、なんかー、ヘンダー」
「ヘンダ、ヘンダよ、ヘンダーランドー♪」

群馬方面にある遊園地に一人で電車に乗って行って
立ち向かう、といふシークエンスはこれもまた「上武の差」
に一人で立ち向かうしんちゃんのカッコ良さと相まって
なかなか刺さるものがあるのでございます。

しんちゃん(野原しんのすけ)◆矢島晶子
野原ひろし◆藤原啓治
野原みさえ◆ならはしみき

よしなが先生もまだ◆高田由美の時代かと。

王子はどうせ歯の浮くホッシーだからていよくスルー
するとして、やっぱりトッペマ・マペット◆渕崎ゆり子が
ズバ抜けている。彼女ももともとグループこまどりの出身で
『めぞん一刻』の八神いぶきと『少女革命ウテナ』の姫宮
アンシーで全く異なるタイプの「魔性の女」を演じる中で、
やがて『六三四の剣』の夏木六三四(少年時代)をより
ストレートにした『おじゃる丸』カズマに収斂していく中
でのヒロインぶりがこの作品においては眩しい。

で、チョキリーヌ・ベスタは◆深雪さなえなんですか。
旧名は室井深雪。山梨シルクセンターの鳴り物入りかつ
田中公平音楽、といふムチャをして一時期爆死したことでも
知られる『ボタンノーズ』で主役ボタンノーズの声を演じてた。
オーガス言われてもピンと来ないので、世代的にはやはり
『幽遊白書』のぼたんなんですが。

呪文のストレート率と記銘能力の高さがすさまじい

だからこそやっぱり『チンプイ』からの連綿を継承して
いる呪文のストレート率と記銘能力の高さがすさまじい
ものがあるなあ、と。

「トッペママペット、トッペママペット、トッペママペット!!」

「チョキリーヌ・ベスタッ!」

「スゲーナ・スゴイデス!!」

は特にストレートですごく刺さってくる。

そしてなんと言っても本郷みつる続投ならレギュラー化
していてもおかしくなかったス・ノーマン・パー様。
◆古川登志夫[青二]が演じていたこともあって、
なかなか魅力的なキャラに仕上がっていたのが印象深い。

ス・ノーマン・パー様「懐かしいなぁ。…はじめてだけどな」

しんのすけ「作戦ターイム!」
ス・ノーマン・パー様「認める」

しんのすけ「二度目の作戦ターイム!」
ス・ノーマン・パー様「認める」

そこいらあたりの畳みかける流れが楽しくて、ついつい
「ヘンダーランドの大冒険」と名前が上がって来るので、
ひろしが言い放つ「今オレたちの息子が、ちょっとオトナに
なったところだ…。」

が意外と響きも刺さりもしないんですが。

(ただ、これは余談めくけど、『青ブタ』こと青春ブタ野郎
シリーズで、記憶を喪って別人格になってるかえでが
ひまわりの未来で、梓川咲太◆石川界人がちょっと未来の
しんちゃんだとすると、結構あのシチュエーションは
「え?何それやだこわい」な状況ではあるよな、とも思った
のが、所詮「一人前」になれなかった人の素直な実感では
あるよな、みたいなことを述べた上でこの項目を締めようかと)

 テレビシリーズで行くと本郷みつる作品は『キョロちゃん』
『カスミン』『本好きの下剋上』と連綿していくわけですが、
映画で一本となるとやはりこの「ヘンダーランドの大冒険」に
行き着くのかなと。

やはり「ヘンダーランド」で一本、だよな。でした。

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