ドラクエ11_タイトル

ドラゴンエクエスと11 感想文

 およそ2ヶ月前に購入した『ドラゴンクエスト11』ニンテンドー3DS版をクリアした。全てのサブクエストをクリア。錬金レシピは空白だらけだし、モンスター図鑑はぜんぜん埋まってないけど、そっちはいいでしょう(大してやる気も起きないし)。称号はどれくらい埋まっているのかよくわからない。だいたいクリア、ということにして感想文を書きまーす。

 『ドラクエ11』の感想を書く……といっても発売からもう1年以上が過ぎているので、今さらすぎるほど今さらの話だけど(買ったのが今だから仕方ない)。このタイミングでネタバレとか気にしても仕方ない気がするので、全面的にネタバレありの感想文を書きます。

ネタバレ全開です

2Dモードと3Dモード

 今さらのトピックとして、ニンテンドー3DS版『ドラクエ11』は2Dクラシックモードと3Dモードの2つのバージョンが同時収録されている。
 さて、どちらから始めようか。これはやはり、まず2Dクラシック版をプレイしてから3Dに進むべきだろうか……。なぜならドラクエは元来2Dのゲームだった。これを原点として、その進化版として3D、さらに現代機にリメイクされた(と、いうことにして)PS4&Switch版に触れるのが順序として妥当ではないだろうか。
(※ 3DS版とPS4版は同時発売。PS4版は3DS版のリメイク作品ではない。「そういうつもりで」という意味。Switch版は現段階ではまだ発売していない)

 そんなふうに思いながら始めてみたのだけど、2D版が思いのほかショボい。一方の3D版はキャラクターがしっかり演技をしている。シーンごとのアニメーションが意外にきちんと作られていて、見ていると普通にアニメだし、ストーリーは少年漫画ふうで読んでいて楽しい。

 直前に(といっても年単位で前になるが)3DS『ドラクエ7』のリメイクをやっていて、てっきりあんな感じだろう……と。イベントシーンもキャラクターのパターンの切り貼りで説明されるんだろう……と思っていたから、想像以上にしっかり作られているので驚いた。
 『ドラクエ11』は今まで以上にキャラクターのドラマにしっかり寄せて作られている。それは『ドラクエ8』も同様だったのだけど、それ以上にキャラクターの掘り下げ方が繊細になっている。それぞれのキャラクターの性格、旅に出るようになったいきさつ、クライマックスに向けた決意……。ドラクエシリーズはあまりキャラクターが喋ってドラマを作らない、という印象がずっとあった。『ドラクエ8』ですらまだ平坦に感じていた部分だが、『ドラクエ11』はかなりはっきりと「物語を読み解いていく作品」「キャラクターを掘り下げていく」作品になっている(『ドラクエ8』はカメラワークやキャラクターのアニメーションがまだまだぎこちなく、書き割りっぽい感じだった)。

 それで、キャラクターの造形。ニンテンドー3DSはスペックが低いわけだが、キャラクター1人1人の造形がなかなかいい。ローポリだが、どのキャラクターも可愛い。特にベロニカがお気に入り。ローポリだろうがハイポリだろうが、やっぱりこういうのは作り手の腕次第。アニメーションもさっき書いた通りかなりしっかり作られているので、ストーリーを追うのにストレスはなかった。バトルシーンの動きがちょっと弱く感じられたが……気になるほどでもないが。

 今回はどのキャラクターもお気に入りなのだが、ただ1つ……マルティナだけが引っ掛かった。キャラクターとしてはかなり魅力的なのだが、首と胸のバランス。この辺りがスッキリしないというか、どうもマルティナだけ首が短く感じられる……気のせいだとは思うが。時々、アゴが胴体にめり込んでいるように見えて、これがずっと気になっていた。

