見出し画像

「切り絵で世界旅」ガートの火葬場にて(ベナレス/インド)ガンジス川が見守る、死を待つ人々と痩せた牛

 ガート(沐浴場)付近を歩くと、ガンジス川のほとりある火葬場が目に入った。1mほどの高さに組まれた木組の上に、白い布で覆われた死者を焼いているところもあれば、すでに焼き終わり、片づけているところもあった。焼け終わった側には、痩せた牛が寂しげな表情で立っていた。


 なぜヒンズー教徒はガンジス川で沐浴し、死んだらここで焼かれ、遺灰をガンジス川に流すことを理想とするのだろうか? 仏教徒である日本人には分かりにくい。
 ヒンズーの信仰によれば、ガンジスの聖なる水で沐浴すれば、すべての罪は浄められる。ここで死に、遺灰がガンジスに流されれば、輪廻からの解脱を得るという。これはヒンズー教徒にとって最高の幸福といえる。年間100万人以上の巡礼者が訪れ、その中には、ここで死ぬために訪れる人もいる。
 インド映画『ガンジスに還る』は、聖なるガンジス川で死を迎えるため、ベナレスの「解脱の家」に住み始めた父と、父の世話をする息子を中心に展開する話である。火葬場にいた痩せた牛もまた、自ら死ぬときを待っているのだろうか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?