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イギリスの小学校のプログラミング教育

さて、これまでイギリスの小学校の英語のカリキュラムなどについて話をしてきましたが、今回は近年日本でも徐々に取り上げられるようになった、プログラミング教育についてです。

イギリスの学習指導要領に当たるナショナル・カリキュラムでは、小学生がコンピューティング教育を学ぶ意味、そしてその目標とするところも、英語のナショナル・カリキュラムと同様に記載されています。

以下は、「Computing programmes of study: key stages 1 and 2」の中の「学習の目的」記述です(筆者訳)

質の高いコンピューティング教育は、児童がコンピュータ的な思考や創造力を利用して、世の中を理解し、変えていけるようにするものです。コンピューティングは、数学、科学、デザイン、そしてテクノロジーと深く関連しており、自然と人工、その両方のシステムへの洞察をもたらすものです。このコンピューティングの核となるのは、コンピュータ・サイエンスであり、コンピュータ・サイエンスを通じて児童は情報と演算を学び、どのようにデジタル・システムが動作するのか、そしてどのようにこの知識をプログラミングの中でどのように活用するかを教えられるのです。こうした知識と理解を前提として、児童はプログラムやシステム、コンテンツを創造する情報技術について身に着けるのです。さらに、コンピューティングは、児童にデジタルの素養を身に着けさせることで、情報とコミュニケーション技術を通じて、自分自身を表現し、考えを発展させることができるようにするのです。そうして、それを将来の仕事に役立たせ、デジタルの世界への積極的な参加することにつなげられるようにします。

さらに、「目標」の項は、以下のように記載されています。

コンピューティングのナショナル・カリキュラムは、すべての児童が以下のことをできる(する)ようにすることを目指しています。
・コンピュータ・サイエンスの、基本原則や概念(抽象化や論理、データ表現などを含む)を理解して、適用すること
・コンピューティングの用語を使って問題を分析し、そうした問題を解決するために、コンピュータ・プログラムを書く実践的な経験を繰り返す
・新しい技術や、なじみのない技術を含む情報技術について、問題解決のために分析的に評価し、適用する
・情報とコミュニケーション技術のユーザーのあり方として、責任能力と十分な能力を有し、自信と想像力を持つ

イギリスにおけるコンピューティング学習は、かなり先の、社会での活用を見据えた記述になっています。しかもこれはなんと2013年度のものなので、その時点で既に「デジタル」をキーワードにしているところは、やはりテクノロジー先進国のイギリス、さすがだと思います。あくまで、コンピューティングはコミュニケーション、自己表現や他人の理解のためのもの、とするところは、英語教育の方針と重なるところがあります。また、情報技術を使いこなす側の視点だけでなく、ユーザとしての振る舞いについても、リテラシを高める教育が定義されているのは、素晴らしいと思います。

イギリスの、とある学校の高学年の生徒と話す機会があったのですが、「コンピュータの授業って、どんなことをしているの?」と尋ねると、みんな口をそろえて、「SNSなど、社会とのコミュニケーションをする際の情報保護の仕方や、パスワードなど気をつけるべき振る舞いについて」ということを言っていました。そのあたりのバランス、情報社会におけるマナーを大事にするところなど、イギリス的です。

※以下全5回シリーズの記事で、イギリスの小学生が学習するスクラッチの内容について、書いてみました。合わせてお読みいただけると幸いです。

第1回「小学生でもカンタン スクラッチでもぐらゲーム」
第2回「小学生でもカンタン スクラッチでいちごゲーム」
第3回「小学生でもカンタン スクラッチでマジックめいろ」
第4回「小学生でもカンタン スクラッチでへびゲーム」
第5回「小学生でもカンタン スクラッチでクイズゲーム」

最後に、私と子供が利用して良かった書籍をご紹介しておきます。
①親が子供に教える前提で読んでわかりやすかった本
Scratchではじめよう! プログラミング入門 Scratch 3.0版

②子供が自習するための本(小学校3年生以上が目安かと思います)
できるキッズ 子どもと学ぶ Scratch3 プログラミング入門

基本的には実際にパソコンを操作しながら学習するのが一番なのは変わりないのですが、特に上述①では、事前にある程度の知識を入れておくと学習がスムーズです。

それから②は子供でも小学校中学年(小学校3年生以上)であれば、自分で読みながら進められる内容で、評判通りです。

いずれも読んでおいて損はない2冊だと思います。

では、今回は以上です。
最後までありがとうございました。


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