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Story: One Team! ~ グローバル経営は幻想じゃない ~ ⑥

「イエスマンっていうのは、自分たちの都合の良い話を『こうしなければいけない』とか『こうでなくてはならない』というようなあるべき姿をすました顔でスマートに話すんだ。役員会議でもそういった連中がよく御託を並べてたよ。 役員の連中て、ほとんどが開発、製造、品質、管理の出身者だろう?クロッカス電機の事業のバリューチェーンの中で販売と顧客サポートの機能を代表する役員がほとんどいない。。。 なので、特に口のうまいマーケティングの連中はそういう役員たちに重宝されるんだ。『希代のMarketer』と称された奴がいたよ。なにくだらないこと言ってんだか、って俺なんか思ってたけど、ほとんどの役員はうっとりしてそいつの言うことに聞きほれてるんだ。で、そういうやつってのはさ、自分の言うことを現場に押し付けるんだよ。『上からのお墨付きだ!』と称してな。 で、ほとんどの場合は現場に負荷をかけるだけでリターンはない。だけども、逆らうと叩かれるから賢く立ち回ろうとする現場もあるし、正面切って『そんな自分たちに不利益になることはできない』みたいなこと言って逆らうところも出てくる。もし現場から反発食らったら、そいつらは本社の役員会議でこう言うんだ。曰く『現場は分かっていません!』てね。そしたら、逆らった現場の日本人担当者は左遷だ。」
「そんなぁ、ひどい話じゃないですか?」
「現場が反発したら本社では何が起こるかわかるだろ? 『あいつらはダメだ』、『人を替えろ』、『もっと物分かりの良い奴にやらせろ』とか役員連中みんなから現地で手足動かしている連中に対してくそみそに言うことになるんだよ。 この数年そんなことの繰り返しだ。そういう意味で、お前はうまくやってきたよ、アメリカで。さっきお前が言ってた『的外れな戦略』であっても、言うこと聞いているふりしてちゃっかり現場に有利になるようにうっまく修正しながらカジ取りしてたんだから。」
「 いあや、なんか褒められているのかな? でも、そういうことはつまり、本社は全体観をもって戦略をたててこなかったということですか?」
「そうなんだ、だからこのテイタラクな状況を招いていると言えるんだ。 なんでそんなことになったと思う?」
「さぁ~?」
「クロッカス電機は、歪んだ目標達成型組織になってしまった!」
「へっ!?」
その時懐かしのクリシマ先輩節が始まったと感じた。

「そもそも、欧米で定着してる目標管理制度をクロッカス電機が導入してから、、会社の文化が少しづつおかしくなってきたんだ。日本の多くの会社が「信賞必罰」を掲げて導入したけどうまくいっている会社少ない。みなが志を高く持って、実現すべきビジョンを分ちあって、それに向かって『俺は何をする』、『お前は何をする』、と自由に議論ができて役割責任が決まっていかなくてはいけないのにそれがうまくいかんようになった。。。
それはなぜか?答は簡単や。組織全体の中で上に立つ者が部下の挙げてくる目標、つまりKPIやノルマやけどな、それが妥当かどうか判断する能力がない!!」
「でも、先輩。経営を支援するスタッフが経営企画部門じゃないんですか?」
「そりゃ、俺も経営をサポートする立場として思い切り悩んだよ。でもな、その流れに棹さすことはできなかった。みんながだんだんと小賢しくなって、できるだけ達成しやすいように自分の行動する領域を絞って、難しいテーマを避けて、責任範囲を狭めて、そして適当な目標を立てるようになってきた。そうしたら、組織の活力はみるみるうちに失われてきた。上から下まで無責任組織や。でもな、末端の若い社員や、現場の人間は用頑張っとる。志を高く目標を掲げて果敢にチャレンジしようとする人間もおった。でもな、そんな奴は報われない。だから、みんなうまく立ち回ろうとするか、絶望して会社を離れていく。そんなことがいたるところで起きてきた。」
「そうなんですか?」
「一言でいうと、『減点主義経営』や。そんな会社、社員が元気になるわけがない、なぁ、トニコバよ。企業における目標ってのは、トップが『こういう会社にしたい』、『こういう姿を目指したい』、みたいなみんなで共有できる俺たちの存在理由ちゅうものを示して、その為のマイルストーンが目標値だと思う。それがはっきりしないままに、『来期どれだけやるんだ!?』」みたいな話が先行して、目指す姿を完全に見失ってしまった。」

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