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◆アートヴィレッジとうおん コラムVII◆〜これも舞台は東温市?〜

皆さんご無沙汰しています!
前回のコラム投稿からまたまた月日が経ってしまいましたが、筆者の忠の仁さんが今年の3月に手掛けたキッズ・ミュージカル『明日を信じて』について文章を綴ってくださいました。ちょっと心機一転トップ画像も変えてみました笑

東温市がモチーフとなっている今公演をご覧になってない方は、ぜひこのコラムから上演の様子を感じてみてください。

筆者:忠の仁(ただのじん)氏 -演出家/作詞家-
桐朋学園大学短期大学部演劇専攻科卒業。早稲田小劇場に入団し、2年間を過ごした後、ミュージカル劇団いずみたくフォーリーズに入団。その後独立し、1991年オフィスJINを設立。舞台芸術学院ミュージカル科本科の担任を経て、東温市地域おこし協力隊に就任。現在は東温アートヴィレッジセンターにて、とうおん舞台芸術アカデミーのアカデミー長を務める。

久しぶりにコラムを書いている。先月行ったキッズ・ミュージカル『明日を信じて』の三年ぶりの再演だが、実はこれも東温市を扱った作品だ。と言っても東温市ならぬ西涼市を舞台にした架空のお話である。このミュージカルを依頼された時、東温市の偉人を調べたのだが、残念ながらヒットしたのは0件だった。

 それでどうしようかと迷った時に、東温市が18年前に重信町と川内町が合併して成立したことを知り、しかもその両地区の皆さんが、現在はそんなことないかも知れないのだが、お互いに合併を快く思っていなかったと言う話を聞いて、よし、それなら今回のミュージカルの話のネタになると思った次第である。

 設定を少子化の嵐による生徒数減少から、合併を余儀なくされた二つの姉妹中学校に置き換え、その二つのダンス部の生徒たちが、得意とするダンスの違いからいがみ合いが生まれ、最後は学校や大人の事情と言う共通の敵に対抗しながら、同じ目標を目指して協力し合うストーリーにしようとしたわけである。

キッズ・ミュージカル 出演者募集チラシ
キッズ・ミュージカル 出演者募集チラシ

 キッズ・ミュージカルの題材は事の他難しい。ミュージカルによくある、気持ちが高まって台詞が歌になる、そしてまた歌の気分が高揚して踊り出すと言ったよくあるメソッドは、子どもたち中心の集団ではリアリティに欠ける嫌いがある。だからダンス部と言う条件を付けることで、踊り出すことになるべく違和感を感じなくて済むようにした。また設定を中学生としたことで、自分たちの身近な問題として捉えて欲しいと思ったのだ。でも自分以外の人間を演じる事に恥ずかしさもあり、何でこんなセリフを喋らなきゃならないんだろうと思った生徒たちもいただろう。だが本番が近づいてくると、生徒同士に絆が生まれ、すっかり作品の世界に入り込んだ姿を見せるようになった。そして計三回の本番を繰り返す中で、まさに飛躍的に伸びるのを目の当たりにしたのだ。何故もっと前から……というこちらサイドの思惑もあるが、このミュージカルにかかわって、ゲームやSNSなどにより最近とみに希薄になった感のある、顔と顔を見合わせることで生じる、人間同士の心の交流を体験できたのではないかと思う。

 今回はコロナの影響で、最初予定していたリーディング・ミュージカル形式の発表が流れてしまった。去年の春すぎから一年かけてようやく発表にこぎつけたのだが、出演者のみんなも出来てホッとしたというのが本音だろう。

 初演の時からだが、作曲を元音楽座の上田聖子さんにお願いした。実に温かい曲を書く作曲家で、残念ながら今回の再演時には本番を観に来られなかったが、彼女の力があってこそのミュージカルだったと思う。

 このミュージカルの更なる発展を願うとともに、今後、新たなキッズ作品が生まれる事にも大いに期待したいと思う。

                               忠 の 仁

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