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日記。
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2022年11月の記事一覧

あした、おきるのが

あしたあさおきるのが
すこしたのしみである。

あしたあさおきるのが
すこしたのしみである。

あしたあさおきるのが
すこしたのしみである。

あした

もし急にあの人が
会えなくなったらどうしよう。

すごく大きな流れのなかで
とほうもなく大きな流れの
ほんの泡沫のわたしたちは
どうしよう。
どうしよう、
わからない。
どうしよう、
抱きしめても握りしめても
絶対に解けてしまう熱。

悲しいよう

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酪王

カフェオレのみながら
枝垂れ桜のある寺まで歩いた。
あのあたりの迷路に迷い
終電をなくさせたというのに
あの子は
ありがとうといった。

酪王カフェオレってご存知か。
福島の飲み物らしい。
右手に傘
左手に酪王カフェオレ
おいしい。
紙パックも四角くて
ストローさす穴があって
とてもかわいい。
甘くない。
コーヒーの味と
ミルクの味がする。
砂糖の味ばかりの、
まあそれもいいのだが、
砂糖味のコー

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セラピー

物の量や出来高でその人自体の良し悪しが決定されるようなことだったらそれは動物と同じだからそんな人類は滅んだほうがいいと物心ついたころから思っていた。見た目がよくてモテるほうがいい、足が早いほうがいい、勉強ができるほうがいい、お金があるほうがいい、世話しないと死ぬ犬のことはかわいがるくせに、世話しないと死ぬ人間のことはかわいがらない。

でも 私もやっていることの根本は同じだった。私が人間について美

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おしえて

じぶんはなにも表にしないくせにぼくにだけ心を開くことを強要する態度。

ポニーランド

江戸川水門は怖い。
人の作ったもののなかで
あんなに怖いものはない。
あの子がさいごに着いたのは
河原という場所だった。
あんなに暗くて、おそろしくて、
住んでいる者も名前さえしらない、
いいや、名前などない
河原という一般の地形を
地名としているような川辺に
たったひとりで怖かったろう。

おまえを連れていきたかったと
篠崎のポニーランドのことを言う。
小さいころ母と一緒に歩いた河原。

もうす

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さようならのうみ

きれいな石を見つけたとき
あの人にも見せたいと思う。
じゅんばんこに遠くなっていく。
みんな平等でやさしい。
砂のなかで眠ったやどかりのうっかり。

あの人にも見せたいもの
たくさんあるの。
ゆめのはなしとおなじですぐに
ばらばらにほどけてしまうけれどね
覚えておくのもこわいから
そっと風になるのもいい。
きらきら光る石もほどけて砂。
短い夏の永遠。

vermin 1980

かわいい子たちの汚い婚姻譚を聞き、そんなことで成りたっている命の連鎖を見飽きた。憤り、なんども屋上へ走り、パンを食べた。

気にいらないことばかり起こっているのか、私の気持ちがなにもかも気に入らないような気持ちなのか、もう体が動かず、なにもできなくなってしまった。家には緑色の鍋とスライム状のフライパンが待っている。私を待っているのは私の排泄した暮らしの残骸だけ。

髪も切りにゆけず、前髪がめがねに

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反対です〜

晴れ着の子供たちと菊の花、親にでもならぬかぎりあの祝詞を記憶に残すことのできない惜しさ。

弓道場というものの外側をはじめて歩いて覗き、物珍しさでゆっくり通りすぎるあいだに聞こえた鳴弦のそういえばたったひとつだったことなどにおどろく。いっ矢に込めるあまりの時間のながさと我々のいのちの一瞬! 七五三の彼らにも菊花にもおなじ、一回きりの時間しか与えられていない。

同伴者は昼食をしたカレー屋に携帯電話

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すね毛

つるつるに剃ったすね毛が
少しずつ生えてきて
キウイフルーツみたい
キモい
キウイフルーツならいいけど
すねなのでね

怒るんだね

君も怒るんだね
僕も怒るよ

あかんぼう寝かすみたいに
きみをあやせるように
わたしを創ってください

グリーンハーブ

時間のことをすっかり忘れてにこにこしていたら、電気街からの交通手段を失った。気分がよかったのでその夜を三里ほど離れたわたしの町まで歩くことにした。

ひとつ川を渡り、相撲の駅を通り過ぎる。環状の道に連なるタクシーの尾灯。不安になりはじめたのはこのあたりからで、いま歩いている道というのは首都と私の町とを繋ぐ古くからの幹線であるが、駅と駅のあいだは車もまばらで、孤独です。

それでも歩いたことのない道

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