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林浩治「在日朝鮮人作家列伝」

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1945年から今日まで、10人の「在日朝鮮人作家」の作品と人生、その歴史背景を、文芸評論家の林浩治さんにミニ評伝で紹介していただきます。 (本文の著作権は、著者にあります。ブログ…
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2023年7月の記事一覧

林浩治「在日朝鮮人作家列伝」05   呉林俊(オ・イムジュン)(その1)

林浩治「在日朝鮮人作家列伝」05   呉林俊(オ・イムジュン)(その1)

呉林俊──激情の詩人の生涯(その1)林浩治

 呉林俊(オ・イムジュン)は朝鮮慶尚南道生まれ。
1930年、4歳のとき両親に伴われて渡日した在日朝鮮人1世。
大日本帝国陸軍志願兵として満州に従軍し、解放の日をソウルで大日本帝国二等兵として迎えた。
戦後は在日本朝鮮文学芸術家同盟神奈川支部の委員長を務め、日朝友好展に関わるなど、在日朝鮮人文学芸術運動に従事した。

 画家であり詩人であり多くの批評を

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林浩治「在日朝鮮人作家列伝」05   呉林俊(オ・イムジュン)(その2)

林浩治「在日朝鮮人作家列伝」05   呉林俊(オ・イムジュン)(その2)

呉林俊──激情の詩人の生涯(その2)林浩治

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1)『記録なき囚人』 ①入隊

 呉林俊は詩集と評論集は多く残したが、ノンフィクションとしても物語性のあるものは『記録なき囚人』だけだ。
『記録なき囚人』は1969年に三一書房から出版され、1995年に社会思想社現代教養文庫に収録された。現在は、文元社「教養ワイドコレクション」で復刻されている。

 幼く渡日した植民地朝鮮の

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林浩治「在日朝鮮人作家列伝」05   呉林俊(オ・イムジュン)(その3)

林浩治「在日朝鮮人作家列伝」05   呉林俊(オ・イムジュン)(その3)

呉林俊──激情の詩人の生涯(その3)林浩治

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2)『記録なき囚人』 ②関東軍中国東北部老黒山部隊

 1944年10月下旬、満州国牡丹江省東寧県老黒山駅(現・注家事人民共和国 黒竜江省牡丹江市東寧市(県級市))に、呉林俊たち朝鮮兵を含む新入部隊は到着した。

  朝鮮人兵隊は日本人兵の班に分散配置された。呉林俊は第一中隊第二班に配置されたが、班には「関特演」で鍛えられた

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林浩治「在日朝鮮人作家列伝」05   呉林俊(オ・イムジュン)(その4)

林浩治「在日朝鮮人作家列伝」05   呉林俊(オ・イムジュン)(その4)

呉林俊──激情の詩人の生涯(その4)林浩治

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3)少年期

 1930年、来日した呉林俊の家族は、阪急電鉄春日野道駅近くの下町、工場の密集するバラック街に居住した。
その頃の朝鮮人たちは、日本に来ても白衣(びゃくえ)の民族衣装のままで、仕事も沖仲仕、屑屋、土方くらいしかなかった。父は沖仲仕だった。日本語は覚えられなかった。

 貧しく腕白だった林俊少年は、「鞍馬天狗」や

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林浩治「在日朝鮮人作家列伝」05   呉林俊(オ・イムジュン) 参考文献

林浩治「在日朝鮮人作家列伝」05   呉林俊(オ・イムジュン) 参考文献

《参考》
呉林俊『記録なき囚人――皇軍に志願した朝鮮人の戦い』(社会思想社[現代教養文庫]1995年 
呉林俊『朝鮮人のなかの日本』(三省堂新書 1971年3月)
呉林俊『朝鮮人としての日本人』(合同出版 1971年9月)
呉林俊『見えない朝鮮人』(合同出版 1972年9月)
呉林俊『絶えざる架橋――在日朝鮮人の眼』(風媒社 1973年3月)
呉林俊『海峡――呉林俊長篇叙事詩篇集成』(風媒社 19

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