 物語がキャラクターの内面を掘り下げる方向で作られているので、記号化した2Dで表示されると物語の方向性と噛み合っていないように感じられる。今までのドラクエのような、キャラクターがあまり喋らない、ドラマ的な起伏の少ない内容だと2D表現はピッタリ来るが、『ドラクエ11』のようなストーリー作りだと2Dはあまり相応しくない。
 という以前に、2Dキャラクターはあまり見せ方やアニメーションにこだわっているような感じではない。はっきり言えばショボい。というわけで私は3D表示一択だった(2Dはあくまでも“おまけ”として作ったんだろうな……おまけとして作るにしてはかなり大きなものだったが)。

フィールドの表現について

 フィールドの表示だが、思いのほか奥のほうまで描かれていて驚いた。やっぱり直前にプレイした『ドラクエ7』の印象があったわけだが、『ドラクエ7』では主人公の周辺しか描画されない。向こう側へ行って、やっとそこに森があるのがわかる……という感じだった。それと比較すると『ドラクエ11』はしっかり描画されていた。じゃあ『ドラクエ7』の時はなんであんな感じだったのだろう?
 ただ、モンスターの表示は不充分で、カメラを動かして画面の外に追いやると消えてしまう。馬に乗って走っていると、唐突に目の前に現れてぶつかってしまうことがよくあった。こういうところは『ドラクエ9』以降、相変わらずだ。この性質を利用して、会いたいモンスターが出るまで何度もカメラを動かす……という手も相変わらず使える。

 フィールドの表現とちなんだ話で、カメラワーク問題。自由に周囲を見回せないのがもどかしかった。こればっかりは3DSに右スティックが付いていないから仕方ない。
 プレイしていると、「ここで上を見上げたい」という瞬間がたくさんあった。少し進んだ先に巨大な彫像が置かれている……これを見上げたい。もっと単純に風景が見たい。仲間が「あれはなんだ?」と話題にしているのに、カメラが下を向いているので見えない……ということがよくあった。あるいはうまくカメラを操作して女の子キャラクターのスカートの中を仰ぎ見たい……しかしカメラを自由に動かせず、残念だった。

 ニンテンドー3DSの次ハードの話はどこまで進んでいるか知らないが、その時には右スティックはぜひとも標準装備してほしい。

バトルシーンについて

 戦闘はテンポがすこぶる悪い。今回の場合、キャラアニメーションが作り込まれているので、特技を選ぶ度にアニメーションが流れる。全部まるごとスキップしてやりたかった。
 相変わらずの「ト書き待ち」もリズムを崩してくる(特に『時渡りの迷宮』のテンポは最悪だった)。結局ドラクエは、最後までト書き表現に捕らわれたRPGだった。

 不思議なところで、魔法で「マジックバリア」を使ったときはスムーズに展開するのに、アイテムで「マジックバリア」効果のある装備を使ったとき、エフェクトアニメーションがものすごくゆっくり展開する。これはなぜなのだろう。

 バトルAIは非常に悪い。例えばバイキルト使えるのに、わざわざバイオシンのほうを使ったりする。あと2発程度で倒せる敵を前に、延々スクルトやマジックバリアをかけて誰も攻撃してくれない(あと1発の時は普通に攻撃してくれる)。MP消費を考えないから、「バッチリがんばれ」でも最強の技で倒そうとする。

 バトルシーンのテンポの悪さは2Dモードでだいぶ解消される。2Dモードだと余計なキャラアニメーションもないので、すっと展開する。センスのないエフェクトアニメーションでやや時間を取ることがあるくらいだ。
 ただし、2Dモードだとエンカウントバトルになる。戦闘を避けたいときは3Dモードで。レベル上げをしたいときは2Dモードで。こういう時にこそ2D、3Dモードの切り替えが威力を発揮する。
 2Dモードは探索時にも活用できる。後半、空飛ぶクジラ(ケトス)を手に入れた後の探索は、2Dのほうが明らかにやりやすかった。3Dだとどこで降りられるのかよくわからなかった。

 今回は戦闘中、Yボタンで状態異常について見ることができるようになった。今までは何を掛けられているのか全部憶えながらだったから、ありがたい仕様だ。
 ただ、キャラクター1人に対して1ページ……というのは使いすぎではなかっただろうか。右ページ側に何かが書かれていたことが一度もなかった。これなら、もうちょっとまとめて一覧できる形にして欲しかった。L、Rで切り替えるのは微妙に面倒だったから。

