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[読書記録]くもをさがす(西加奈子) / 今読めてよかった

読み終わってしばらく「まだちょっと言葉にはならない」と思って、パラパラとしては置いて、またパラパラして、を繰り返していました。
私などには、どの程度この本の内容に寄り添い、理解できたのかすら、分からないからです。

去年の夏、コロナが落ち着いたからと実家に行って、その帰りに高校時代からの親友からの電話を受け取りました。
とても明るい声で彼女は「何も言わずに聞いてほしいんだけど、ちょっとあたし乳がんになってさ。これから治療していくんだよね。」と言っていて、「え」と思わず声が出ました。「どんな状態か」と尋ねても、「言いたくない〜笑」と彼女は断固、私にどんな質問もさせてくれませんでした。やりとりと彼女の性格から、治療はおそらくとても長く大変なものになるのだろうと予測できました。
それから1時間半ほど近況や昔の思い出話、最近聞いたあの頃私達の周りにいた人や先生達の話をしました。軽やかに「懐かしい」と笑い、「サクッと治してくるから待ってて〜」と言われました。

それから私は私の畑で作った野菜を送り、彼女はバッグや上下セットの作業着(!)を私のために作ってくれて送ってくれたり、彼女自身が必要になるニットの帽子や、おしゃれな気持ちを忘れないための牛柄のスカート、パンダのスカート、たくさんの製作作品の写真を送ってきてくれています。
もともとビビットカラーが大好きで、立っているだけで目を引くほどのおしゃれさんなので、送ってもらったものや写真にうつっているなにもかもとても魅力的で、「ああ本当に彼女はずっと変わらないな」といつも思っています。

なので、この本を読んで、まさに私と同世代の西加奈子さんの具体的な乳がんの治療、その過程での西加奈子さんの精神の状態を知るにつれて、ずっと彼女のことが浮かび、遠くにいる私にできることはなんだろう、と思わずにいられませんでした。

西さんは8ヶ月の治療経過を書かれていました。そこまでの過程はやはり読むのも苦しいものですが、カナダの大きさとカナダ人の気性と、多分西加奈子さんご自身の考え方、周りの方々の「こうあったらいいな」と思い描ける最上級のサポートで、病気との付き合い方を、光の掴み方を、教えていただいているような、そしてなんだかとても励まされたような、読んだ私が、少しだけ強く、光に満たされたような気持ちになります。

カナダの看護師さんやお医者さんがお話する英語の、西加奈子さん独特の和訳が関西弁で書かれているのも、そしてそれを西加奈子さんが関西弁でツッコむのも、「そりゃそうだ!!泣笑」となるのです。

帯にはジェン・スーさんが
「思い通りにならないことと、幸せでいることは同時に成り立つと改めて教わったよう」
と書かれていました。
僭越ながら私も本当にそう思います。
どんな時にも光を見つけられる強さを、人はきっと備えているのだ、といつも思っています。
光を求める気持ちを失わずにいれば。
(それから社会的に手を差し伸べてくれる場所を探すことを諦めなければ。知識は絶対大切。)

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