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倒産前夜の会社をスポンサーとして救済しようと考えた時

1.スポンサーに手を上げる期待と不安

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今回は『倒産前夜の会社をスポンサーとして救済しようと考えた時』というお話しです。コロナ禍で知人友人の経営者の会社を救済したいと考える経営者の方は多いと思います。そのような経営者の方に届くと嬉しいです。

上場企業のクライアントA社より倒産前夜であるX社のスポンサーになりたいので、スポンサーになる際の注意点、段取り、価格目線についてサポートしてほしいとのご依頼がありました。

弊社としてまずはスポンサーとなる際のスキームについて類型をご説明しました。私的整理による事業譲渡、民事再生法活用スキーム、プレパッケージ型破産スキーム、破産後譲渡スキーム等について、A社にとってのメリットデメリットを提示しました。

A社は上場企業として、リスクのない仕上がりにしたいとのご要望でしたので、法的安定性が高く、レピュテーションリスクを取らずに済む、との観点からX社が民事再生法申請した上で、スポンサー企業となることをA社は望まれました。

X社の事業価値は急速に劣化しており、急落する事業価値を大きく見込んで、監督委員を納得させるプレパッケージ型とするまでの事業譲渡対価は払えないとの判断もA社にしていただきました。

結果として、民事再生申請後、スポンサー公募に際して1つの候補先として名乗りを上げ、入札での落札を目指す方針となったのです。

2.競争入札 いくらと書くのが正解なのか?二つの価格

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結果として、A社も含め合計3社の候補先が手を上げ、競争入札を致しました。鳥倉はA社に対して、二つの根拠を基に落札目線を高めと低めでご提案しました。

高めは『人材採用コスト』見合です。X社の人材を人数分、雇用する際に係る採用コストを概算して示しました。低めは『事業価値目線』です。急速に劣化するX社の損益見通しを事業計画としたX社の事業価値です。

結果としてA社は低めの「X社の事業価値」見合の金額を記入して入札する方針を定められました。

A社は上場会社ですので、取得後、当該事業から上がる売上利益が計画通りとならなかった場合は、支払ったのれん代が減損会計の対象になります。低めの入札は妥当な判断であったと思います。

スポンサー企業として前のめりでありながら、冷静に検証し、材料を調えた上で決断されたA社は立派であったと思います。

結果は、高めの『人材採用コスト』見合の金額にて入札した別の会社となり、A社は正式なスポンサーとなれず、X社の事業を取得できませんでした。

ご相談があって民事再生申請まで2ヶ月と少しでした。民事再生申請後、スポンサー決定までは約1ヶ月でありかなりのスピード案件でした。落札できなかったものの、A社よりは不慣れな検討を慎重に進めることができたと謝辞を頂きました。

3.X社はなぜ身売りする憂き目にあったのか

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X社との想い出も少し書き残す事とします。A社から依頼を受けて以後、会社への訪問や社長との面談、経理部長へのヒアリングをしました。結果として、押し寄せる債権者への対応策などもアドバイスする事となりました。そうしなければ、X社は事前の準備期間も取れず破綻する危機に直面していたからです。

一代で新しい市場ニーズに気づきニッチながらも事業を成長させた創業社長のY社長。自社直営からFC事業もスタートさせ、加盟店よりの加盟金が入るようになりました。

自社の実力としてのフロー収入と、単発での加盟金収入を区別せずに業容を拡大し、人件費増、地代家賃増、役員報酬増とコスト管理が乱雑になりました。

加えて利益を生まない、本社土地建物を購入し債務を拡大。更には不動産価格が下落し本社土地建物に含み損を抱える事となりました。

FC事業の加盟先へは「売上保証」をうたったため、加盟店が増える度に自社案件を加盟店に振り分けることとなり、外注コストとしての原価が上がるコスト増、加盟店のモラルハザード要因にもなりました。

Y社長の生活も乱れ、病に伏し経営危機の際に入院する状況に。

致命的となったのは、上記の状況を脱する為、再生支援協議会支援を受けるべく2次対応に進んだことです。X社が窮地に陥っている事が金融機関の知るところとなり、従来FC加盟店候補企業が創業支援融資を受けて、開業し加盟料を支払っていた単発の大きな収入が入らなくなりました。