 ところで、このシリーズはいつも4人1組のパーティを組むのだが、待機状態になっているキャラクターに援護攻撃させるのは駄目だったのだろうか。待機キャラクターを活用して欲しかった。

 そうそう、「魔法使い役立たず」問題にも始めてまともな回答が示された。普通に、魔力が上昇すると攻撃魔法の威力が高くなる。普通のイオでも100近いダメージを出すことがある。「今のはメラゾーマではない、メラだ」を実際にやることができる。ずっとそうなればいいと思っていたのに、最後の最後でやっとか……という感じだった。
 ただ「MP回復」のシーンはもう少し多い方が良かった。戦士はいくらでも「戦う」ができるのに、なぜ魔法使いの攻撃手段には制限が掛けられるのか……不平等じゃないか。これはずっと引っ掛かっている。

2画面の使い方

 2画面の使い方だが、下画面にマップが表示されるのはいい。特に、ルーラの時にマップが表示されるのは本当にありがたかった。最近のRPGは地名がどうしても頭に入らず、最後まで地名(その他固有名詞)を憶えられないまま終わる……ということが多かった。小さな工夫だがありがたい。この工夫のおかげで、最近のRPGとしては久し振りに地名をちゃんと憶えることができた(むしろなぜほとんどのRPGでマップを出してくれないんだろう……という不満はあった)。

 そこまではいいのだが、下画面のマップをスクロールさせるとき、なぜか「スタートボタンを押してから、スライドパットで動かす」というプロセスが必要となる。いや、普通にタッチパネルを使えばいいじゃん。なんで微妙に面倒くさくした?

ドラクエ10の資産

 『ドラクエ11』には『ドラクエ10』の資産があちこちに見られた。街の住人の顔、体のつくりやモーション(作り直していると思うが)は『ドラクエ10』のパーツが使われている。街の住人の顔を見ていると、「あの顔、見たことある!」と気付くものがあった。

 フィールド上に落ちているキラキラと、錬金の仕組みも『ドラクエ10』のものだ。しかも、『ドラクエ10』よりずっとやりやすい。(やっぱり、RPGはオンラインよりもオフラインの方が本質的には面白いんじゃないか)

 サブクエストの仕組み、受注、クリアした時のBGMが『ドラクエ10』と同じ。

 杖で敵を叩いた時のMP回復、戦闘勝利時のMP回復。これも『ドラクエ10』由来のものだ。が、その回復量もせいぜい「3~5」とか。最終的にMPは500以上にもなるのだから、50くらい一気に回復してもよかったんじゃないかという気も。

 こうして見ると、オンライン版『ドラクエ10』は無駄じゃなかったんだな……。

音表現の問題

 ドラクエシリーズでずっと気になっているのは「音」。SE。ドラクエの世界観はファンタジーだ。しかしカーソル音が「ピ」と電子音。せっかくファンタジー世界を冒険するのに、「ピ」音は味気ない。この「ピ」で機械の中ということを思い出させてしまう。

 他にも、人物が喋るときは「ぽぽぽぽぽ」音だし、魔法や攻撃直前の音はファミコン時代からずっと変わってない。今時、こんな味気ない音を使っているファンタジーRPGはほぼないはずだ。ウインドウの表現も、ドラクエはいつまであのセンスのない無機質なウインドウを使い続けるのだろう。
 ここまでキャラクターが作り込まれているのに、「ぽぽぽぽぽ」音はないだろう。『ドラクエ8』(3DS版のみ)にはあったのに、なぜ『ドラクエ11』にはボイスを付けなかったのだろうか。キャラクターのイメージ、物語のイメージは克明なのに、機械的なウインドウと「ぽぽぽぽ」音で現実に引き戻されるし、ストーリーのイメージにも合っていない(海外版はウインドウが格好良くなりキャラクターボイスが付いているようだ。Switch版にはボイスを期待したい)。

