レ・ミゼラブル


その壮大な劇場では

広大な観客席にこれでもかと言わんばかりの眼一杯の観客を詰め込んで

更には立ち見もでるほどの

大盛況の大入り満員のギュウギュウ詰めで

これまでにないほどの盛大な劇が繰り広げられていた


直視できないほどのまばゆいばかりの光と

贅の限りを尽くした装飾

そして大掛かりで精密な仕掛けの数々


今、劇はクライマックスを迎え

目を覆いたくなるほどの惨劇と嘲笑と堕落が

絡みつき癒着し増殖しメルトダウンしながら

原子レベルで加速していた


あるものは気分が悪くなり退出し

失神して運ばれていくものも続出する中


平然と劇は続き

観客は固唾をのんであくびしながらその時を待っていた

誰が犯人なんだろう

誰が裁きを受けるんだろう

このとんでもない惨劇の罰を咎めを受けるべきは誰なんだろう

そんな残された観客の思いや願いを知ってか知らずか

このうんざりするような惨劇がのんびりと平然と続いている


何かに耐えきれなくなったのか

どこからか奇声が上がる

猛獣の咆哮のような

それに続き

屠殺される家畜の鳴き声、読経、子供の悲鳴、凌辱されている女の悲鳴

病気やケガで苦しんでいる者たちのうめき声

それら全てを嘲笑うかのような下種なものどもの笑い声

たくさんの溢れんばかりの

それらが地の底から湧き上がるようにして

あっという間に館内を覆いつくす


一瞬の静寂があり

ライトは消され

劇はいつの間にか中断され

緞帳も下ろされている


観客が呆然と見つめる中

次の瞬間

まばゆいばかりのスポットライトが観客席をくまなく照らし出す


館内放送が流れる


第一幕は終わりです

これからすぐに第二幕が始まります

そのまま席でお待ちください

みなさんはそれにふさわしい方々です

どうか存分にお楽しみください


緞帳が開き

舞台上には

角を生やした鬼や、髪の毛が蛇の妖怪、そういった類の

想像の世界の沢山の魑魅魍魎がうごめいていた

再開を告げるブザーが高らかに鳴り響き


スポットライトは観客席を照らしたまま

第二幕は始まった

それまでの劇が陳腐で滑稽に見えるほどの

想像以上の惨劇が延々と繰り広げられ続けた


どうやら第二幕はエンドレスリピートで行われるらしい

合掌








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