#5 コアトレーニングについて Vol.2:流行の起源と効果
久しぶりの投稿になります。
短いスパンで定期的に投稿していこうと思いましたが、一ヶ月以上空いてしまいました。
さて前回の記事では、コアの定義と構成について書きました。
今回は、なぜコアに大きな注目が集まったのか?
多くのスポーツ選手やフィットネス愛好者が行うようになったコアトレーニングの流行した起源について書きたいと思います。
コアトレーニングの流行の起源
多くの競技活動において、大きな力で速く動き、たくさんの運動エネルギーを生み出すのは、四肢の関節運動でありコアではありません。
では、なぜコアに大きな注目が集まったのか?
それは、理学療法の腰痛リハビリからきているとされていて、身体の四肢をスムーズに動かすには「土台となる体幹の固定」が必要になるからです。
四肢に運動課題を与えると、四肢の動きに先行して体幹筋(腹横筋、多裂筋、腹直筋)に筋活動が起こり安定させると報告されています(1,4)。
このことから四肢を動かす動作では、この「土台部分」の体幹の剛性・安定が競技動作や日常動作において重要だと注目されるようになったようです。
この流れから某トレーニング組織が有名スポーツ選手に実施するようになり、プランク(ブリッジエクササイズ)などの体幹の固定を強調したトレーニングが一気に広まりました。
また、体幹筋群の中でも深部に位置する腹横筋が四肢運動時よりも先行して筋活動を開始(フィードフォワード作用)することから、腹横筋が注目されるようになります。
腹横筋は、コルセットみたいにお腹を取り囲むように覆っていて内圧を高めて腰椎を安定させる役割を担います。
その腹横筋が四肢を動かす前に活動するのであれば、腹横筋動員促通の教育効果を狙ってドローインという腹横筋を鍛えるトレーニングが行われるようになりました。
このことからコアに対する注目が集まるようになったわけです。
ブリッジエクササイズ
プランクのような体幹を固定するブリッジエクササイズは、四肢の土台としての固定の重要性という考えから行われるようになっています。
このエクササイズは、うつ伏せや仰向けの状態で体幹の筋群を協調させながら刺激していくトレーニングのことで、イメージとして下記の写真のようなものです(※フロントプランク)。
バリエーションとして上記の写真のような静止の状態を維持するタイプから体幹を固定させながら四肢を動かすタイプなどのバリエーションがあります。
日本ではこのような四肢の動きや外力に対して静的安定性を保つエクササイズを「コアスタビライゼーション」と呼ばれていると思います。
・ブリッジエクササイズでコアの剛性と安定性は高まるのか?
そもそもブリッジエクササイズをしただけで、コアの剛性と安定性を獲得できるかは疑問があります。
例えば、フロントプランクでは重力により体幹伸展の力が加わり体幹屈曲筋でその姿勢を支えているので、腹筋群に筋活動が高まるが背筋群にはあまり筋活動は高まらなくなります。
これは、「1つの方向から負荷を受けて姿勢を保っている」ということは、体幹筋群の共収縮の状態ではありません。
したがって、競技動作における体幹の剛性と安定性の獲得に貢献しているとは考えにくいと思います。
ただ、ブリッジエクササイズが体幹の剛性と安定性の獲得に貢献している可能性が低いかもしれませんが、実際に競技パフォーマンスにプラスの結果を及ぼすという報告はあります(2,3)。
そのようなプラスの報告は、多方向のプランクによる腹筋・背筋群の筋活動の促通が、競技パフォーマンスでの体幹筋群の活動の活性につながったのかもしれません。
また、プランクの実施が体幹筋群の活動促通や動作に対する「意識づけ」を誘発し、それが動きに影響した可能性もあります。プランクを行うことによって、動作が改善したり、体幹の軸が安定して動きやすいと感じるのであれば、それも一つの効果と言えるのではないでしょうか。
ドローイン
ドローインは、腹横筋を選択的に活動させるトレーニングで、お腹を大きく凹ませたり膨らませたりしながら鍛えていきます。
四肢運動時に腹横筋は主動筋よりも早く活動するフィードフォワード作用であります。腹横筋は様々な動作において先行して活動するので,四肢への力の伝達や円滑な運動制御をしています。
効果として、立位姿勢における筋活動の低い腰痛患者にドローインを行うと、立位時による腹横筋の筋活動が高まることが報告されています(4)。
なので、腰痛患者においては、腹横筋の活動により腹圧を上げるトレーニングとして有効となる可能性があります。
そのような背景があり、競技動作でも腹圧を大きく上がるわけだから「腹横筋を高めるトレーニングが有効ではないのか」とスポーツ選手に実践されるようになりドローインが広まっていきました。
ただ、腹横筋の活動促通の目的が腹圧を高めるためだとするなら、競技動作自体が腹圧を上げることなっているわけなので、健康的な競技選手においてドローインをわざわざ行う必要性は低いかもしれません。
となると、ドローインはあくまでも腰痛患者に対してのアプローチに有効となるので、健康的な競技選手にはドローインを処方する時間があるのなら他のトレーニングをアプローチする方が効率的だと思います。
まとめ
今回は、コアトレーニングの起源について書きました。
獲得したいと思っているトレーニングの効果と実際の効果が違うときはよくあります。そのトレーニングの本質を理解していないと間違ったまま実施するはめになりますね。
特に、「有名スポーツ選手が実施しているから」と言ってそのままトレーニングの真似をしても、トレーニングの目的や背景を知らないと効果は見込めません。
なので、トレーニングの本質を知ることは必要ですよね。
参考文献
1. Hodges PW, Richardson CA. Contraction of the abdominal muscles associated with movement of the lower limb. Physical Therapy. 77: 132-144, 1997
2. Imai A, Kaneoka K, et al.: Immediate effects of different trunk exercise programs on jump performance. Int J Sports Phys Ther. 2016; 11: 197–201.
3. Butcher SJ, Craven BR, et al.: The effect of trunk stability training on vertical takeoff velocity. J Orthop Sports Phys Ther. 2007; 37: 223–231.
4. Tsao H, Hodges PW. Persistence of improvements in postural strategies following motor control training in people with recurrent low back pain. J Electromyogr Kinesiol. 2007; 18: 559-567.
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