フロー収入は原価高で不採算、単発の加盟金収入も閉ざされ資金繰りに窮したX社は給料、社会保険の未払が始まりました。このような経緯で資金繰りは破綻状態にあり、Y社長はA社に救済を求める事となります。その帰結として、X社は民事再生法を申請します。

“身から出たサビ”かもしれませんが、20年の業歴のあるX社のY社長はあっという間に追い込まれました。その時、Y社長は「スポンサー候補となってくださったA社には感謝していますが、一体全体、私やX社はどうなるのでしょうか」と鳥倉に質問されました。

渦中の最中にある経営者が自分で状況をコントロールする力を失うことは、意外に思われるかもしれませんがよくある事です。既に選択肢を自分で選べず、ステークホルダーの意向次第に身を委ねるしかなくなることがあります。

鳥倉として、今後X社やY社長の行く末、スポンサーによりY社長の扱いが変わる可能性、民事再生手続きにおいて計画外譲渡となった場合、Y社長の居場所はない可能性が高い事を説明しました。そして、Y社長は連帯保証債務により破産する可能性が高い事をご説明しました。Y社長は「みんなは自分を助けるために動いてくれているわけじゃなかったのか」と仰られました。

乱脈経営の果てに多くの方を巻き込んで破綻しつつあるY社長を皆さんはどう思われるでしょうか。鳥倉は物事の善悪も大事ですが関係する人が少しでも幸せになる結論を模索するのが、事業再生という仕事だと思っています。Y社長に巻き込まれた多くの方に、最終的な落ち着き処をご提供するのも立派な仕事だと思っています。


4.全てを失った後に芽吹く後継者

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Y社長には成人した息子さんがおり、X社で職人として働いていました。
Y社長は息子を特別扱いしておらず、一職人として額に汗していました。
Y社長より「息子に今後どうなるかをアドバイスして欲しい」と言われご面談しました。

息子さんに上述の事態をご説明すると、淡々と受け止め意外感はありませんでした。

「この仕事は意外とニーズがあって、自分を指名してくれている顧客もいる」と、スポンサーと営業地域のかぶらない所で独立創業したいとの思いを話してくれました。

何度かお会いし創業支援融資を受けるための事業計画書の立案をお手伝いし、息子さんが無事創業支援融資が得られたことを伺い、鳥倉としてのこの一連の案件がようやく終わりました。

今回のメインストーリーは、民事再生法申請し、計画外譲渡により事業を入札にて取得するというお話しです。再生型M&Aと言えるお話しです。

事業再生はある種、混乱した現場に入っていく仕事である事から、ダメージコントロールに過ぎず、関連する当事者は痛みを分け合う形になることが多いです。このような極端な状況下では、再生策による有利不利は人により異なるのが難しい所です。

一番の被害者は貸し倒れた金融機関かもしれませんが、混乱した事態が一定の終止符を打つことは金融機関のメリットにもなり得ます。

スポンサー候補の会社も、危険なリスクのある会社をそのまま引き受ける事を回避すると共に、同様の案件への対応ができる経験値を積みました。

経営が破綻した社長も病気の中で、コントロールを失った事業を納めることができ気持ちは楽になったと思います。息子の成長と創業という新たな芽吹きを見ることができました。

鳥倉の目指す事業再生の一つの形が見えた思い出深い案件です。たくさんの関与された専門家の中、鳥倉は黒子的に全体の方向性を形作るご支援を致しました。

M&Aに関心が集まり、破綻企業のスポンサーになってみたいと思う経営者も増えています。また、M&Aの最中で、ご自身の未来が見えない経営者の方へセカンドオピニオンもご提供致します。聞き慣れない用語も多いかと思いますのでご面談の際は、丁寧にご説明致します。

ぜひ、鳥倉再生事務所へご相談ください。取り残される人間が少しでも減るような事業再生への道をご提案致します。

無料面談のご予約はこちらから https://torikura.com/contact/ あなたの事業再生が優しくできるようご支援します。 難問解決を得意としています。あなたの仕事にきっと役に立ちます。 フォロー、スキでの応援お願いします。