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昔の恋人に会いました

季節の変わり目の
ぼんやりとした風が吹き
記憶の中の甘い香りが
わたしを嬲る。

あからさまに
ときめくのだから みじめだ。

普段 思い出すこともない昔の恋人は
ほんの少しだけ幸せじゃないときに
目の前にあらわれる。

どんな偶然か
どんな皮肉か

たとえ遠く離れていても
わたしが わたしであるかぎり

この人の支配から
逃れてはいなかった、と心から知る。

隣の人なんてどうだっていい。
ただ 彼の気をひきたい。

しつこすぎて
冷たく追い払われるまで

誰かに懲りないと笑われても
同じ過ちと別れを繰り返す。

光り、影。
弱者と強者。

行為のときの彼の
説明のない涙が
また 見たい。

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