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寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」 第1回 アイルランド篇 ――(7)

(6)タイタニック最後の寄港地を歩く からのつづき

アイルランド篇――
(7)イングリッシュ・マーケット



コーク
着後はバスターミナルから歩いて15分ほどの市場、イングリッシュ・マーケットに立ち寄る。

1610年創業のアンティークな建物には、欧州の他の街々の市場と同じく、生鮮食品や欧州各地の加工食品などがあふれんばかり。
市場の豊かさと活気は平和の象徴だ。市民にとって、自国が戦争をしないことほどありがたいことってない。
雰囲気を味わいながら場内をぶらぶら歩き、売り子さんが優しそうな店を選んで、夕食によさそうな巻き寿司とカットフルーツ、翌朝のパンを買った。

市場を出ると、メインストリートいっぱいに大勢の人がゆるゆると歩いてる。土曜の夕方、歩行者天国なんだ! コーヴから一緒にバスに乗った女の子たちの目的地もこの通りだったのかも。
異国の群衆にまじっていると、自分がなに人でなん歳かも忘れ、幸せそうな人々の流れのなかにふわふわ浮いているような解放感が込み上げる。
しばらくその感覚を味わったあと、明日、ダブリンに向かう長距離バスの乗り場を確かめてから、宿に続く坂道をゆっくりのぼった。


コーク市民の台所、イングリッシュマーケット


      
翌朝10時、ダブリン行きバスに無事乗車。前夜、ハッと気づいてスマホから座席予約した時にはすでに残席一つ。危なかった。

コーク・ダブリン線は、距離や人々の需要からいって東京・名古屋線の感覚だろうか。人々の生活に根付いた人気路線なのだ。
満席の乗客は実直な地元民ふうばかり。ぼっちのアジア顔BBAはかなり“浮いた”存在だったに違いないけど、地味な外見の内に温かなハートを感じさせる人ばかりに出会ってきたせいで、この国も人も好きになっている自分がいて、その安心感からか、終点間近に隣席の銀髪女性に肩を叩かれるまでうとうとしてしまった。

(8)ダブリンに歓迎された2つのささやかなできごと へつづく
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