魂替の主 2
週末の土曜日、裕介は昼過ぎにようやく目が覚めた。スマホの時間を見ると13:00を少し過ぎたところ。そして、スマホの画面には友人の大地からの鬼電が7件。あ、やばい。アパートの窓から外を見ると、そこには軽自動車にもたれかかる大地の姿が。この日、裕介は大地と11:00の約束で群馬へと向かう予定だったのだ。部屋着のままアパートを出てそっと大地に近寄った。
「おい、お前な。」そうとう怒っているようだ。「悪い、昨日一人飲みで、飲みすぎました…。すぐに着替えます。お待ちを…。」そういって急いで部屋に戻り、ジャージに着替える裕介。そのまま財布だけ持って、大地の車に乗り込んだ。「いや、ほんとごめん。んで、群馬行ってなにすんの??」裕介が尋ねたところで車は発進した。
「ったく、どうせサイレントマナーにしてたろ、お前。今日はな、群馬の山奥にある祠みたいなところ行くから。昔は足を踏み入れてはいけないって言われてたところ。」「!?それって、まさか肝試しするのか?今秋だぞ。っていうか俺怖いのダメなんだけど。」「いーや、怖くはない。というか俺も聞いただけなんだけど、面白そうなうわさがあるらしくて。そこには変わった神様がいるっていうんだよ。今日はそれを見に行く。」心なしか大地はわくわくしているようだ。まあ、怖い系統の神様じゃないならいいか。そう思った裕介は黙って着いていくことにした。
高速込みで都合三時間程経っただろうか。おそらく群馬でも相当田舎の方だろう、ほとんど集落のようなところを過ぎて、いよいよ車ではこれ以上進めないところまで来た。「よし、ナビと地図から見るとここから歩きだなー。でも歩いてすぐなはずだよ、距離みると。」そういって車を降りる大地。そのまま集落の方へ歩き出した。五分ほどして戻った大地は、「どうやら、あってるっぽい。今、そこの民家の人に聞いてきた。五分も歩けばいいらしいぞ。」「ほー、じゃあ行きますか。で、とっとと帰ろう。そろそろ暗くなりだすだろ。」そして二人は車から降りると、大地の案内でほとんどけもの道に近いような、かろうじて人の通った跡がある山道を歩き始めた。
なんとか山道を抜けると少し開けた道に出た。「ここからは楽そうだなー。」そう言う大地の後について歩くとすぐに、明らかに人によって積まれ、形作られたような石の祠?のようなものが見えた。「これ…って、本当に行っても大丈夫なところなんだよな?」裕介が恐る恐る尋ねる。「んん、、思ってたよりも近寄るな感があるな…、でもせっかくここまで来たんだし。聞いてる噂はホラー系じゃないから。行くか。」そういって二人で少しずつ祠に歩み寄る。
近寄ってみると本当に石のみで形成されており、特にしめ縄等もないようだ。祠の前に来た二人は無言で顔を見合わせる。「結局ここは何なの、何が起こるの?」裕介がひそひそと大地に話しかける。「俺も噂を聞いただけで、特にやり方とかあるわけじゃないんだよ、、、一応目的は達成したし、帰る?」大地も小さな声でそう言うと、祠の後ろから煙のようなものが立ち始め、何かの形を形成し始めた。お尻が二つ並んで浮かんでいる様な、少し滑稽な形だ。「え、、、これやばいじゃん!どうする、逃げるか!?」裕介がこわばった顔で大地を急かす。大地は、顔はこわばっていながらも、「いや、少し様子をみよう…。」と裕介に返す。
するととうとう煙が声を出した。『やあ。来たか来たか。噂、聞いて来たんだろ??』想像よりも大分軽い、おじいさんのような声と口調で話しかけてきた…。
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