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2月の短歌(十首)


 不似合いな 赤い手袋 するたびに 便り途切れた あの子を想う


 寒い日に 産まれてきたと いう母の 優しい声も 思い出せずに


 産まれた日 祝ってくれる ひとがいた 煩わしさも 有難さかな 


 在りし日に 仲たがいした 友達の 撮りし写真を じっと見つめる


 もらったよ もらってないよと 騒ぐのは ひとの業かな 黒き洋菓子


 会いたいと 思える人が いることの 嬉しいことよ 苦しいことよ


 会うたびに 面差し変える 君がため 寒空のなか 長玉かつぐ


 満たされぬ 理由は求める 心かな ぼくを探しに ぼくを探しに


 生きていく 糧があろうと なかろうと 苦しかろうと 生きづらくとも

 2月の短歌なんて書くと、さも毎月やっているようですが、初挑戦です。きっかけは、NHKの連続テレビ小説『舞い上がれ!』。主人公の幼馴染が詠む「素敵な歌」に心動かされ、僕もちょっと「詠んでみた」というわけ。

 俳句と違って季語がないので、作りやすいかなと高を括っていましたが、全然そんなことはなくて(当たり前ですね)。言葉を選ぶこと、31文字にまとめることの難しさを思い知ることに。

 ドラマのなかで、「あと十首で歌集が出せる」なんて言っていましたが、その十首がどれだけ大変なのか。ほんの少しだけ、感じられた気がします。それでも初めてにしては、よく詠めたと思うのですが、いかがでしょうか。


 詠んでみた 自分の歌に 酔いしれる 感じた才は ただの自惚れ


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