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アベノマスクでかいわれ大根を育てる

5月の半ば、僕の家にもアベノマスクがやってきた。

せっかく届いたアベノマスクだが、街中での供給もだいぶ戻りつつあるし、布マスクを洗って運用するのはちょっと億劫だ。
正直、使い道に困っている方もいるのではないだろうか。

そこでかいわれ大根である。アベノマスクでかいわれ大根を育てるのだ。
実際に育ててみると、これがなかなか愛おしいのである。
小さく頼りない命が、たった一週間でぐんぐん成長していく。
思いつきではじめたが、これが思いのほか愛らしい。
マスクに根を下ろすハメになった命を、見守る日々の記録を書き記したい。

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大阪にもアベノマスクが配られた!

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2020年5月12日、在宅勤務中にサボってニュースサイトを見ていると、筆者が住む大阪でもアベノマスクが配られるとあった。
ちょうどマスクの供給が戻りはじめたタイミングでもあり、配られても使わないことは目に見えている。
どうせならなにか楽しいことに使いたい。そうだ、せっかくだからなんか育てたい。
そう思ってあれこれと調べていると、ガーゼや脱脂綿でかいわれ大根を育てられることが分かった。
そういや、小学生の頃、ニンジンやネギは水で育てられるって『学研の科学』で読んだっけ。あれと似たようなものか。めっちゃ楽しそうじゃん。

我々の世界はその場の思いつきで回っている。

3日経って、5月15日、ほんとにアベノマスクがやってきた。もう仕事どころではない。
昼の休憩時間の間に近所のダイソーまでチャリンコを走らせ、かいわれ大根の種子を確保した。

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この並びを見たときのワクワク感ときたら。子供の頃に欲しかったミニ四駆を買ってもらったときの高揚感を思い出す。

アベノマスクとかいわれ大根を見守る日々が始まる

かいわれ大根の育て方は大変シンプルである。

・脱脂綿やスポンジなどを水に浸し、種を撒く
・アルミホイルなどで遮光し1日~2日待つ
・2~3㎝の大きさになったら、直射日光を避けつつ良い感じに光を当てる

たったこれだけ。あとは1週間ほど待って、良い感じになったら食べるだけである。

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ローソンの冷凍皿うどんの空き容器に、水を張り、アベノマスクを浸す。
アベノマスクの布は三層構造になっており、思っていた以上に水を吸収する。ある大臣が「洗ってみたらなかなか乾かなかった」とおっしゃってたけど、この性質は少なくとも水耕栽培にはうってつけだ。

皿うどんの容器は、かいわれ大根の使い方を調べたあとに「これしかないな」と思って取っておいた。ぴったりである。
これからアベノマスクでかいわれ大根を育てたい人は、ローソンの冷凍皿うどんがオススメです。

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アベノマスクに種を撒き、あとはこの上からアルミホイルで蓋をして、待つ。かいわれ大根の種は光に弱く、暗いところでしか発芽しないらしい。なんか悪いやつじゃなさそうだ。友達になれるといいなあ。

ちなみに、マスクの素材はガーゼっぽくきめ細かいので、念のためカッターナイフで表面を毛羽立たせて、根が絡みやすくしている。
これがよかったのかもしれない。

1日~2日で発芽。アベノマスクに根を下ろせるか?

かいわれ大根をひきこもらせて、1日が経過。ちらっと覗いてみたところがこちら。

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発芽した!
これで第一段階はクリアである。息巻いていたわりに不安だったので、正直すごく安心した。ここから、あとは力強く根を張っていただくだけだ。
そのままさらに24時間置くと、にょろにょろとした芽がさらに伸びていき、同時に、カビのような白い毛が生え始める(写真は撮り忘れた)

そして4日目には根が定着して、上に上に伸び始める。早い。アニメの総集編みたいなスピード感だ。

ここまでくると第二段階が終了。アルミホイルの蓋を剥がし、日中は窓際で光を少しずつ当てていく。
アベノマスクも届いていきなり水浸しで暗いところに放置されるとは思わなかっただろう。

