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【翻訳部辞書:H】home page

こんにちは、フジタです。homeの訳語として真っ先に思い浮かぶのはもちろん「家」ですが、「地元」「立ち戻る場所」「落ち着く」「安心」といった意味の広がりもありますね。「ホームゲーム」「ホームメイド」など「ホーム」を含んだカタカナ語も挙げればきりがありません。ところが、なぜかホームなのに落ち着かない、座りが悪いなんてケースも少なくないようで……。

「ホームページ」という言葉も日本語としてすっかり定着していますが、「Webサイト」と同じ意味で使うのは誤用だと考える人も少なくないでしょう。私は仕事柄IT系の文書を扱うことが多いですが、この分野でホームページという言葉を目にすることはほとんどありません。

ホームページの本来の意味とされるものも「トップページ」と呼ばれることが多くなっているように感じます。これは、ホームページという言葉が「誤用」されるようになったことが原因で避けられているのかもしれません。

さらにやっかいなことに、Webブラウザを起動したときやWebブラウザの「ホーム」ボタンをクリックしたときに表示されるページもホームページと呼ばれています。これは、ユーザーにとっての「スタートページ」と言うべきもので、検索したい言葉を思いついたときや最新ニュースを知りたいときなどに、立ち戻る場所として使われていることが多いでしょう。

こんなに面倒くさい言葉であるにもかかわらず広く定着しているのは、やはり多く人々にとってなじみやすい言葉だからでしょう。「Webサイトを訪れたときに最初に表示されるのがホームページなので、やがてそのサイト全体のことも指すようになった」という説ももっともです。しかし、「ホーム」と「ページ」というインターネットが普及する以前から根付いていた外来語でできているという点も見逃せないのではないでしょうか。国の行政機関や地方公共団体などのWebサイトでこの言葉が積極的に使われているように見受けられますが、そうした機関の性質上、妥当な運用だと感じます。

試しに、80代の母親のガラケーに「Webサイトって言葉はあまり使わない? やっぱりホームページ?」とメッセージを送ってみました。すると、「Webサイトは聞いたことはあるけれど意味はわからなくて」「ホームページは見たことはありますが、Webサイトは知らない世界です」という返事がきて、「やはりそうか」と納得したのでした。ちなみに彼女は小さめのタブレットも持っていて、普段は持ち歩かないものの、趣味のサークルで使う施設を予約するときなどに使っているようでした。

ところが翌日、別のメッセージが届きました。「お陰で知らない言葉を調べてみました」「タブレットに質問したら親切な回答をいただきました」「Webが1冊の本だとするとホームページはその表紙のようなものでまったく別物」と、えらく原理主義的な見解を述べたうえで、「お陰でいろいろ学習しました。ありがとう」と締めくくられていました。

一瞬、野良猫に「お手」を仕込んでしまったかのような妙な罪悪感を覚えましたが、いやむしろ、毎度意表を突いてくる彼女の自由人ぶりがここでも発揮されたのだろうと思いなおしました。「母親を野良猫にたとえるなんて…」と怒られそうですが、なぜそんなたとえが思い浮かんでしまったのか自分でもわかりません。

さて、どう返事をしたものかと思案しているうちに時が過ぎてしまいました。

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