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寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」 第1回 アイルランド篇 ――(8)

(7)イングリッシュ・マーケット からのつづき

アイルランド篇――
(8)ダブリンに歓迎された2つのささやかなできごと


 
ダブリンの真ん中を流れるリフィ川にかかる街のランドマーク、オコンネル橋のたもとでバスを降りるや、人と車の多さにクラクラした。すべてがのんびりした西部から来ると、都会の喧騒にチューニングするのに少し時間がかかる。

ビルの壁にもたれ、心細さと不安の嵐が鎮まるのを待ってから、目の前のスーパーSPARで 公共交通機関が乗り放題になるリープカード(72時間有効で19.50ユーロ)を買い、今夜の宿方面に向かうバスの停留所へ。

あらかじめチェックしていた番号のバスに乗り込み、俳優フランシス・マクドーマンドそっくりの渋い熟年女性ドライバーに、どこそこのバス停に停まりますか? と念のために聞くと、行かない、とすげない。
私の後ろにも乗車客が続いていたから粘るのもはばかられ、すごすご降車。

そのバスが出発後30mほど先で止まったかと思うと、扉がバタッと開き、クラクションが鳴る。気配を感じてドタドタ近づくと、れいのフランシスが「行くよ。乗って」という。
やっぱりじゃん! 私の発音が悪かったのか、彼女が本当にバス停名を失念したのかわからなかったけど、他の乗客たちが注視するなかで、結局、拾ってくれたことが嬉しかった。ダブリンにうっすら歓迎されたように感じて。

ダブリンのランドマーク、オコンネル橋近くの電停。
左手のスーパーSPARでリープカードを買う


(9)多様性尊重のハートにふれる へつづく
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