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81歳の父がメルカリをはじめたら、連日落札されてる話 ②隠しナイフのネクタイピン

「ネクタイピンにしか見えないけど実は折りたたみ式の小さなナイフになっているネクタイピン」に父がつけた商品タイトルは
「隠しナイフのネクタイピン」2300円。

1日で売れました。

すぐに売れたので「やっぱもっと高くすりゃあええっけやあ〜」と、また調子づいてましたが、81歳がiPadを見ながら何度もニヤニヤしてる姿はちょっと良かった。

写メを撮った時、私からアドバイスしたのは
「ネクタイピンだとわかるようにネクタイにつけてある写メも撮ること」
「そのネクタイはできるだけ若向きのオシャレなやつにすること(結局、ニットタイにしてた)
「定規と一緒に写すこと」
「定規は私の名前が書いてないものにすること(実家あるある。文房具はだいたい子供のお古)」

説明書きには「銀製ですので磨けば日が経っても光ります。鉛筆など削ることもできます」と書いていました。
これ考えるのに2時間かかったって。
大丈夫。年寄りは時間があるから。

いつでも父と一緒に居る母は、毎日居間でiPadとにらめっこする父に、最初はつまらなさそうにしてたけど、少しずつ自分の時間が出来てきて、溜まったビデオを見たり本を読んだり「父から声がかかればいつでも返事ができる」くらいの小さな自由が楽しそうです。

「隠しナイフのネクタイピン」は、外出先で、本に鉛筆で書き込みをする時用に愛用されてたけれど、そーいえば楊枝の先も削ってました。
小学校の頃、毎週土曜日の夕方に家族で行く「味鶴」という町中華で、ビールと餃子とタンメンを食べ、歯に挟まったきくらげやなんかを取る時、楊枝の先をもっと尖らせるのに使ってました。

「味鶴」さんは、夫婦でやってるラーメン屋さんで、奥さんがとても上品で、その奥さんがいつもくれるのがすごく繊細で上品な「和三盆」のお菓子で、だけどそこのおじさんは肌がまだら焼けの真っ茶色で、目は飛び出したみたいに大っきいし歯はガチャガチャ。子どもながらに「なぜこのペア?」と思うような下品と上品の組合わせ夫婦でした。
おじさんは、実はフィリピンでジャパゆきさんを仕入れておろすという副業というかメイン収入があり(その良し悪しは別として)、ピナツボ火山が噴火して帰国のタイミングを失ったまま病を患って死んでしまったのですが、父とはとても気が合っていて、
今でも和三盆を食べると、おじさんの虫歯だらけの笑い顔と、餃子の味を思い出します。和三盆を食べてるのに。

あ、ネクタイピンの話でした。
次は「猫の置物」の話を書きたいです。
それにしても、和三盆が気の毒です。

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