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三分間トリップ

中学生って大人でもないけれど、もう子どもではないと思っています。

ぶかぶかの制服を着て鏡の前に立つさんちゃん(三男)を見ていたら、なんとも言えないもぞもぞとした居ても立ってもいられないような不思議な気持ちになりました。
今日、さんちゃんの来年度から入学する中学校の制服の採寸に行ってきました。

さんちゃんは小学校に入学してから毎日、朝起きるのも、着替えるのも、学校へ行くのも全て必ず一度「いやだな」「行きたくないな」と口に出して言う子です。
朝からくすぐって起こしたり、ぎゅっと抱きしめてはげましたり、なんとか学校へ向かう気持ちを盛り立てようと、あれやこれやと手を使って6年間やって来ました。
ふと、中学生になったさんちゃんを、これからどうやって私は起こすのだろうな、と思いました。


小さな頃、私は自分の身体が小さいことがとても不安でした。
双子としてうまれたので、身体が小さく、背の順番で並ぶ時は、いつも1番前かその次。
大人はとても大きく見えて、「絶対にかなわない」という恐怖があり、知らない男の人に対しては警戒心しかありませんでした。

家が商売をしていて双子、という少し話題性のある境遇だったためか、知らない大人が、突然声を掛けてくる、ということがよくありました。
父や母が側にいる時ならば安心ですが、友達と外で遊んでいる時や、一人でいる時などに声を掛けられるのがとてもいやでした。
私の知らない大きな大人が、一方的に私を知っているのがとてもこわかったのです。

中学生になるというその入学式の日、制服を着た私は、そんな小さな私の不安を卒業したような気持ちになりとても嬉しくて、自分より大きな中学生の先輩達を見回して、とても自由になった気持ちになりました。
小学生の時に知っていた先輩達もすっかり大人のようないでたちになっていました。

それから日々を重ねるにつれて、同級生の女の子達だけではなく男の子達もどんどん大きく大人っぽくなって行くのがとても頼もしく、心強く感じました。
少し遅れてだんだん私自身の身体も成長してきて、母の身長と同じになる頃には、自分が不安だったことなど忘れるほどになりました。

中学生って、毎日いろいろなことが起こりすぎて、本当に振り返ればあっという間で、興味の範囲が定まってきたり、周りのことも少しずつ見渡せるようになり、身体が大きくなる分まわりの大人の現実を少しずつ知って、「こんなもんか」と失望したり、現実が見えるようになる分、できるだけ人の本質を見ようといつも目を擦っていたような感じがします。
その分夢も見るのかもしれません。


ぶかぶかの制服を着て鏡の前に立つさんちゃんを見ながら、その三分くらいの間に、自分が中学生になった時の追体験をして、それから、
「どうかさんちゃんの中学生生活が、無理なく少しでも楽しくありますように」と心から願ったのでした。

ありがとうございます!