 それもファミコン時代から伝統だから……伝統かも知れないけど、時代遅れだ。伝統の駄目なところを引き摺りすぎている。こういうところは、さっさと刷新してしまったほうがいい。

時渡りの迷宮について

 時渡りの迷宮に入るとき、まずヨッチを集めて回らなくてはならないが、これが非常に面倒くさかった。何回世界を巡ったことか! 最終的にはヨッチの出現する場所と(ついでに)キラキラの場所を全て記憶するくらいになった。
(ヨッチ集めに何回も世界を巡っていて気付いたが、ゲームの始まり、デルカダール周辺のヨッチは岩陰や木の陰に隠そうとしている。それ以降はわかりやすいところに置かれるようになった。ヨッチの置き方が、最初とそれ以降でやり方が変わっている)
 後半、階層9、階層10辺りに行くと集めたヨッチが数回の戦闘で全滅してしまう。ちょっと進んで、全滅して、ヨッチを集め直して……あー面倒くさい!

 時渡りの迷宮の中の戦闘はテンポがすこぶる悪かった。画を止めたまま、「○○がやられた」「ゲージが溜まった」といったト書きがゆっくりと表示される。そういうのはポップアップ表示にして、展開をリズムよく進める方にしてほしかった(という以前に、ト書きを出さずとも「見ればわかる」というものばかり)。ト書きに捕らわれるのは、ドラクエの悪いところである。伝統に引き摺られた、駄目なところだ。

ストーリーについて

 『ドラクエ11』はキャラクターが演技をしながら物語を組み立てている(だからゆえにボイスがないのが引っ掛かる)。これがなかなか面白く、普通に少年漫画を読んでいるような感覚で追いかけていける。

 RPGの定石だが、新しい土地に進めば新しい物語が始まる。……というのはいつもの話だが、多くの場合で、そこでキャラクターが絡んで来る。今までなら、街の人「助けてくださいよ」→ボスとの戦闘、という流れだったが、常にキャラクターが絡んで来るので、一つ一つのエピソードが無駄にならず、じわじわと掘り下げられていく感じがあってよかった。

 今回特筆すべきポイントは「勇者とは何者か?」問題にも言及されたことだ。初代から突っ込まれ、今やパロディとして大量生産されつつも、誰も「勇者とは何者か?」問題には手を触れずに来た。「勇者とは何者か?」これに答えるのはやはり本家ドラクエであるべきだろう。
 勇者とは魔王が出現したときに、これを倒すためだけに力を与えられて生まれてくる人のことである。
 また勇者について、堀井雄二さんはインタビューなどで「諦めない人」と語っている。
「諦めない、めげない、挑戦し続ける――そういう人は、みんな「勇者」だと思います。」→http://news.denfaminicogamer.jp/interview/170927/2
 勇者は勇者として生まれてきた瞬間、過酷な運命に晒される。極端な例では『ドラクエ5』。それでも戦いつづけるし、回りは思ったほど協力してくれない。大抵の王様は傍観しているだけ。たった一人、少ない仲間を引き連れて恐るべき魔族の王と戦う宿命を背負わされる。それでも諦めず、戦いに挑戦する人。その異様な精神力。挑み続ける力、宿命を乗り越えていく推進力。これを持った人に向けた尊敬である……きっとそういう願いが込められているのだろう。

 さて、ラスボス・ウルノーガ撃破後、終わったと思いきや、「その後」の物語が始まる。物語は過去に巻き戻り、命の大樹が落ちる直前から再スタートとなる。
 物語前半では悲劇的な展開が多かったが、これが回避される2周目が始まる。

 ただ、気になったのは様々なクエストがあるのだけど、その土地に行かないとわからないし、行った後も特にクエストノートにも記載されないから、他の色んなサブクエストを消化しているうちにうっかり忘れていることがあった。
 私の場合、別件で海を彷徨っていたところ、突然ボス戦に突入し、これを撃破すると海底王国ムウレアの女王から褒美として「女王の愛」が手に入った。ムウレアのクエストなど完全に忘れていた。それで「女王の愛」を使うとまだ達成していないクエストの案内が入るのだが、そこでやっと「そんなクエストあったのか」「あったけど忘れてた」ということに気付く。行くも行かないもプレイヤー次第……かも知れないけど、もう少し導線を作っていてほしかった。

