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息子が超短命と知った日①

 診察室に入ると、先生は普段よりも忙しそうで、他の患者さんへの指示を看護師さんにに飛ばし、急いで席に座った。
(先生)あれっ、旦那さんも一緒に来てるって聞いたけど…
(私)すいません。こんな時に、トイレ行ってるんですよー。チョット呼んできますね。もう、帰ってくると思うのですけど

 私が、診察室から、出ようとすると先生は、

(先生)大丈夫ですよ。旦那さんには、後で診察しながら、詳しくお話しますから、結果だけ先に説明しておきますね。
(私)あっ、はい。お願いします。
(先生)昨日、結果が来ました。

そう言って、準備していた紙を私に見せた

(先生)18トリソミーでした。
(私)えー。ダウン症だと思ってたから、ビックリしました。意外ですねー、はははー

(先生)18トリソミーって聞いた事あります?調べました?

(私)いゃ、ササッーって見たことはあるかもしれないけど、あえて、調べずにいました。ダウン症じゃないかってそればっかり考えてたから・・・

(先生)ダウン症は、21番目の染色体が3本あるから、21トリソミーと言われていて、18トリソミーは、18番目の染色体が3本あります。エドワーズ症候群とも呼ばれてますよ。ほら、ここ3本あるでしょ。

(私)18番目ね。18トリソミー

(先生)じゃあ、後で診察しながら説明するんで、旦那さんと一緒に後で診察室に来て下さい。

(私)もう、終わりですか?

(先生)結果早く知りたいと思って、またあとで呼びますからね。その時、詳しく説明します。

といって、私は待合室に舞い戻った。大事な検査の結果を聞かされるシーン、もっと映画のワンシーンの様なドラマティカルな様子を想像していた。
あまりにもサラッサラに終わったので、拍子抜けというか、18トリソミーと言われて、ミミズみたいな棒が並ぶ紙を見せられて、説明されても。

何をどうリアクションして良いか分からなかった。

ただ、ダウン症だと思い込んでいたので、ダウン症じゃなかったと言う事にビックリするくらいだった。

待合室に戻り、トイレから戻った夫に18トリソミーである事を伝えると。

「えっ、何?1人で話聞いたの?もう終わったの?えっ18トリソミー ?ダウン症じゃなかったんだね。良かった」
 夫も、現状を意味わかってないのか、トイレに行った5分くらいの間にあっという間に結果を聞かされていた事に困惑していた。

 私達はお互い、すぐにスマホで18トリソミーと言うワードを検索し始めた。

 1番に、超短命という言葉が飛び込んできた。流産・死産になる確率が90%、半数は1ヶ月以内に死ぬ。1才になれるのは、その中の10%と書いてあるじゃないか。

(夫)超短命、だって

私も、同じサイト見てたから知ってるよって思いながら何も言葉に出来ずにいると夫は、声に出してサイトの内容を読み出したのだ。知ってるよ。私達以外に、誰もいなくなっていた待合室。看護師さんは、心配してこちらの様子をうかがっているようだったけど。ショックとか悲しいとか、そんなのは全然なくて、ただ全く受け入れられないのだ。

(私)どうする?どうして良いのか分かんない。

(夫)こんなの聞いたこと無いよ。超短命って

長寿の反対が、超短命。短命って言葉は聞いたことあったけど、超短命って始めて聞く言葉。

看護師してるけど、こんなの聞いたことなかった。
癌で、余命1か月。ALS、膠原病、白血病、色んな病気の人を見て周りは医療従事者だらけなので、病気の事はある程度、詳しいと思っていた

(私)超短命って、私だって聞いた事ないよ。
(夫)超って、短命だけじゃないんだね。
(私)…
その後も、ネット検索を続けていると、もうダウン症だったら、どうしようって言ってるレベルでないくらいの障害。

 ネット上は、恐ろしい情報のオンパレードだった。本当は衝撃的でショックなはずなのに、悲しいのに、涙も出ない。
知らないと言うだけで、人は動揺して恐怖を感じるのか。
長年、看護師をしてきたから、こういうシーン、何でも見てきた。
しかし今回は、患者側だ。
言葉の意味は、理解できるし、概要は分かる。
でも、それが自分の事なのに、受け入れないだけだった。

産んであげられないかもしれないと言う不安は、
増幅するばかりだった。



頸部リンパ管腫、言われた時から
どんな形で、この子に会うのか心配で不安でならなかったし
覚悟はしていた。

 生きててくれてありがとう、愛おしい、と言う思い、
産んであげられないかも・子供を受け入れられないと言う罪悪感、

矛盾した感情と恐怖が混ざり合っていた。

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