見出し画像

【アフターコロナ】ソーシャルディスタンスではなく“これまで以上にソーシャルコネクテッドな世界”へ進むだろう。

(2020.04.17時点の記事です)
コロナ影響で在宅勤務者が増えている。
毎日会社に出社するのが普通だった時は、WEBでのオンライン会議だとどうしても「対面して会話するのに比べるとニュアンスが伝わりにくいな」とか、「聞き取りにくくてストレスになるから会ったほうが早いな」という気持ちがあったけれど、“強制的に会えない状態”となった今、「オンラインで会議をするしかない」となると、もちろん不便な面も残るものの、時間が経つにつれ、利用回数・利用経験が増えるにつれ、「あれ、オンラインでも意外とやれるな」という手ごたえも積み重なってきたのではないだろうか。実際に私はそうだし、私の周りの人たちでも「もう会社に出勤する必要ってないのかもね」と笑って話している人もいる。
これがいわゆる『アフターコロナ』だ。

1、アフターコロナ前夜の、2000年代~2010年代に起こった「価値観の変容」

アフターコロナではなく『ウィズコロナ』と呼ぶ流れもあるが、当記事では“コロナ以前とコロナ以後”における「人々の価値観の変容」の部分に注目したいので、あえて『アフターコロナ』と呼ぶほうがふさわしいと判断した。
これは、「鉄砲の以前/以後」での“戦い方の変容”や、「蒸気機関の以前/以後」もしくは「インターネットの以前/以後」による“産業の変容”とか、それらと同レベルのパラダイムシフトインパクトがアフターコロナには起こるかもしれないと思えたからだ。

“どう価値観がシフト”しようとしているのか。

まず、直近の10年間にあたる“2010年代”を振り返ってみると、この10年は、どちらかというと「会う事の価値(オフラインの価値)を再確認」する時代だった、と分析できる。

そのもうひとつ前の時代“2000年代”には、インターネットが広く普及し、“たくさんの生活基盤やビジネス基盤”がリアルからネット、つまりオフラインからオンラインへと移り変わることが推進された時代であった。それが“便利”の最先端だったからだ。
しかし“2010年代”にはいると、一部で揺り戻しも起こって、どんなにWEBが便利になろうとも実際の生活をしている世界はオフラインにあり、その“オフライン”と、進化を遂げてきた“オンライン”とを「いかにシームレスにつなげるか(O2O,OMO)」ということが挑戦・実践されてきた10年間だったと見ることができる。Amazonしかり、アリババしかり、Googleマップしかり。

また、WEBが栄えたからこそ、反面的に、“リアルで会うという貴重性”も再定義がされ、たとえば音楽業界ではフェスやライブといった「生の音をたくさんの人々が一緒になって楽しむ」ことだったり、エンタメだと「会えるアイドル・会話できるアイドル」が流行したり、旅行業界では「ひとりキャンプ」や「山ガール」や「グランピング」といった、“その場にいかないと体験できない自然とのふれあい”等が再評価されたりもした。

画像1

(音楽フェス市場規模と動員数の推移:ぴあ総研)


この変化は“ConvenienceからExperienceへ(単純な便利さから体験型へ)”といった表現もなされた。
そしてそれらのExperienceはまた、Instagramによって“映えるスポット”として拡散され“新たな人気エリア”を産みだし、SNSにはより細分化されたファンコミュニティやハッシュタグがたくさん立ち上がったりもした。いわゆる“体験の連鎖”だ。

しかし“2020年代”に入った直後、コロナウイルスの世界的蔓延がはじまってしまい、2010年代に培ってきた“会う事の価値”は大きな転換点にぶちあたったのである。

「この20年間ほどの価値観の変遷」を、“非接触性”というコロナ特有の課題を補助線として俯瞰した時には、こういった分析視点で語ることができる。


2、“大衆が”気づいてしまった「遠隔からでも登壇者や先生と話せる“便利さ”」

多くのデスクワーカーが在宅勤務でオンラインリモートワークを開始している。
不便なことももちろんあるが、便利なほうに目をむけると、こんなにスムーズに自宅に居ながらも“リアルタイムに遠隔にいる人の言葉が聞ける”なら、少なくとも「聴講するだけの会議であれば、特にわざわざ電車に乗ってその会議室にまで出向く必要はないな」と、経験値を積んだ人々なら思っただろう。
そう、「実は、行かなくてもよかった」と私たちは気づいたのだ。

たとえば、研修やセミナーの多くは、オンラインに切り替わっていくだろう。
コロナ以前にすでに「ウェビナー」という言葉はつくられていた。
「ウェブ+セミナー」で「ウェビナー」だ。

一部の先進的な人々はとっくにその便利さに気づいていたが、“大衆が”その便利さに気づいたのが「アフターコロナ」の特徴だろう。
「ウェビナー」で充分に集客さえできれば、わざわざ重い費用を使って「イベント会場」を準備する必要はない。

これは、コロナをキッカケに、WEBオンラインミーティングツールという“インフラ”が“たくさんの人々にいきわたった”ことが大きい。
マーケティング用語でいう「手にとってもらうまでの“最初の障壁”」を乗り越えたのがアフターコロナの本質だ。こちら側だけがZOOMというツールを知っていても、あちら側がZOOMを聞いたことも触ったこともなければ、浸透は進まないのである。オンラインミーティングは、この深い“キャズム”(谷)を越えたのだ。

