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3月3日 Switch4周年ですって……というわけで発売前後のこの話

 Nintendo Switchが発売4周年を迎えた。そういえば3月3日発売のゲーム機だったんだよね。ゲーム機の多くは年末ホリデーシーズン発売だから、3月発売というのはかなり不思議なタイミング。どうして3月3日だったんだろう? ちょっと経緯を覚えてないです。

 それはさておき、4周年を記念して、今回はこんな画像。

Switchアンケート ニコニコ動画 購入意欲

 これは2017年4月頃、ニコニコ動画で実施された『Nintendo Switchを購入しましたか』というアンケート。
 結果はご覧の通り。発売直後、「購入した」はごくわずか3.6%だけ。もちろんこれは「買えなかったから」という話ではない。そもそも「購入する予定はない」が72%もいたのだ。
 ニコニコ動画のアンケートだから、当然そこそこのゲーム好きが答えているはず。それでもSwitch発売直後の反応はこんなものだった。初めからSwitchは熱狂的に支持されていたわけではなかった。
 もちろん、世間的にはSwitchは大ヒット、品薄状態に陥っていた。Switch発売狂騒は発売前から始まっていて、まず予約が取れない。店を回っても品がない。任天堂側もあまりにもたくさん売れてしまったので、翌月に出す予定だった在庫を空輸で送り出した……というくらい。
 でも、コアなゲームファンほど「別に」という反応だった。
 ついでにSwitchが発表された直後、任天堂株は急落した。なぜならその当時のホットワードであった「4K」「VR」が入ってなかったからだ。4KもVRもなし。しかも先行するPS4よりもスペックが下。「あんなものは売れないよ」と投資家達も予想して任天堂株を手放していたわけだ。
(逆にこのタイミングで任天堂株を買った人は、大儲けした)

 コアなゲームファンは何を見落としていたかというと、全てのユーザーがみんないくらでもゲームのために時間を投資できるわけではない……ということに気付いていなかった。「ゲームにおいて最重要はグラフィックだ! だからよりスペックの高いゲーム機が一番良いはずだし、一番売れるはずだ!」……とエリートゲーマーほど考えがちだ。
(忌憚なく言えば、これは暇人の発想で、しかもそういうエリートゲーマーは別に多数派でもなんでもない。これが多数は意見のように錯覚するのは、エコーチェンバー現象)
 でも世間の人々は忙しい。みんな学校や仕事で、いつでもゲームに時間を費やせるわけではない。なのに最近のゲームはどれもクリアまで50時間以上もかかる! どうやってゲームのための時間を捻出すればいいんだ――とこれでゲームから離れていく人も多かった。
 そこでNintendo Switchは自由に外に持ち出せるゲーム機だ。私もバイト先によく持っていって、通勤途中でよくゲームをやっていた。隙間時間に少しずつゲームを進められる。こんなにありがたいことはなかった。

 投資家達が見落としていたのは「最先端」のホットワードであった「4K」や「VR」といった要素がなかったからだ。彼らの頭には、既存の言葉の中にしか最先端のものはなく、それがない商品は売れない、という思い込みからだった……多分。そうした世間で盛り上がっているもの、から外れるものからブームが生まれるとは想定していなかった。
 思い起こせばあの頃……正確には2016年頃は「VR元年」と呼ばれ、「これからはVRが盛り上がる! VRが世間的に大流行になるはずだ!」と思われていた頃だった。「その流れに乗らない任天堂は愚か者だ!」と思われていた。――ところがあれから5年。VRは完全に失速し、忘れ去られたブームになった。
 だってVR機器って高いんだもの。みんな興味はあるし、私だって興味はあるけど、高くて買えないよ……。敷居が高すぎだった。未だに私の所にはVR元年は来ていない。
(現状はVR機器は一杯ありすぎて、どれを買えばいいかわからない。普通の人に向けて「これを買えば良い」というガイドがないことが、また敷居を上げてしまっている)

 あれから4年が過ぎて、結果はどうだろう? Nintendo Switchはこれまで7987万台を売り上げるヒット商品となった。未だに品薄状態が続くゲーム機だ。
 Switchの上にはまだ1億台売り上げたWiiがいるし、ニンテンドーDSやゲームボーイはもっと売り上げている。ちなみにニンテンドー3DSは7594万台売り上げており、Switchはやっとニンテンドー3DSを越えた……というところだ。でも1億台の壁はもう見えている。
(PS5はだいぶ苦戦している。間違いなく需要があるのに、その需要に応えられていない……というのがかなり深刻な問題で、この出だしの躓きが後々ソフト展開に響いてくるんじゃないか……という懸念がある。歴史を振り返ると、出だしで躓いたゲームハードは、それきり立て直せずフェードアウトするというデータがはっきり出ている。ただ奇妙なのは、ほとんどのメディアが「PS5はあまり売れていない」ということを正面から取り上げていないこと。メディアで取り上げている記事を見ると、どれも「PS5大人気」「PS5品不足」「PS5高値転売」といった内容ばかり。PS5がたいして売れていないことを記事にした例は、私は1度しか見たことがない。このメディアの忖度はいったい何なんだろう? 任天堂機が売れていない時はもっとこれみよがしなのに)
 「売れない」と予想されていた、「今は売れているかも知れないが、すぐに失速する」と思われていたゲーム機が、現状、ゲームハード戦争の勝者になっている。ソフトも充実していて、4年前は「買わない」と答えていたユーザーの多くがSwitchを買い求めたことだろう。なにしろ新作のほとんどがSwitch向けに作られているし、アーケードアーカイブなどの古典作品も充実している。ファミ通の売り上げランキングを見ると、1位から30位までほとんどSwitchタイトルが独占している。
 スペックが低いという問題も、よほどのスペックを要求する高品質ゲームでない限り、だいたいのソフトがSwitchで充分だった……という答えも出てしまった。スペックが高いから、面白いゲームが楽しめる……というわけではない気付きがSwitchによって生まれたように思える。

 なにが人々の琴線に触れるかわからない。その時代の“世間”に乗れば正解というわけではない。任天堂はそういうところではなく、自分独自の考えを提唱し、そこにこそ本当に人の心を動かすものがあることを突き止めてくれる(失敗もあるけど)。そこに気付けるのが任天堂の凄さだ。


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