映画【バビロン】感想

早速感想を言う。好き嫌いが別れるだろう。私は大好き。基本的に私は派手な映画が好きで、例えば「華麗なるギャッツビー」「ウルフ・オブ・ウォール・ストリート」のような、「下品だけど自分でのしあがったのよ、文句ある?」みたいな派手さが好き。尚且つ、その派手な時代は刹那。どんどん時代遅れになり、衰退していくサマが好きな人にももってこいの映画。

冒頭度肝を抜いてきたのが、象のう●ちを思いっきりくらうシーン。ポップコーン片手に見てた私は、手に持っていたポップコーンを器の中に置いたほど強烈で最悪(褒めてる)。下品な派手さの香りを、ここで感じ取った。

続いて、映画業界に携わる人間たちが織りなすパーティ。ここで主人公とヒロインは出会うわけだけど、言ってしまえばただの乱痴気騒ぎ状態(褒めてる)。こんな派手なパーティを催せる財力を手に入れる程、メキメキ成長していた業界というのが目に見てわかる。情熱の時代だ。ヒロインの言葉も心を打ってくる。私が男だったら、確かにこんな女性に惚れる。男性の気持ちにも気付かず、真っ直ぐに不器用に、自分の人生を切り開いていく女性。下品で酷いもんだけど、強い魅力と美しさを感じる。

場面を飛ばして、主人公がマフィアの隠れ家的娯楽施設に遊びにいく一幕がある。この映画でここまで恐ろしい体験をすると思わなかった。恐ろしかった。言ってしまえば、この施設は見世物小屋。地下に潜れば潜るほど、えぐい。怖かった。今の時代でも、やばい土地にハプニング状態で足を踏み入れてしまった時は、この上ない恐怖を感じるが、そんなもんじゃないだろう。殺し合い然り、セックスしまくりの脳死状態人間然り、そんなの目の当たりにしたら、足がすくむだろう。見てはいけない物を見てしまった。後を見れば一寸先は死。そんな恐ろしさを感じた。主人公がマフィアと接触するまでの一連の焦りや、早く帰ろうとする焦りも、ひしひしと伝わる。さっさと席を外さないと、この後やばいことになるとわかっている、あの永遠とも感じる時間の怖さ、わかる。この類の怖さをこの映画で感じると思わなかった。

すったもんだあり、主人公がふと昔懐かしの劇場で映画を鑑賞する、最後の一連には震えた。上映されていた映画のワンシーンが主人公の昔のワンシーンと被ったことから、走馬灯のように今までの映画史が映し出されていく。大爆音で演奏が鳴り響き、瞬く間に映像が変わる。光過敏性発作を起こすかと思った。時には全面マゼンダ、全面シアン、全面イエローになる。泣かせてくる。色で泣くと思わなかった。良き時代であり激動の時代を生き抜いた主人公は、涙する。昔を懐かしんでいるのか。今の時代に生き、今の時代に家族を持ち、幸せと言えるはずなのに。それでも人間の心を突き動かすのは、そんなド派手な、人には話したくもないような、思いだすことすら辛いような、思い出だったりするんだな、とか思ってしまう。

人間は面白いもので、問題点を改善しなければならないと感じる時代があり、それが改善され、新しい時代に突入すると、昔をいい時代だったと言う。新時代にそぐわない自分であり続けると、疎まれていることにさえ気付かない。あの時代と、あの時代の自分に心酔している。美しいままの自分でありたい、でもあの時と時代が違うと気付いた人間は、引き際が早い。周りが惜しんでも、もういない。それが美しいと感じる人間もいる。時代が違うのだから、自分が変わって、自分なりにもがいて生きていく人もいる。それを美しいと感じる人間もいる。面白い。

人にはあまりオススメできない映画だ。人によっては、鬱展開だと結果付けることさえ出来る映画だったと思う。ただ、自分の中で輝き続ける作品であることは間違いない。

この記事が参加している募集

#映画感想文

68,495件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?