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産むんですか?産まないんですか?~夫婦の決断②


話し合いが混戦する

(夫)産まれて来てすぐ死ぬって覚悟はしておかないといけないと思う。

(私)KKさんも、産んだ人は産めて良かったって、
言ってたし、産んでも産まなくても、どっちにしたって
つらいんやったら産んでも良いかもしれんよ?そんなに、長く生きられなかったら、自分達で最後まで責任を持つ事が出来るから、何とか育てられそうじゃない?

(夫)KKさんがいってたように、産んだ人からすると産めて良かったとなるのはそりゃ分かるよ。でも、もし産まれて来て三年生きて、その後死んだってなったら、どうなる?長男も悲しいやろし、もう今と比べものにならないくらいの寂しさ半端じゃないよ。それに、耐えられる?

(私)私にも良く分からん。そうやね。やっぱり、皆に悲しい思いさせるよね。まだ、3才とかなのに、家族や兄弟が死ぬって思いをさせちゃうかもしれないんだよね。私には、どんなんなのか分からないわ。

私達の長男は、当時3歳半。この子に、兄弟が死ぬって体験をさせてしまう事、もし元気に生きてくれても、いつ死ぬか分からない病気と障害を背負った子の兄弟にさせてしまう事。
この点がもっとも大きく悩んだ所だった。

あと、私が懸念していた事は、
心臓の手術したり、人工呼吸器や身体中に管をつけて
延命治療して、苦しい治療だけを与えてしまうのではないかと言う点だった。
私は、看護師をしていて、本人の意志とは関係なく、人工呼吸器・積極的な延命治療が行われている場合を目の当たりにした事があって、喋れなくなった患者さんをみて、この人が望む医療とはと言う事について自分なりの思いがあった。

 心臓も悪くて、身体自体が弱くて長くは生きられないのに、無理に命をつなぎとめて生かす為に産むと言う事はしたくなかった。
生活の質を保てない人生って言うのはこの子にとってどうであるのか疑問に感じずにはいられなかった。

(夫)病気なんやから、しょうがないでしょ。産まれて、苦しいってなってるのに、何もしてあげないって、そっちの方が可哀想じゃない?

夫の思いも複雑で、結局、この件に関しても、答えは出なかった。

生きる価値のある人間

生産性のない人間は、生きる価値のない人間なんだろうか?
偉業を成し遂げた偉人や大金を生み出す人は、
他の人より、生きる価値のある人なのだろうか?
人に迷惑をかけたり、悪いことをする人は価値のない人間なのだろうか?
1年しか生きられなかったから、意味のない人生だった。
100年生きたから、意味のある人生だった。そんなはずはないと思う。

生産性がないとか、生きる価値がないって言う人もいるのかも知れない。
じゃあ、生きている意味のある人って誰ですかって話だ。
私は、自分が生きる意味があるから、生きているわけではない
生かされているから、生きている、それだけの事だと思う

その後も、私達は、色んな角度から、幸せ、生きるについて語りまくった。

夫婦の関係

赤ちゃんの病気が分かってから、ほとんど崩壊していた夫婦の関係が激変した。何度も、病院に通い、とても辛い思いや話しばっかりだったけど、生命について幸せについて、沢山の話をして、思いを共有した。今まで知らなかった面が、1面も2面もあった。

 この子は、私達に幸せを知らせに来てくれたのかも知れないと思わずにはいられなかった。
私は、夫に愛されていないんじゃないか、大切に思ってもらってないんじゃないかとも思っていた。

自分だけが、1人で頑張っていると思って
離婚する事さえも考えていた人だったのに、
優しくて、とても真っ直ぐ過ぎる人だと知った。


最終結論は、家族にとって前向きな選択

生命倫理の話がでたり、幸せについて考えたり、医療行為の話になったり
仕事の話・教育の話だったり、もう行き場がなくなるほど、色んな話をして思いを巡らせた。

何を軸に考えるかで、方向性は変わってくる。お腹の赤ちゃんに、とって良い選択か?長男なのか、私なのか、

私達は、家族にとって前向きな選択は、何かについて考えてみようと話し合う事にした。

当時、夫は45才、私37才
帝王切開になると、出産して1年空けなければならない。
出産時が、38才、もし次に妊娠する事になると39才になり、もう一人の出産は40才以降。経済的にも余裕がある方ではなかった。

やっぱり、一番考えたのは長男の事だった。

産まれても死んでしまうかも知れない、
重い病気や障害のある子供を育てる事で、長男に負担をかけたくない。

私達が考えた、家族にとって前向きな選択とは
残酷な選択だけど、今回は諦めるという選択だった。

行き場のない思いがあふれ出る

二人で、答えをだしてから、どうしようもない雰囲気と罪悪感と悲しみに溢れかえった。
仕方がないので、公園でも行って気分転換をしよとなり、長男を連れ、公園へと向かった。

寒かったけど、良く晴れて、日曜の公園には、幸せそうな香りがしていた。

私は、どうしても、何ごとも無かったかの様には振る舞えず、泣き崩れそうだった。悲しくて、悲しくて、自分でも驚くくらいどうしようもない感情だった。心配をかけると思って、隠れて泣きながら公園遊びに参加した。

寒い雨の日、赤ちゃんが病気かも知れないと聞かされから、
毎日、元気に生きてますように
シンドイ思いをせずに、育ってくれますように祈っていた
妊婦健診では、心拍を聞いただけで
ドクンドクンって、小さな音を聞くだけで
涙を流すほど嬉しかった

まして、重い病気を抱えてると知ったのに
それでも、頑張っている我が子がただ愛おしいと感じていた
色んな事を思い出ながら涙が頬をつたう。

滑り台の横で、手を振りながら隠れて涙をぬぐった。

(夫)何回も話し合って決めた事だよね

かくれんぼの途中、木の陰に隠れながら涙が止らない。

(夫)そんな、泣かないでよ

私も、分かっていたし決めた事だから仕方ないと思っていた。
家に帰って、ご飯を作ろうと思ったけど、また涙が溢れてきた。
自分では、どうしようもない感情だった。

泣いてばかりで、何も出来ない私を見た夫が

(夫)産もうよ。産みたいんでしょ。産もう。大丈夫だって

私が、どうしても言えなかった言葉だった。普段は、馬鹿みたいに主張する女なのに、最後まで口に出すことは出来なかった言葉。

嬉しかったのに、なぜか言葉にならなくて、涙ばかりが流れた。

(私)うん。産みたかった。どうなっても、顔見てお礼を言いたかったから。

ホントに、すったもんだ不格好で、
シュッと潔く・格好良く決めるとは程遠い形でしたが
私達なりの、答えを出す事ができたのでした。


長文なのに読んで下さり、ありがとうございます。

一応、時系列で記事をつなげて書いています。

もし良ければ、最初から読んで頂けると分かりやすいかも知れません。


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