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[読書記録]となりの脳世界(村田沙耶香) / 私の好きすぎる変のタイプ

「コンビニ人間」を読んでからどうも引っかかっていました。村田沙耶香さんってどんな人なのだろう。あちこちのSNSの読書アカウントをうろうろと散歩するのがこの上なく好きなのですが、どこでだったか「となりの脳世界」は村田沙耶香さんの視点や考えていることが面白い、と見かけました。
それを見た私は、すぐさまブクログに記録し、いつか村田沙耶香さんの脳世界を覗かせて頂こうとにんまりしていました。

「となりの脳世界」は思い出話が山のようにあって、小さな頃の村田沙耶香さんの視点やエピソードがもりもりと載っており、私もいろんなことを思い出したりして追体験しました。面白かった。

私も小さな頃は、「大人は完全である」と思い込んでいたし、そして成長するに従い「完全な人間なんていない」に変わって行きました。その絶望と諦めとそれからまた持ち上げてきた希望を、村田さんは本の中に見出していて、程度の差がどのくらいあるのかはさておいて私もそのようにいつも思っているので、「ああ、とても分かる…」と深く頷きました。

小説は私の救いだった。なぜ思春期を乗り越えることができたかといえば、「不完全な大人」らしき人が書いた、自分より絶望した人間の言葉が、本の中にあったからだった。誰かが書き残した絶望が、私にとっては希望だった。その暗闇を頼りに、思春期を少しずつ進んで、乗り越えていった。

「となりの脳世界」村田沙耶香より

それから「謎の道」で思い出したのが、昔、育った家の階段の途中に、ペンで描いたドアのこと。私はそのペンで描いたドア(1cm×2cmくらいのドア、取手付き)の向こうには「私が生まれた花の国」が広がっていると妹に話していました。花の子ルンルンの見過ぎです。「今日はこのドアは閉じられているけど、特別な日にだけ花の国につながる。その時が来たらお別れだね。」なんて話していました。妹は妹で、たしかその隣りあたりにドアを描いて「星の国につながっている。」と言っていました。楽しかったなあ。
なので村田沙耶香さんの「箪笥の裏側に秘密の階段を発見する夢」を見て「ひょっとしたら秘密の階段があるかもしれない場所」のことを、とても懐かしく楽しく読みました。

あと、「走らせている人」たち。わあー!と思いました。誰かに言ったような気もするけど誰にも言っていなかった走らせていたもののことを思い出しました。ただし、私のは人ではなかったし(得体の知れない宇宙人みたいな、空気人間みたいな)、私が止まった時はただ立って休憩していました。
久しぶりに思い出して笑ってしまいました。もう忘れかけていて現役ではなかったので、またどこかから連れて来ようと思います。

「こそそめスープ」では声をころして涙を流して笑い、「親切エレベーター」では心から共感して、「謎スポーツ観戦」でもぐぐぐ、と笑い、「文庫本が並ぶ本屋の思い出」では小学生の私が青い鳥文庫の前で熱くなっていました。

村田沙耶香さんの脳世界、私、癖になりそうです。

なにせ「これは来たな…」と思いました。村田沙耶香さんの「変のタイプ」が私のとてもとても好きな類いの変のタイプなので。
村田沙耶香さんのエッセイは集めていこうと心に誓いました。

それと、BSの「ご本、出しときますね?」を観ていなかったのがとても悔やまれます。なので「ご本、出しときますね?」の本も注文しました。観ていなかったのはとても悔やまれますが、本でずっと置いておけるのはとても楽しみです!


ああそうだ、それから音楽の聴き方もとても共感しました。「耳で観る」。村田沙耶香さんはこれを癖だと仰っていたけど、音楽を聴いて映像を見る人はわりといるかもしれないな、と思いました。

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