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From the Cradle To the Battleyard〜揺り籠から戦場まで
第12話 頂上にて。 On The Summit.
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「みんな!声張ンぞー! ソーレ!!」
(兵士達) エライヤッチャ
エライヤッチャヨイヨイヨイヨイ
踊る阿呆ゥに観る阿呆ゥ。
エライヤッチャ
エライヤッチャヨイヨイヨイヨイ
ソレッ!同じ阿呆ゥ…♪
サナダ)「…では決着を付けましょう!」
木戸) 「…始まるのぉ。」
※ 再 開 ※
マエダ) 両足をガニ股に腰を大きく落とし、まだ使える右腕を突き出した。ーその先のサナダを見据えて。
サナダ) 「…行くぞ!」
急速に間合いを詰め、鋼鉄ナックルを活かした鋭いワン・ツー(パンチ連打)を浴びせる。
マエダ) 低い姿勢のまま左足から右足、前後を入れ替えながらパンチを俊敏にかわす。
サナダ) 体重を乗せた重い右ストレートを放つ。
佐藤) 「ヒィィ!」
マエダ) 飛んできたサナダの右拳内側に、
自身の左の裏拳を当て、軌道をずらす。
木戸) 「上手いのぉ!!」
(兵士達)
「ウオー!!」
♪エライヤッチャエライヤッチャ
サナダ) また同じ右ストレート。今度もまた裏拳でパンチを右に流される…が、今回のそれはサナダのブラフで、その流れの軌道に乗った速い回し蹴り。
マエダ) しゃがんだ姿勢で足を伸ばしスピードの掛かったサナダの蹴りを足裏で止める。
サナダ) 「…グッ!!」
木戸) 「甘いのぉ!ゴロはん(苦笑)。踵で受けたらサナダの脚潰せたのに。」
佐藤) 「そうなの!? そんな余裕無いと思うけど…。」
サナダ) (クソッ!)
(…私が負ける訳がない!…本物の凄さを観せてあげましょう!!)
おもむろにマエダの方を向きながら後ろに10歩下がった。
木戸) 「何じゃぁ…?
おい!ゴロはん気ィ付けなもし!!」
サナダ) そこからマエダに向かって全力疾走、約1m手前で宙高くジャンプし、高速飛び回し蹴り。
マエダ) サナダの蹴りに気付き、自分も方向を合わせて旋回するも、サナダのキックの圧倒的なスピードにそのまま背中を強打し、地面になぎ倒される。
「ふがああ!!」
(兵士達) ザワ…(冷)。
「なに…今の?」
「飛んで…回し蹴り…?」
「た、滞空時間よ…。」
「…あんなの観たことない。」
「マエダにがっつり入ったな。」
「…あれは一体…?」
木戸)「…『ダブル・アクセル』じゃ!!」
(兵士達) 「ダブル…アクセル?」
「あ! フィギュアスケートか!!」
「いや!これ格闘技だぞ!」
「ダブ…2回転半かよ?回し蹴りで?」
「ヤベー!!」
「でもなんかくるくる回ったよな!?」
「…アイツ一体?今…考えたのか!?」
佐藤) 「…『サナダカイシュウ:ロシア生まれ北海道育ち』ってなんかで読んだ。」
(兵士達)
「じゃあスケートはお手のもの…。」
「だからってそんなすぐ…別ジャンル組み合わせれるものなのか?」
「本当に…とんでもない天才だな。」
サナダとマエダ、2人はもう常人では到底理解できないレベルで闘っていた。
サナダ) 「…さぁ起きて下さい。どうせアナタまだ立てるんでしょう!?」
サナダは蹴りの方向にマエダが上体を回転させた事に気付いていた。
マエダ) 「いやぁ(苦笑)、ゴホゴホ、こりゃ…いた
たた。」
サナダ) (なるほど。…これはもう逃げられませんね。)
「…これで最後にしましょう。」
サナダが先程と同じ位置まで下がった。
(兵士達) … (汗)。
「ヤ、ヤベー。」
「気、気を付けろマエダー!!」
「みんな、が、合唱ー!!」
エライヤッチャエライヤッチャ
♪(repeat.)
