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寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」 第1回 アイルランド篇 ――(0)

アイルランド篇(0)
旅のはじまり


 欧州ひとり旅に取り憑かれて4半世紀を超える。始まりは30代半ばのある春。税金還付を知らせる税務署からのハガキに20万ちょいの数字を見た瞬間、これで旅に出よう、と決めた。

子どもの頃からの夢だった。親の自死や暴力のある家庭で育った私は小説に、とりわけ世界文学に耽溺し、舞台になった街々をいつか旅しよう、と想像をめぐらせることで現実から逃れ、前半人生を生き延びた。

一度でいいんだ。そしたら気がすむと思った。まさかそこから毎年(多い年は2度も)欧州ひとり旅に発ってしまうとは。

日常と旅、2つの世界を行き来する錯覚をいつしか手放せなくなってしまった。仕事や人間関係に行き詰まっても、知らない外国の街をひとり旅する自分もいる、と思うとなにごとにも執着せずにいられた。

旅の予算は家を出てから帰宅まで総額20万円以下(2022年秋まで)。生活や他のお楽しみを切り詰め、計画・予約段階から節約最優先の選択と、予約のタイミングを工夫すればギリギリ捻出できなくない額。
カツカツの資金と時間を旅に集中させ、旅に次の旅を誘われ、どんなにネガティブな現実からも文字通りトリップしながら生きてきた。

ひとつの旅に一冊ずつ準備するポケットサイズのノート。
地図、時刻表、簡単な現地語、宿との連絡記録などをあらかじめ記しておく。
スマホより自作ノート頼り


→アイルランド篇――1)「旅先から再び人生が始まる高揚感」 へつづく

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【著者プロフィール】

寺田和代(てらだ・かずよ)
立命館大学卒業後、会社員を経てフリーライター・エディター。
女性誌、文芸誌、総合誌などの取材・執筆、単行本の企画・制作に携わる一方、2000年に社会福祉士資格を取得し、高齢者介護の分野でも取材活動を続ける。
単著に、長年の欧州ひとり旅の経験を元に中高熟年女性が安全・リーズナブル・自分らしく海外ひとり旅を楽しむガイドブック『Soliste[ソリスト]おとな女子ヨーロッパひとり旅』Soliste[ソリスト]おとな女子ヨーロッパひとり歩き』(ともにKADOKAWA)ほか、最新刊『きらいな母を看取れますか? 関係がわるい母娘の最終章』(主婦の友社)

著者(今回の旅ではないです、フランス、ルーアンにて)


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