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事業再生の依頼が会社からやってくると、現状を把握するために調査に入ります。調査の結果、経営改善計画書を作成し金融機関へ提出したり、社内の改善活動に利用し、事業再生は進んでいきます。

場合により、デューデリジェンスと言われる事業性を評価するための調査を詳細に行うためには、必要な書類や必要な手順があります。ただし、物事を精緻に捉える木を見て森を見ずという事がよく起こります。虫眼鏡で見る前に、会社や社長に事業再生へ挑む心構えを作っていただく事には価値があります。

事業再生は数値計画が大事です。多くの人を巻き込み、納得していただくのに数字は力を持っています。ただ、社長自身が資料を見ながら出ないと答えられない質問というのは、心構えを作って、決意を固めていただく際には適切でない場合があります。

今回は、心構えを作っていただく上できっかけとなる、質問に絞ってお伝えして参ります。計数や数値の質問は取り上げません。

事業再生へ挑む社長への質問1

「もし、何か一つ叶うとしたら何を叶えたいですか?」

事業再生フェイズでは資金繰りが困難になっています。資金が足りず明日をも知れぬ身の社長は、時に溺れる者は藁をもつかむという状況にあります。その為、自分の現状をよく理解できていなかったり、何がしたいか、何がわからないか整理できていないことが多いです。この質問をして、曖昧な答えが社長から返ってきたら、曖昧な答えを尊重しながらその意味するところ、その言葉の背景を深掘りしていきます。死中に活を求めるときに良い質問です。事業再生において選択肢は限られ、自由はきかない事が多いですが何か1つだけなら叶えられる事があります。その優先順位を間違えないよう社長自身に確認をします。

事業再生に挑む社長への質問2

「あなたの会社の何を変えたいですか?」

変えることが前提であるとしたら何に着手するのか?変えたいと思っているけど、変え方がわからない変えると今よりひどくなるかもしれないと恐れていることは何なのかを伺います。事業再生の渦中にある社長は、渦の中心にいるが故に身動きが取れなくなっているだけで改めたいと思っています。そこを聞くことができれば、後は実践の問題です。やってやれないことはありません。

事業再生に挑む社長への質問3

「何か前向きに攻めたい仕事はありますか?」

事業再生では、お金がない。防戦一方をしいられる局面が長いです。社長は守りより、攻めに強い人が多い。事業再生に飽きてしまう。もちろんビジネスには競合企業があり、こちらの事情を斟酌してくれないので、事業再生中にも攻め手が必要。事業再生でどのように攻めを意識するのかという質問。

事業再生へ挑む社長への質問4

「何がきっかけで現在の社長が形作られていますか?」

この質問をすると社長の若い時の苦労経営失敗の経緯病気や学歴好きな本、親の教育など様々な答えが返ってきます。すべてを乗り越えて今の自分が形成された、小さな山も大きな山も越えてきて現在の自分があるのだと、肯定的に自分の歴史を捉え治していただきます。自己肯定感、自尊心を回復して頂来ます。会社のリソースに着目しても、そこに市場性が失われている場合があります。その場合でも事業再生をあきらめない場合は、社長の個人のリソースに着目する事が大事です。

事業再生へ挑む社長への質問5

「会社の歴史を教えていただけますか?」

社歴の長い会社でも、短い会社でもこの質問の意義は変わりありません。経営には成功も失敗もあります。第三者が失敗と見るのは簡単で結果論です。その失敗に至った、その選択肢を選ばざる負えなかった、そうせざるを得ない理由があったはずです。そこの原因を追求し修正を図るのに良い質問です。

事業再生へ挑む社長への質問6

「お子さんはいらっしゃいますか?年齢はおいくつですか?」

社長が理屈を超えて非合理な結論であっても、その意思決定を覆さないときは、自分以外の誰かを守っていることがあります。それはお子さんをはじめとする家族であることが多い。第三者連帯保証人を守る為の場合もあります。お子さんの年齢によっては学費の問題があります。会社を事業再生することで家族が幸せになるのか?早期に断念して廃業して転身するのか?仕事は変えられますが、家族は変えられません。家族をどうしたいのかにより、会社の在り方は変わる可能性があります。再生できなくても延命することでお子さんの学費を捻出することもあります。

事業再生へ挑む社長への質問7

「家族にこの会社を継ぎたいと思いますか?」

創業社長は経営の苦しさを知っていて見切りも早い。一方で2代目3代目は引き継いだ会社であるが故に、事業の損得以前に継続が目標になっていることがあります。2代目3代目が楽なわけではありません。守成の辛さがあります。自分が継いだ時と現在の環境の違い子どもの志向の違いを踏まえて、継いだ立場であるが故にご自身だったら次にバトンタッチしたいのか、できるのかを決断頂く質問です。事業の継続可能性を考え、その為に手を打っていくのは社長の大事な仕事です。

事業再生へ挑む社長への質問8

「会社の中で一番活躍されているのはどなたですか?」

事実と認識が一致していても一致していなくても問題ありません。まずは社長に聞いてみましょう。社長に教えていただいた方へのインタビューの許可もいただきます。社長がどういう人物を評価し、どんな行動を肯定しているかの参考になります。社長がどういう人材を評価し肯定しているかは、組織風土に大きな影響を与えます。組織風土が形成される原因を体感するきっかけとなる質問です。

事業再生へ挑む社長への質問9

「後、何年この仕事をしていたいですか?」

経営者である社長の自分と、会社は不可分だと思う社長は多い。法人に寿命はないが人間には寿命がある。寿命という限界がある社長の人生というタイムラインにおいて、会社が意味するところを腹落ちしていただく生きている限り会社の社長で在り続けたいというのは、そこに依存心がある。自分と家族、人生と生活の中で会社を再定義する。

事業再生へ挑む社長への質問10

「やり直したいことがあるとすれば、それは何ですか?」

人はいつでもやり直せます。過去のしがらみに絡みつかれて、過去に縛られて、決断ができなくなってしまいます。日々是好日・人間万事塞翁が馬。今日が一番やりなおすのに良い日です。これまでの質問によって社長は深く自分のリソース、会社のリソース、家族のリソースにつながっています。失敗も成功も経験し、それを乗り越えて今の命があるのですから、今日の決断は今まで一番良い決断にきっとなるはずです。改めて最後の質問として社長に聞いてみて下さい。

10の質問としてお届けしましたが、いかがでしたでしょうか。経営不振の社長、明日をも知れぬ身の社長と何を話したら良いかわからないという人は多いです。専門家として計数の話しに終始するのは、仕方のない面もありますが大事な事は意思決定していただくことです。大変な人に寄り添うのに役立つ質問です。


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