【小説】握り潰された花の名は(1)
神が人の心をわかるわけもなし。
生き神の器として選ばれた少女とその世話役に選ばれた若い僧の話。3~4話で終わる予定です。
雑踏の中、どけどけ、道を譲れ、と怒鳴る男どもの声が聞こえる。人波をかき分けて顔を出せば、豪奢な輿が男たちに担がれて運ばれていくところだった。屋根は傷一つない金。柱は最高級の木材を用い、美しい木目はもはや芸術品だった。輿には絹の薄布がかけられ、中をうかがい知ることはできない。
ふいに歓声が上がる。一陣の風が吹き、輿にかけられた薄布がめくれて中の人物の顔