 物語の意外性、今まで棚上げしていた「勇者とは何者か問題」にも言及された『ドラクエ11』。物語そのものにはかなり満足はしたのだけど、引っ掛かる部分がいくつかある。
 というのも、最終ボス・ニズゼルファを封じ込めていた黒い太陽……これを叩き割ったのは誰か。もちろんウルノーガだけど、描写の仕方に引っ掛かっていて……。どうしてあんなふうに隠すような表現にしたのだろう?
 ウルノーガは死に際に、「時間移動しているのは自分だけだと思うな」と意味深な台詞を残し、これはウルノーガがまたどこかで現れるフラグか……と思ったがそういう展開もなく。じゃあ結局、ウルノーガは何の件について言いたかったのだろう……?
(この辺り、改めて回想シーンを再生して確かめてみたのだけど、ニズゼルファのことだったらしい。どうもニズゼルファはリーティングシュタイナーだったらしく、時間がループしていることを観測できていたようだ。この辺りのシーン、あまりちゃんと理解できていなかった)
 ドラクエはSFではないが、こういうところもSF的に言及して、回答を示して欲しかった。
 いまどきゲームの2周目展開は意外でもなんでもない。それだけに後半に向けてもう一捻り、話を広がげてほしかった。もうちょっと複雑さがほしかった。ニズゼルファへ向かうストーリーがずいぶん小さくて、1周目ほどドラマチックじゃなかった。様々なストーリーがあるが、それが1つのドラマとして連鎖していく感じがまったくなかった。

 もう1つ疑問に思ったのが、「勇者の力」問題。勇者には特別な力が与えられている。ものに記憶されている過去を見ることができる。……しかし、ゲーム全体のギミックとしてさほど有意義な設定だったとは思えない。ストーリーの進行上、たまに使える……くらいのものでしかなかった。後半になると、色んなものに作用しすぎて、ご都合主義では? という気もしたし。

 それで、究極問題としてこの「勇者の力」はどこから来たものだったのか――どうやら「命の大樹」が遣わしたものらしい。大樹の根に触れるとその力の一部が発動したのはそういう理由だったらしい……と、いうことでいいのだろうか。この辺り、ちょっと自信がない。
 後の勇者達にはなぜこのような力が備わっていなかったのだろう……という疑問があるが、これに近い力は持っているけど、薄まっている……と考えてみたけどどうだろう。
 ところで、時間のループについてベロニカはなんとなく察しかけていて主人公に探りを入れる場面があったが、結局、ベロニカは気付いたのだろうか。こういうところももうちょっと突っ込んでみてみたかった。結局のところ一本道で……引っかき回す要素を入れて欲しかった。

 最後にもう1つ。
 今回はある意味での『ドラクエ11-2』が収録されている……という状態だったのだが、すると後半戦、主人公のレベルが高くなりすぎてしまう。ウルノーガ撃破したところで、確かレベル70前後だったかな……。記憶が曖昧だけど(もう少し低かったかも知れない)。ニズゼルファまで行く頃には、レベル99になってしまっていた。
 後半戦はレベル70以上が前提となるから、ボス戦のインフレ具合がなかなか凄かった。一撃のダメージで200ポイントは当たり前だし、一度に3回攻撃も当たり前(攻撃がベロニカに集中してしまうと、1ターンで死んでしまう)。こちらも与えダメージ1000越えは当たり前。これがなかなか痛快で、結構楽しいバトルだった。
 ただ、特にレベル上げに集中していたわけでもないのに、自然にレベルが99になってしまった。これがちょっともったいないな……という気がしてしまって。
 いつもなら、ラスボス倒した後もレベル上げをし続け、最高レベルまで上げてから再戦……という流れがあったのだが、今回はその機会がなく最初からレベル99になってしまった。レベル上げしたいのに!
 レベル欄にちょっと空白もあることだし、いっそ最高レベルを150くらいまで引き上げてほしかった。