4日目以降、アベノマスクが日の目を浴びる。

ここまでくるとほとんど、僕らが知っているかいわれ大根の姿である。

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横から見るとただのかいわれ大根だが・・・

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上から見るとちゃんとアベノマスクだ。かつては布だったアベノマスクも、今やこうして生命の苗床となったのだ。本来なら自然界に半年くらい置かないといけないだろうが、かいわれ大根のスピード感はすごい。
なお、これを平日の昼間に撮影している僕の仕事は進んでいない。

そういえば、「植物は光に向かって成長する」といった話を聞いたことがないだろうか。かいわれ大根も光に向かって成長する。

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この性質を光屈性と呼ぶらしい。窓の方角的に直射日光は当たらないのだが、それでも露骨に窓の外に向かって伸びていく。
ここのところ自粛生活が続いていて、こういうひたむきさを忘れていたように思う。

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そこからさらに二日が経過。えーっと、6日目くらい?
いよいよ、マスク感が無くなってきて、かいわれ密度が上がっている。
「そういえば、長さを測っておけばよかった」と、いまさらながら思う。

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ずいぶん部屋の景色にもなじんできたので、そろそろ頃合いだろう。
いざ、アベノマスクを使ってみようではないか。

かいわれ大根マスクを装着してみる。

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突然ですが、これはアベノマスクを装着した筆者です。
かいわれ大根を育て始めて1週間。2枚目のマスクの存在をすっかり忘れていたので、改めて使ってみる。
実際に装着してみると、やっぱり顔の横の隙間が気になってしまう。ゴム紐で耳が痛い。
個人差があるとは思うが、もうちょっとアベノマスク映えする顔の構造に生まれるべきだったと思う。

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「私が育てました」

1週間、皿うどんのトレイからアベノマスクを動かしていないが、ちゃんと取り出せるのか心配だったが……

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ご覧の通りである。
正直、マスクを横にしたら剥がれ落ちるのではないかと思っていたが、かなりしっかりと根差している。

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なんなら、マスクを根が貫通している。
ダイソーで買ってきたかいわれ大根の種子に、ここまでの生命力があるとは思っていなかった。

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はい。

町内会の溝掃除に強制参加させられた人みたいな顔つきになった。
かいわれ大根の根が当たって、顔がむずむずする。
呼吸をすると、畑仕事をしたあとのおばあちゃんの手の匂いがする。
今年のゴールデンウィークは九州の実家に帰れなかったなあ。

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頑張って笑顔を作っているのだが、口元がマスクで隠れて全く見えない。

かいわれアベノマスクをレベル1のアベノマスクと比較すると、この違いである。

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マスクをつけるのが下手で、サイドの毛がぐちゃぐちゃになるタイプの宿命を背負っているのだが、よくみるとかいわれもマスクの紐に巻き込んでいる。ごめんね、頼りない育て親で……

かいわれ大根が生えたマスクは重量感があり、先ほどよりもさらに耳のしめつけがきつい。
なんかクトゥルフ神話とかにこんな口元の怪物いなかったっけ。あとナウシカの王蟲。

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あまりにも怪物らしさが増していたので、ちょっとアーティスト写真みたいに撮ってみる。
「口元に多様性がある社会で生きている人」っぽくなった。そういうことにしてください。

マスクでかいわれ大根を育てるの、楽しいですよ

賛否両論があるアベノマスクだが、届いてしまった以上は全力で活用するしかない。

個人的には、以前からやってみたかった水耕栽培を試すきっかけになって大変感謝している。
種子が芽吹くのをドキドキしながら見守り、その生命力に感嘆する。
在宅勤務で誰とも会わず変化の少ない日々の中で、毎日着実に大きくなっていくかいわれ大根のけなげな姿は、少なからず癒しの効果があった。
そういう点では、僕にとってのアベノマスクは大いに意義があるものだったと思う。

まだまだ部屋の中で過ごす時間は多くなるとおもう。
せっかくなので、皆さんもアベノマスクで思い思いの植物を育ててみたらいかがだろうか。

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アベノマスクとかいわれ大根を壁に飾るといい感じの観葉植物っぽくなる。なってるよね?


(※かいわれ大根を育て始めてから知ったが、ちなみに不要なアベノマスクの寄付を求めている団体・活動もあるらしい。
たしかに、そういう方々の手に渡るほうが正しい使い方だという見方もあると思う。のちのち、必要とされている方に募金をしたい)

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