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はちみつの透明度と粘度

透明なビンに閉じ込められた
かたちのない想い。
いつもかたく口を閉ざして。

匂いさえ もらさない。

光をあびて

昼間の夢にも
誰かを思ったりしないのは
当たり前になるくらい
ずっとひとりだったから。

汚れた他人の指で
かき混ぜられるなんて ごめん。

そんな柔らかな内側は
欲しくない。

欲しいのは遠くの思考。
文字になった感情。

ただ距離をとる
弱い生き物の防衛本能を借りて

ゆるぎないかたさの
自分という幻を守る。

だれかが
助けてくれるわけじゃない。

いつか力任せに
ふたは ねじ切られ

もしくは かたい床に叩きつけられ
外気に触れて

流れ去ることも
蒸発することも
許されないわたしは

べたべたとねばり
甘い香りを放ちながら
誰かの複雑な表面を覆う。

ざらざらとした
ぬれて
かわいた

オウトツのある
かたく
やわらかい場所から

自分が
自分でないものの中に
溶けて消えていくのを感じる

その あたたかさ。

思わず
声をあげるほどの心地よさに
目を閉じる。

微笑みのかたち。

守りたかったものの
記憶は もう、ない。

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