この変化を受けて、たとえば「セミナー系を主業とする各企業」はオンライン化は加速させている。

例年、国際フォーラムで15,000名規模を動員する「アドテック東京」は、オンラインセミナー『ad:chan』を開始。

「グロービス」では、4月14日に緊急特別セミナー『コロナショック~今リーダーは何をすべきか?~』をオンライン開催。グロービスの卒業生約1,000人が参加したという。

当記事の掲載先でもある「note」が主催するイベントも全面オンライン化されているが、それだけにとどまらずnoteでは『イベントのオンライン中継を実施したいnoteのクリエイターを支援する「オンラインイベントおうえん制度」をはじめます』という取り組みにも着手している。


また、「教育産業」においては、公立学校よりも「学習塾」が迷いながらも先手を打てている。
そもそも“オンライン動画学習”の分野ではリクルート社のスタディサプリが早くから先行していた。それに対して“対面による質の高い授業”を差別化要素にしてきた大手学習塾が、アフターコロナ世代にどう対応するのかも大きな岐路になりそうだ。

早稲田アカデミーは8日から大学受験向けに、13日から中高受験向けにオンライン上での「双方向Web授業」を始める。生徒と講師が画面上で互いの顔を見ながら、通常のように対話する授業だ。3月の一斉休校の際、教室を閉めて授業動画を配信したが、学力維持には双方向の授業が欠かせないと判断。iPad約2千台を確保し、3月初めから準備を進めてきたという。


3、各業界で“会わずに、会う”取り組みが活発に

とはいえ、どんな業界業種でも簡単にオンラインに切り替えられるわけではない。
今回のコロナ影響で特に大打撃を受けている産業は、“人の移動が事業の根っこ”に関わる産業だ。特に旅行観光産業や航空鉄道インフラ産業。
それから“お店やテナント”を持っているタイプの外食産業やアパレル産業。

外食産業では、これまでの「人がお店に食べにきてくれる」という価値観を前提としたビジネスモデルから、「人がいる場所に料理を届ける」という価値観にビジネスの舵を切っている。
テイクアウト、デリバリー、出張料理人、等々。

アフターコロナ時代になっても「人々がレストランで食事を楽しむ」という欲望を失うことは決してないとは思うが、それでも「自宅でいろんな食事の楽しみ方もある」と“気づいた事”も、アフターコロナの価値観となるだろう。
実際に私も「あの有名とんかつ店のヒレかつ定食を、自宅で手ごろな赤ワインと合わせて楽しむ」というのは、最近の夜の楽しみのひとつに加わったし。

アパレル産業では、すでに2010年代からオンライン化の波は大きく、ECのゾゾタウンが興隆したり、メルカリによって二次流通の増加が起こったりもした。
店頭に人が一切来なくなっても、オンラインショップがさらに便利に発達さえすれば服は売ることはできるが、それではこれまでの“店頭の価値”とはなんだったのか。

各アパレルショップは試行錯誤しながら「オンライン接客」という形にも挑戦をはじめている。
ユーザーは店員のアドバイスをオンラインを通じて受けながら、服を選べる。これまでは店頭でしかやれなかったOne to Oneのきめ細かなRecommend接客をオンラインにも取り入れようという取り組みだ。いくつか先行事例を引用しよう。

最も人気のコーディネート投稿は、販売スタッフが撮影したコーディネート画像に商品情報を紐づけ、ブランドの自社ECサイトやスタッフ自身のSNSに投稿できる機能をもつ。
顧客は店頭に足を運ぶことなくコーディネート提案や商品の着用感や着心地の説明を受けることができ、販売スタッフは自身の勤務する店舗に関係なく、全国の顧客に対しコーディネート投稿を通じてオンライン上で接客を行うことが可能だ。
「Hero®︎」はテキストメッセージ、チャット、ビデオを使用してリアル店舗とオンラインショッピング中の購入客を繋ぐ対話アプリだ。(中略)
米国ではスリー、リーバイス、ナイキなど各社のオムニチャネル戦略として活用されており、購買率が14倍高くなるという実績が出ている。


4、まとめ:これまで以上に“ソーシャルコネクテッドな世界”へ

これらいくつかの業界の最新事例を並べて見ていくと、「アフターコロナ時代」とは、決して“人と人とのつながりがなくても良い”という世界ではないのがわかる。ディスタンスと言われているのはあくまで“フィジカル”の話しであって、あらゆるテクノロジーを駆使しながら、これまでよりも“人と人とのつながりを増やそう”と取り組んでいるようにも見えるのである。

「アフターコロナのビジネスモデル」とは、店舗は立地にしばられない。全国そして世界中からリアルタイムに参加ができ、ユーザーポテンシャルはこれまで以上に広がる。
人気講師の塾もそうだし、人気アパレル店員、人気料理人も、いろんな職業でOne to Oneな講座や接客を気軽に開始するだろう。ユーザーはそれを自宅や出先など自由な場所で享受する。
よりパーソナルで、よりリアルタイムで、より互いの顔が見えて、コネクテッドなサービスたち。

つまり、それは決して「ソーシャル・ディスタンス」ではない。
アフターコロナとは、これまで以上に「ソーシャル・コネクテッド」な世界を目指そうとするだろう。

(おわり)

コツコツ書き続けるので、サポートいただけたらがんばれます。