※ ※ ※
サナダ) 一直線に駆け出す。
マエダ) ゆっくりとガニ股で低い左前構え。
サナダ) ターゲット1m手前で跳躍。
マエダ) 低い位置から同じくジャンプ。
ー空中接触 ー
(目視・不可)
…先に墜落したのはサナダだった。
サナダ) 「ぐはあ!(吐血)」
マエダ) 片足で着地、よろよろと斜めにリング端までふらつき…最後はしっかりと両足で踏ん張った。
(木戸・佐藤・兵士達)
「ウオーーーーー!!」
(兵士達)
「サナダがはじかれた!」
「頭からな!」
「マエダ!マエダ!」
「踊りの神!!」
「俺らの神!!」
「で、何があったんだ?木戸?」
(木戸) 「 え(汗)。…サナダはさっきと同じ完璧なダブル・アクセルを出した。しかし今回は、マエダも同時に飛んで、…決まったんじゃ。」
(兵士達) ゴクリ。
「『トリプル・アクセル』がな。」
(兵士達) 「な、何ぃー!?」
「ト、トリプル(3回転半)!?」
木戸)「…つまりマエダはサナダと同時に、キックの当たらん方向にアクセル・ジャンプをして、サナダよりも1回多く回って…まぁ蹴ったっちゅうだけの話じゃ。」
(兵士達) …ゾクッ。
「だけの話じゃって…マエダは助走すらしてなかったんだぜ…そこからトリプルアクセルって…。」
木戸) 「おまはんら(笑)。 ゴロはんがええ奴て良かったのォ!」
兵士達は静まり返った。
マエダはサナダに近付いていった。
サナダはダブルアクセル後のノーガード状態 (回転後は足首を捻らずに着地する事で精一杯なのだ) で、回し蹴り3回転半分…つまり通常の3.5倍の破壊力を持つ蹴りを受けたのだ。…無事である筈がない。
マエダ) 「ねぇ、サナダさん。」
サナダ) 「…なんだ(早く殺せ)。」
マエダ) 「…もうやめましょう。もういいです。私はあなたとは闘いたくありません。」
サナダ) 「!?バカ…言わないでくれ。これは決闘ですよ?どちらかが戦闘不能になるまで続けるんです…。」
マエダ) 「じゃぁワタシの負けでいいです。闘う意志が無いので戦闘不能です。これでいいでしょ?」
サナダ) 「…(怒)何を言ってるんですか!!…それでは貴方は明日軍を除隊になるんですよ!?」
マエダ) 「ええ(笑)。それでいいです。かあちゃんもわかってくれます。たぶん(苦笑)。でなくても毎日怒られながらなんとか生きていきますよ(笑)。そんな事より、」
サナダ) 「…?」
マエダ) 「…私ね。サナダさん。私、昨日貴方の記事を読んだんですよ。
…あなたは何十年もずっとたった1人で父親の事件の犯人を探しているって。 …私なんて父が大嫌いで19歳で家を飛び出してから帰省はおろか、殆ど連絡も取ってないっていうのに…。 貴方は私なんかよりもずっと義理とか情愛を大切にしていて、ただ器用じゃなくて…ええと、
つまりあなたは、『良い人』なんです。
…で、あなたの親への想いを見習って試合前に勇気を出して父に連絡してみたんです。
…ああ父の声は何十年振りだったか…。貴方のお陰です。…今父は米軍と繋がりがあるそうで、除隊したら彼らのネットワークを使って貴方の仇を調べる様、父にお願いしてみます。サナダさん。貴方さえ良ければですが。
…今朝はついカッとなって『可哀想』だなんて言ってしまってごめんなさい。 生きている身内を許せなかった私の方が余程、…自分で言うのも何ですが、『可哀想』でした。
それを今日は言いたかった。
・・・ありがとう。 サナダさん。」
サナダ) 「ジャッジ(判定員)ー!! 決闘が終わったぞ!」
近付く判定員。
サナダ) 「…私が負けました。」
(通信終了)
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