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映画『ザ・ロストシティ』&『ブレット・トレイン』でわかるカメオ出演の妙

映画見てて、出演者クレジットされてない大物役者がサプライズ的に出てくるとウォー!ってぶち上がるじゃないですか。カメオ出演のことですね。

そのカメオ出演にも、作品内の置き所や演出の仕方など色々あるなって実感できる2本があるんですよ。

一つ目が2022年公開の映画『ザ・ロストシティ』。アーロン・ニー&アダム・ニー監督、サンドラ・ブロック主演のアドベンチャー作品です。

二つ目が同じく2022年公開の『ブレット・トレイン』。デビッド・リーチ監督、ブラット・ピット主演のアクション作品。原作が伊坂幸太郎の『マリアビートル』で、主に日本の新幹線車内で話が展開していく舞台設定になっています。

この2本、それぞれの主演俳優が相互にカメオ出演しているということで話題になりました。

ブラッド・ピットとサンドラ・ブロックは共に90年代にスターダムを駆け上がり、その後も息長く活躍しているハリウッドを代表する名優ですよね。

その2人の演出のされ方が見事に対照的で、比較してみるとどのように意図されてるかがよくわかる2本なんですよ。

ブラピ:二枚目俳優のイメージを逆手にとったコメディリリーフ

まずは『ザ・ロストシティ』側のブラピ。

イケオジ風味を強調させたコテコテな登場シーンでまず笑う!何事もスマートで、デキる男としての振る舞いを見せつけつつ、哲学的で深そうなセリフも言わせつつ、でも車はショボい、みたいなところもクスッとさせられちゃう。

敵のアジトへの突入シーンから内部の戦闘シーンまでことごとく計算され尽くしたこれまたスマートな動きで敵をぶちのめし、華麗にヒロインを救出!

ここの一連のシークエンスで、相手に対しては気絶させるだけで、殺さない設定の作品なんだな……、って思わせておいてからの、いきなりドアップで脳天ぶち抜かれる!!!………っていうオチの付け方。この緩急の付け方は絶対わざとやってて、まんまと乗せられたわ、ってさらに後からジワジワ笑えてくるんですよね。

ようするに、あえて名優をムダ使いしてるんだけど、ちゃんとケレン味タップリに、二枚目俳優、渋いイケオジの哀愁みたいなイメージをあえて誇張させた演出で、ムダ使いのインパクトを最大化してるのが超笑えます。

サンディ:爆走乗り物系映画に女神降臨と言わんばかりの神々しさ

対して『ブレット・トレイン』のサンディ。

全編通してブラッド・ピットに遠隔で指示を出す謎の依頼人マリアとして、ほぼ最初から声だけは常に出てきてるんです。でも、これが誰だかわからない。というよりも、この作品って濃いキャラクターが次から次へとバンバン出てくるし、性急なアクションシーンが続くので、そんなことこっちも気にしてられない。

で、ひっちゃかめっちゃか色々あってドーンとクライマックス迎えた後の、いわはエピローグのシークエンスで粉塵の中を歩いてやってくるマリア……。ここでようやくその正体がサンドラ・ブロックということが明かされる。ここの神々しさたるや、思わず拍手したくなるぐらいにブチ上がりましたね。

サンディといえば94年公開の名アクション映画『スピード』で名を上げた女優さんなので、爆走乗り物映画にサンドラ・ブロックという女神が降臨する展開は、『スピード』好きには本当に堪らんです。最高!ってなって気持ちよく締めてもらえます。

カメオ出演の妙

片や序盤のコメディリリーフ、片や終盤のぶち上げラストピース。同世代の名優2人のカメオ出演を見事に対照的に演出して作品内に落とし込んでいることが、この2本を続けてみるとよくわかるんですよね。

カメオ出演の「カメオ」って宝飾とか飾りつけ、という意味があるので、その飾りを作品と調和させながら、いかに作品もカメオ出演する俳優も輝かせるか。今回でいえば、役者の格を生かして持ち上げるか、逆に落とすのか。カメオ出演の置き所や演出にも色々あって面白いですよね。

作品単体としても楽しめますが、二本立てでカメオ出演に注目して見てみると複眼的に味わい深く楽しめるんでオススメです。

ちなみに『ブレット・トレイン』のほうは実はサンドラ・ブロックだけでなく『ザ・ロストシティ』の相棒役チャイニング・テイタム、それからあともう1人、大物役者がほんの数秒間だけカメオ出演しています(大物役者のほうのインパクトなかなか凄いです)。カメオ出演祭りか!

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