【短編小説】花売り少女は夢を見る
「花はみんなをシアワセにしてくれるもの」
荒廃した世界で花を売る少女の話。
曇天が裂け、久しぶりにぬけるような青空が広がる日のことだった。
しかし歌い出したくなるような空の下は無音であった。ときおり風が看板を揺らす乾いた音だけが虚しく鳴る。人々は生気のない顔で地面を見つめていた。彼らの瞳は何も映していない。街は死にかけの獣のように無気力に横たわっているだけであった。
「花はいりませんか」
そんなモノクロの世界を甲高い声が破った。くすんだブロンドをはためかせ、白いワ