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2020年の答え合わせ:イベントのオンライン化

◆予想通り主流にならなかったオンラインイベント

 2020年7月のnoteの答え合わせになっちゃうけど、オンラインイベントがスタンダードにならなかったいうおはなし。

 コロナ禍にあって、様々なオンラインプラットフォームが開発されたわけで、2020年当初から、

これからはオンラインが主流!

みたいなお話しが一杯。

 当然の結果なのですが、2023年になってオンラインイベントプラットフォームで目立った成果を残しているものは無し。

ほら見たことかと

 まあ、ちゃんと事象を理解出来ている人は先が見えていたわけで、当時以前勤務していた出版社時代の元上司だった某新聞社の常務に会いに行った時に、

オンラインイベントプラットフォームなんて、来年には終わってるぞ

 と。

 新しいサービスやテクノロジーへの取り組みは大事。でも、実際にはオンラインイベントプラットフォーム自体は新しい仕組みではなかった既存のサービス。それが、環境の影響(感染症)で注目されたというのが当時の現実。なので、私自身はオンラインイベントというのは主流になると考えていなかった。

 その後、CESIFAのように、主流のイベントでも止む無くオンラインで展示会を開催した訳だけれど、結果は・・・・・・。

 現実問題として、あのクラスの大規模イベントには少なくても数百の出展企業がある訳で、それらをすべてオンラインプラットフォームのインデックスで見ることができるのか?という課題をクリアできなかった。

 リアルなオフラインイベントであればブースの面積やデザイン、プレゼンテーションといった方法で、実際に来場するオーディエンスに様々な体験を提供するわけですが、オンライン上のインデックスでそんなことは至難の技。

 ではオンラインイベント自体がダメなのか?という意味では、必ずしもそうではなくて、新型コロナ流行以降、オンラインに舵をとったイベントは複数あります。

◆答え合わせをすると・・・・・

 2023年になって、これまでオンラインを推進してきた主要なイベントが殆どオフライン(インパーソン)に回帰してきた訳ですが、一部はオンラインで継続しています。

 では、実際どんなイベントがオンラインで継続しているかというと、これは以前のポストで予想したとおりで、ラーニング系のコンテンツで一見するとソフトウェア開発系の一部がオンライン開催を続けてます。

 推測ですが、ソフトウェア開発系は主流の参加者であるエンジニアが、普段からオンラインでコミュニケーションを取る機会も多く、オンラインイベントと親和性が高いのかもしれません。

 全てのイベントがオンライン化が難しい訳でなく、カンファレンスは可能で展示会は困難です。なぜならCES等の失敗事例のように、オーディエンスに満足な体験を提供できないから。

 さらにオンラインの致命的な課題をあげるとすれば、オンラインで再現不可能な ”味覚” ”嗅覚” ”触覚” といった知覚の問題。特に個人の消費者と違い、B2Bの消費者は仕入れという観点で実際の商品を知覚で判断する必要があります。

 もうひとつは、リアルなオフラインイベントで発生する偶発的な出会い(セレンディピティ)とネットワーキングの欠落です。ビジネスの場であるB2Bのイベントでは、事前に予定されているミーティングだけが提供価値ではありません。実際に現場で発生するコミュニケーションが新たなビジネス機会を創出するのです。

 B2Cの場面であれば、かなりの部分がオンラインへの移行は可能かもしれません。しかし、商品やサービスを仕入れて消費者に提供する川上の作業であるB2Bにおいては、既存の定番商品の仕入れ以外はオンラインへの移行は困難となります

オンラインイベントの三課題

  • 出展企業のインデックス化

  • ”味覚” ”嗅覚” ”触覚” の再現

  • セレンディピティとネットワーキング

◆日本はどうなるのか?

 前項で書いたとおり、展示会はオンラインでは無理。
 となると

 ⇒ 日本のイベントはオンラインになりません。

 どういうことかといえば、日本のイベントは主に展示会中心で、海外で多いカンファレンスが大きなパートを占めているイベントとは違うから。

 海外のカンファレンスイベントは、それ自体がプロフィットビジネスとして成立していて、参加費用5万〜10万なんて普通だし、テーマによっては30万〜40万もあります。それでも価値があるから成立するのが質の高いイベントモデルです。展示会だって有料なものが多々あります。
 補足をすると、オンライン化が可能なカンファレンスイベントであっても、オフラインのリアル開催を望む傾向があるのは事実です。これは前項にもあるように、セレンディピティやネットワーキングを重視しているからです。

 対して日本の展示会中心のイベントでは、カンファレンスといっても出展企業によるセールスピッチが中心。これにわざわざお金を払うオーディエンスは存在しない。日本の展示会のプロフィットモデルは9割以上の売上を出展費用から得るもので、出展企業無しには成立しないもの。

 正直な話をすると、この10年有料のカンファレンスイベントをやってきた自分自身でも、2006年に初めて有料カンファレンスに携わった時には、そのビジネスモデルが全く分からなかった訳で、今考えると恥ずかしいかぎり。

 なかには、某ニューヨーク発のマーケティングイベントのように主催者が提供するセッションが殆どなくて、大半が出展/協賛企業のセールスピッチ(=有料で登壇枠を売っている)で、お金を払って参加する価値の無いように思えるけど、実は他のダイナミズムが働いているケースもあり。

◆日本人の悪習慣

 もう一つオンラインイベント、特にオンライン展示会がうまくいかない理由。日本は展示会の総じてオーディエンスのレベルが高くないということ。

 日本人というか日本企業の悪習慣として、オフィスに居る営業はダメな営業、とにかく外に出ろと言うのがありますが、これって前近代的なモデルで、そもそも電話でもメールでも出来る営業行為を対面でやらないといけないと考えてしまう習慣。
 たとえアポが取れてなくても、用事がなくても顧客の元に行く(行った振り)。そんな行き先の無い営業に取って、昼間の喫茶店やパチンコ屋、そして展示会などというのは時間をつぶすのに最適な場所。

 そんなオーディエンスは、そもそもの目的が時間つぶしなので、物理的な外出の伴わないオンラインイベントでは参加の意味がなくなってしまう。

 自身が2010年に本格的にイベント業界に転身した訳だけど、実は当時ちょっとこの業界に疑問があった。なぜなら、それまで見てきたのが展示会中心のイベントであって、そのオーディエンスのレベルが不安要素。

 それまで取り組んできたのが定期購読ベースのビジネス出版。本当に必要な質の高い情報を、意識の高い読者に提供するモデル。当然コスト(購読費)も高くなるが、それでも情報を求める質の高い読者が相手。

 それに対して、展示会ビジネスって、会場を訪問するオーディエンスの何割かがオフィスを離れるための訪問だったり、時間つぶしだったり。そんな訪問者に出展企業が声を掛けても、何の価値も提供できない空間。

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 オンラインプラットフォームの活用は今後も重要になっていきますが、イベント産業において、どうやってその機会を有効活用するかは今後の大きな課題です。



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