とらつぐみ
5月17日 わずか100年の間に、1万年ぶんの変遷を体験してしまったある民族のお話
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5月17日 わずか100年の間に、1万年ぶんの変遷を体験してしまったある民族のお話

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 いま読んでいる本の中から、面白い写真が出てきたので紹介。

 この写真が撮影されたのは、1933年のニューギニア。
 どういう状況の写真かというと、ニューギニア人は石器文明による狩猟採取の生活を送っていて、“文明”なるものを知らなかった。そこに初めて西洋文明人と遭遇し、ショックと恐怖のあまり、写真の老人は腰を抜かし泣き出してしまっている。後ろに見えている足は、逃げようとしている人のものだろう。

 人間は「認知外」の何かと遭遇した時、決まって2種類の反応を示す。「恐怖」するか「崇める」かのどちらかだ。狩猟採取の生活を送っていた当時のニューギニア人にとって、西洋文明人との遭遇は、認知外の、途方のないものと遭遇するようなショッキングな体験だった。宇宙人に遭遇するとか、幽霊に遭遇するとか、神様に遭遇するとか……そういう体験だったのだ。
 認知外のものと遭遇した時、人はどのような反応を示すのか……というリアルなサンプルである。

 この時の遭遇譚は、本の中でこう書かれている。
 ファーストコンタクトの50年後、当時少年で、現在は古老になってしまった数人の証言が載せられている。
 ニューギニア人にとって、西洋白人との初遭遇は阿鼻叫喚の恐怖だった。村はパニックだった。というのも、白人達はみんなやたらと肌が白い。ニューギニア人にとって、「肌が白い」ことは、「死んだ人」の証だった。だから死んだ人がこの世に戻ってきたのだと思ったのだそうだ。
「あの人達は、我々の親類かも知れない。この間亡くなった人かも知れない。だから殺してはならない」……そのように考えたそうだ。

 だが、ニューギニア人たちはやがて落ち着いて西洋白人たちと接するようになり、「この者達は何者なのか?」と考えるようになった。
 ニューギニア人たちは、西洋白人が去った後、野営地跡を丹念に調べて、手がかりを探ろうとした。すると、野営地跡から穴掘りトイレ跡が発見され、そこに一杯のウンチを見付けた。
 続いて西洋白人のために、性行為相手として女を幾人かあてがったのだが、その女が戻ってきてからの証言を聞くと、西洋白人達はペニスの形状も同じだったし、セックスの仕方も同じだった……という。
 あの西洋白人たちはウンチもするし、自分たちと同じ方法でセックスする。ならば自分たちと同じ人間だ。やがてニューギニア人たちはその結論に達したのだった。その結論に達してからは、ニューギニア人たちは、西洋白人を恐れなくなった。
 要するにおちんちんとウンチによって、西洋白人は「ただの人間」である……ということになったのだ。

 本当に面白い話は、実はこの後、ニューギニア人におきた出来事のほうだ。

 ニューギニア人が西洋文明人と遭遇したのは1931年のこと。ニューギニア人はそれまで石器文明による狩猟採取の生活を送っていた。それが現代ではどうなっているのか? 「国家」が作られ、道路が整備され、空港、病院、学校、警察なども作られ、ニューギニア人は肥満になって成人病を患うようになり、最近ではスマートフォンも持っている。

 人類が「農耕」を発見したのは、今から1万2000年前である。「国家」の成立が紀元前3400年前、「鉄器」を利用し始めたのは紀元前1400年頃、「産業革命」が19世紀、ライト兄弟による現代的な「航空技術」の発見が1903年、世界初の「コンピューター」の登場が1946年……。
 1930年代のニューギニア人は「部族社会」でまだ「国家」すら持っていなかった。それが今では政府があり、警察もいて、裁判所のある世界になっている。コンピューターもあるし、航空機を操って空も飛んでいる。人類が1万年かけてようやく獲得した文明・文化の変遷を、わずか100年足らず、世代にして3世代程の時間で一気に体験したのだ。
 ほとんど「タイムマシンで未来に行っちゃった」くらいの体験だっただろう。ニューギニア人の「世代間ギャップ」はいったいどれくらいのものだったのだろうか……。

 私たちは、原始的な石器人について考える時、よく犯しがちな勘違いに陥ることがある。石器時代人の人は、私たちより種として劣っているのだ……と。なぜなら石器人は「文明人」と違って、動物に近い存在だからだ……と。もしも石器人にいきなりコンピューターなるものを見せても、彼らは私たちより劣っているので、理解できないだろう――文明人は傲慢にもそういうふうに考えてしまう。
 しかし30万年前の石器人と現代人の骨格を比較しても、人間という種の姿形はほとんど変わっていない。それどころか、現代人は安穏とした暮らしを送っているので、脳の容量も体の大きさも小さくなっている。実は現代人のほうが劣化しているのだ。
 ニューギニア人は実際にほんの数十年前まで石器人の暮らしを送っていた。はじめて西洋文明人と目撃した時、腰を抜かすほどに驚いていた。ところが石器人だった彼らは、一度文明人としての暮らしを学び始めるとあっという間に理解し、順応し、それが当たり前とする社会を築き上げるようになった。このことからも、石器人と現代人は生物種としての違いは存在していない、ということがわかる。

 この話を詳しく掘り下げたものは、そのうちブログでもしよう。


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