 ちょっと妙な話だけど、ウルノーガまでの物語がレベル1~70……これくらい過酷な冒険を経て成長しましたよ、という感じがある。一方のニズゼルファはレベル70~99までの物語しかないような感じがしてしまう。ここでちょっと主人公の成長を感じることができづらいし、より強力な大ボスに戦いを挑んでいる、という動的な感覚も弱くなっている(といっても、ニズゼルファの物語は「生命の大樹」からさほど長い冒険を経て……というものでもない)。
 あとはやっぱり、レベル上げを楽しみたかったなぁ……と。この楽しみがなかったのが残念。

まとめ

 『ドラクエ』シリーズは今回が最後かも知れない。最初の『ドラクエ11』発表会の時に、すぎやまこういちさんが「最後のドラクエ」と発言したのを憶えている。
 実際、『ドラクエシリーズ』のメインメンバーは相当な高齢。すぎやまこういちさんは87歳で、世界最高齢のゲーム音楽家としてギネス登録された。87歳という年齢で衰えぬ作曲の腕は見事で、『ドラクエ11』でも素晴らしい音楽を提供してくれた。
 でも堀井雄二、鳥山明、すぎやまこういちこの3人を主軸にした『ドラクエ』シリーズはこれで最後なんじゃないか……という気がする。さすがにみんなもうトシだ。引退時だろう。30年という時を経て、変わらぬものを「王道」として提供し続けてきた凄さ。こんなに世の中のトレンドが変わっているのにも関わらず、相変わらず「いつものドラクエ」を制作し、それを世の中で大ヒットさせてきた凄さ。ドラクエが終了しても、「ドラクエ的なもの」をみんなRPGのベーシックなものとして記憶し続けるし、「勇者パロディ」といえばこの先も鳥山明デザインのパロディを描いていくのだろう。ドラクエはすでに、私たちの文化の土となり血となって根づいている。ドラクエはこれからも生き続けるのだ。
(恐らくは、次世代の頃には「なんで勇者ってあの変な冠つけてるの?」という人達が出てくるだろう。鳥山明を知らないけど、「勇者といえば」で踏襲されつづけるデザインになっていく)

 『ドラクエ』というブランド自体はなくならないだろう。決して。なぜならスクウェア・エニックスにとって、ドル箱コンテンツだからだ。会社方針として『ドラクエ』というコンテンツを殺す……ということは絶対にしないだろう。『ドラクエ』派生作品はこれからもどんどん作られていく。
 もしも『ドラクエ12』があるとしたら、もう堀井雄二、鳥山明、すぎやまこういちの3人は顔を出さないかも知れない。というかすでにこの3人は「監修」という形になっていて、キャラクターデザインにしてもメインの何十人以外はスクウェア・エニックスのデザイナースタッフが描いている。もしも『ドラクエ12』があるとしたら、齊藤陽介さんあたりが中心になるんじゃないかな。堀井雄二、鳥山明、すぎやまこういちの3人を抜いたドラクエのナンバリングタイトルが作られる可能性は、いくらでもありうるだろう。

 堀井雄二、鳥山明、すぎやまこういちの3人が関わった最後かも知れない『ドラクエ11』。『ドラクエ』というシリーズが培ってきた表現の究極形態。『ファイナルファンタジー』は変わり続けたが、『ドラクエ』は変わらなかった。基本ルールは変えないという中で、『ドラクエ11』は朗々たるドラマが展開されたし、その結末は、その後の全てのドラクエの原点となる構造になっていた。もしもその後に『ドラクエ』シリーズが展開しても、『ドラクエ11』という重しからは逃れられない。そういう作りになっている。
 もしも次なるドラクエが作られるとき……その時こそ新時代がやって来るときだ。ドラクエは伝統に捕らわれてただの時代遅れの象徴になるかも知れないし、むしろ新体制で作られるからまったく新しい作品に生まれ変わるかも知れない。いつになるかわからないが、取りあえずその時は新しい作品を歓迎したいと思う。

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