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林浩治「在日朝鮮人作家列伝」

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1945年から今日まで、10人の「在日朝鮮人作家」の作品と人生、その歴史背景を、文芸評論家の林浩治さんにミニ評伝で紹介していただきます。 (本文の著作権は、著者にあります。ブログ…
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#金泰生

林浩治「在日朝鮮人作家列伝 総目次

林浩治「在日朝鮮人作家列伝 総目次


【01】金達寿(キム・ダルス)
 ──戦後在日朝鮮人文学の嚆矢『玄海灘』と『太白山脈』を中心に

【02】金泰生(キム・テセン)
 ――洗練されたリアリズムで、名もない庶民を描いた

 〔前篇〕
 〔後篇〕

【03】金石範(キム・ソクポム)
 ――「虚無と革命」の文学を生きる

 (その1)小さな民族主義者
 (その2)祖国朝鮮解放の闇/解放後朝鮮の人民弾圧
 (その3)戦後日本の闇を生きる

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林浩治「在日朝鮮人作家列伝」03   金石範(キム・ソクポム)(その1)

林浩治「在日朝鮮人作家列伝」03   金石範(キム・ソクポム)(その1)

金石範――「虚無と革命」の文学を生きる
(その1)                             林 浩治

 前回の金泰生に続き、韓国済州島出身の作家金石範を紹介したい。金泰生は5歳のときに来日したが、金石範は懐妊した母親が来阪して生まれた。
 金泰生がナイーブで繊細なリアリズム日本語文体で、庶民の姿を描いたのに比して、金石範は日本語で書きながら朝鮮の民俗を大胆に取り入れた硬質な文体で

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林浩治「在日朝鮮人作家列伝」 02   金泰生(キム・テセン)〔前篇〕

林浩治「在日朝鮮人作家列伝」 02   金泰生(キム・テセン)〔前篇〕

金泰生――洗練されたリアリズムで、名もない庶民を描いた 前回の金達寿(キム・ダルス)に続き、金泰生を紹介したい。
金泰生と言っても知らない読者が多い。生前も有名作家ではなかったが、死後35年も経った昨今ではほとんど名があがることがなかった。ところが、今年(2021年)2月発行の『対抗言論』vol.2(法政大学出版局)に掲載された座談会「在日コリアン文学15冊を読む」に金泰生「骨片」が選ばれていて驚

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林浩治「在日朝鮮人作家列伝」 02   金泰生(キム・テセン)〔後篇〕

林浩治「在日朝鮮人作家列伝」 02   金泰生(キム・テセン)〔後篇〕

                       ヘッダー画:奥津直道

〔前篇〕からつづき

9)『文藝首都』で文学修行 1955年、金泰生は冒頭に書いたように、金達寿の紹介で小品を在日朝鮮人の雑誌に発表した。その年の暮には、純粋文学の雑誌『文藝首都』*2)の保高徳蔵を訪ねる。
 なだいなだは、『文藝首都』の面々をモデルとした小説『しおれし花飾りのごとく』(1981年 集英社文庫)に、金泰生を模した

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*注)林浩治「在日朝鮮人作家列伝 02 金泰生」

*注)林浩治「在日朝鮮人作家列伝 02 金泰生」

林浩治「在日朝鮮人作家列伝 02 金泰生」の注*1)~*14)です。(編集部筆+著者〔林さん〕添削・加筆)

*1)「くじゃく亭通信」実業家、高淳日が、渋谷に開店した画廊「ピーコック」(1968年)とレストラン「くじゃく亭」(1970年)を発信地とする、日本と朝鮮半島、在日をつなぐ文化紙。のちに金泰生が受賞した「青丘文化賞」も高淳日と実業人仲間がはじめたもの。
三一書房から『始作折半 合本くじゃく

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