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ビートルズ「I’m so tired」

ビートルズ唯一の2枚組みアルバム。
「ホワイトアルバム」。
この中から2曲選ぶのは、比較的簡単。ポール・マッカートニーらしい曲とジョン・レノンらしい曲の二つを選んだ。

アルバムの正式名称は「The Beatles」だが、真っ白なジャケットから通称「ホワイトアルバム」と呼ばれている。
真っ白なジャケットは当時、インパクト抜群だったと思われる。私のように後世に、CDでホワイトアルバムを聴いた世代にとっては、それほどではなかった。リアルタイムでレコードのホワイトアルバムを手にした感動を味わってみたかった。

2枚組み、計30曲。
ただ、この30曲の中に、いわゆるビートルズらしい曲はかなり少ない。「Back In The USSR」「Ob-La-Di,Ob-La-Da」あたりはバンド色を残して、後にビートルズの代表曲に並べられるような2曲と言えなくもない。

この30曲。挑戦的な曲も含め、統一性がなく、振り幅がとんでもなく大きい。

4人がやりたいことをそれぞれがやり、そこでできた曲を寄せ集めた感じを受けるのが、このホワイトアルバムだ。だからこそ「Birthday」とか「Helter Skelter」「Revolution9」などという先鋭的な曲たちが顔を出している。

今回、挙げた2曲について。
「I will」
この美しいメロディーと非常に分かりやすいラブソング。これこそがポールの曲だと思っている。1分46秒の短い曲だが、ギター、ボイパのベースに乗せた甘い歌詞が見事。

「Who knows how long I've loved you
You know I love you still
Will I wait a lonely lifetime?
If you want me to , I will」

どれだけ長い間、僕が君を愛しているか、誰が知っているだろうか。
今でも君を愛している。
僕は一人っきりの人生を過ごすのだろうか。
君が望むなら、僕はそうするよ。

このなよなよした感じの歌詞を書くイメージは、私の中では完全にポールだ。
ただ、美しいメロディーをつくるセンスは、世界中の誰よりも高い。

そして
「I’m so tired」
1968年にインド滞在中に書いたとされる。精神的にまいっているようすをそのまま歌詞に投げつけた感じ。これこそ,ジョンの曲だ。このけだるそうな声と、苦しそうな叫び。
私がこの曲を聞き込んだのは大学生の頃。
大学で何をすべきか、分からず、一人きりで苦しんでいたとき、この曲を真夜中に大音量でかけて聴いていた。マンションの隣室の人たちはずいぶん迷惑だっただろうけど、当時の自分はそうしないと自分を保っていられなかった。
翌朝、自宅のドアに「静かにしろ」という張り紙が張られていて、すぐに破り捨てたけど、今なら「本当にごめんなさい」と謝りたい。

歌詞は、延々と「疲れた。眠れない」とつづっている。
こちらも短く、2分3秒。
当時のわたし自身ともダブっていて、頭がおかしくなりそうだった。

ホワイトアルバムにはほかにも名曲が山ほどあるんだけど、私にとってはやはりこの2曲。

2022年11月16日 トラジロウ

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